Michael Brecker Quartet with Randy Brecker
at Fujitsu Concord Jazz Festival 2002
Live Report


大阪厚生年金会館芸術ホール 2002.11.06(水)

Michael Brecker(tenor sax)
Chris Minh Doky (a.bass)
Joey Calderazzo (piano)
Jeff Watts (drums)
Randy Brecker (trumpet as special guest)

 

Set List

1. Arc of The Pendurum
