1997 Best Albums

CyberFusionのライターそれぞれが1997年1年間に数多くのアルバムがリリースされた中から選んだベスト・アルバムです。ライターの好みを反映して重なっているものは、たったの3枚。Pat Metheny Groupの「Imaginary Day」、Charlie Haden & Pat Methenyの「beyond the missourri sky」、Dimensionの「I is 9th」だけでした。この3枚中の2枚がパット・メセニーがらみで、しかも「Imaginary Day」はライター5人中の4人が挙げるという圧倒的な支持を集めました。97年のフュージョン界はパット・メセニーの年だったと言ってもいいくらいでしょうか。(橋 雅人)


アスワンの選んだ8枚(総論) 97年もスムース系全盛のサウンド.しかしどれも柳の下のどじょうという感じで、どっかで聴いたサウンドの焼き直しという『耳タコ』サウンドが多かった様に思えます.そろそろ『聴きやすい』サウンドから『個性のある』サウンドへ転換しないとファンが離れていくのではないかと危機感を持ってしまいます.ただ、昨年と比べると今年は面白い作品は多かったと思います.そして新しいサウンドの芽も出ました.98年はこのコーナーで20〜30枚紹介できることを祈ってます.
John Mclaughlin「The Heart of Things」
バンドとしてのサウンドを聴かせてくれます.ゴリゴリのサウンドが少ない年でしたが重いサウンドもスカ〜ッとさせます
Zachary Breaux「Uptown Groove」
スムース系で今年一番聴いた作品はこれですねぇ.本作が遺作となってしまいましたが、つくづく残念です.
Jim Beard「Truly...」
彼独自の世界はソロアルバムだけでなく、各種セッションでも光ってました.今一番注目しているキーボードプレイヤーです.勿論この作品もアイディア一杯の作品です.
Eric Le Lann「New York」
マイルスのバンドを彷彿させるサウンドです.特にM.Sternのギターが光ってます.このメンバーで次作もリリースして欲しいと思います.
Toninho Horta「Serenade」
『Durango Kid』のライブ盤というべき作品.純粋なFusionではないかもしれませんが、彼のハモニーとメロディが持つ個性とオリジナリティはピカイチだと思います
Bill Evans「Starfish & the Moon」
この人はどの作品もアッ!!と言わせますねぇ.彼独自の『毒』を失わずJim Beardや各自メンバーの個性を上手く引き出しています.
Pat Metheny Group「Imaginary Day」
新生メセニーのサウンドの始まりです.第3期PMGサウンドというべき今までにないサウンドです.ワールド系のサウンドがFusionの新しい波になることを予感させます.アイディアでは 今年ピカイチの作品でしょう.
Jeff Berlin「Taking Notes」
テクニックを全面に押し出したミュージシャンって好きではないのですが、気持ちが良い程コロコロと転がる様なハリングは『音楽』になってます.スラップレスのベースも新鮮に聴こえます.

TKOの選んだ5枚
Charlie Haden & Pat Metheny「beyond the missourri sky」
しみじみと優しく、柔らかく。なにか懐かしい気持ちにさせてくれる作品です。今年は個人的に車、電車の移動が多く、そんな時いつものお供でした。
Various Artists「A Twist of Jobim 」
こういうオムニバス物は敬遠するのですが、試聴して迷いに迷って購入、しかしこれがなんとも気持ち良い。ボサノバをかなりアレンジしてますが、その良質部分を引き出し、とってもすがすがしい気分になります。
Keith Jarrett「La Scala」
久々のキースのソロ・ピアノ。とってもキレイな旋律にウットリしてしまいます。しかし、次第に熱を帯び、佳境になると怪しいいつものキースの世界に!!
Dimension「I is 9th」
あんまり理屈を付けて考えるよりも、そのノリや演奏の「音」に圧倒されます。なんにつけても"楽しい"の一言で、まさに旬なバンドではないですか?
Pat Metheny Group「Imaginary Day」
発売時期が後半だったのでこの位置ですが、これも聴けば聴くほど良くなってきます。果たしてメセニーは、この後どこに行くのか?

美芽の選んだ8枚
和泉 宏隆「Forgotten Saga」
長い間、フュージョンではアコピの出番が少ないことからピアノをやってきたことをつまらないことだと思っていましたが、この作品は私とピアノを仲直りさせてくれました。音数が少ないことやピアノ1台ならではの音の素晴らしさを改めて認識させられます。メロディラインも自然な美しさに溢れていて去年最もよく聴いた・弾いたアルバムになりました。
神保 彰「Stone Butterfly」
松居慶子さんのピアノがひらひらひら〜と舞うように流れるのが印象的なアルバム。神保さんのソロは叩きまくりでないというのはもはや定石となってきましたが、本当に温かくなつかしくふわっとした美意識で統一された世界です。疲れたときによく聴きました。メロディメーカーとしての神保彰の実力を感じた1枚。
野獣王国「野獣王国LIVE」
インディーズならではのライブの2枚組。おじさまたちによるとにかく濃いサウンドが続きますが、発売当時気に入って朝からこれを聴いていました。マニアック度は高いかもしれないですけど、是方ファンにはたまらない1枚(笑)。ライブに行けないときにこれを聴くという聴き方も正しいのでは。
カシオペア「Light and Shadows」
ここ何年かのカシオペアの作品では文句なく一番よい出来でしょう。「GOLDEN WAVES」は名曲だし、神保さんは叩いてるし。神保さんとカシオペアっていうのがやっぱりしっくりくるし、そこから生まれる気持ちよさがサウンドのレベルを一気に押し上げているんですよね。昔からの「スリル、スピード、テクニック」も保ちつつ印象はよりゆったり伸びやかになっていて、素晴らしいです。
T-スクェア「Blue in Red」
則竹ファンとしては、メランコリックで詩的なバラード「TOOI TAIKO」がとにかく心を打つということが一番言いたいのですが、他の曲もとてもいい曲ばかりです。サンプリングを使った「GOOD BOYS & BAD GIRLS」は今聴いてもとてもユニークで楽しい。本田さんの「トレイラ・アレグレ」も完成されたお洒落でコクのあるボサノバだし、曲の粒がそろっているアルバムですね。
木住野 佳子「RANDEZ-VOUS」
フュージョンに初挑戦、みたいなアルバムなんですが、とっても良いです。木住野さんのピアノの音が綺麗に響いていて、すがすがしくて、柔らかくて、陰影があって。さすが、プロデューサーがフィリップ・セス! というべきなんでしょうか。マイケル・ブレッカーが1曲吹いてるっていうのもマルだし、曲も躍動感がありつつ上品って感じで、この人には要注目です。次回もフュージョン作ってほしいなあ。
Fourplay「Best of Fourplay」
ベスト盤なんだけど、フォープレイなのでベストアルバムになってしまう(笑)。もー、フォープレイのみなさんたらっ!! リトナーのギターが好きだったんですけど、この後ラりー・カールトンに変わるということで、どうなるんでしょうね。なんだかんだいって、しょっちゅう聴いてる1枚です。ドキドキするくらい計算されつくした音だけが演奏されているサウンド。大人の気分になれます。
Pat Metheny Group「Imaginary Day」
民族音楽をかじったことがある私としては、アジア各地の民族楽器音を大胆に使ってるので非常に驚きました。素材はいくらでも世界中に転がってますけどそれをどう使うかとなるとかなり大変なことです。天才的、さすがパットメセニーというしかない。思わず取材で行った「シルクロード音楽の旅」のCDと聴き較べちゃったりした思い出があります。文句ない名盤ですね。3月の来日が待ち遠しい!!

をづの選んだ3枚
Charlie Haden & Pat Metheny「beyond the missourri sky」
CDのプレイボタンを押した瞬間にノスタルジックな空気のただようが空間がパ―っと広がるような一つの『世界』を持ったアルバムです。目前にある現実世界を『風景』に変えてしまうような、そんな魅力をたたえた作品です。
Fragile「Handle with Care」
97年に一番聞き込んだのはこのアルバム。ズバっと鋭角的に斬り入り、そしてあふれだす毒がじわじわと全身をまわるようなフラジャイルの快楽。この享楽にハマってしまうと甘口のサウンドはカラダが受け付けなくなります。
Dimension「I is 9th」
邦フュージョンの中で今、最もパワフルな光彩を放っている感のあるDIMENSION。この作品を一言で言うと『カッちょいい』です。キメキメ・ハイテク・緻密な曲づくりといった由緒正しい邦フュージョンの王道を驀進しています。生理的にキモチいいサウンドです。

橋 雅人の選んだ4枚
Nguyen Le「3 Trios」
ベトナム出身の個性とテクニックをあわせ持ったギタリストです。東洋的な色を強く出したスピード感のあるフレージングでちょっとクセがあるのですがハマリます。
Adam Holzman「The Big Picture」
後期のマイルスを思わせるような硬派で尖がっててかっこいい音です。個人的にはこういう人にもっとガンガン頑張って新しい音を作っていって欲しいです。
Pat Metheny Group「Imaginary Day」
ホントに音楽性の幅の広い人です。新しいことをやっていながら、ここまで完成度の高いものを作ってしまうという才能には脱帽するしかありません。
Philippe Saisse「Next Voyage」
巷に数あるスムース系の中でセンスのよさが光ったアルバムです。細かい音ひとつひとつにも気を遣いながら作ったといったアルバムです。


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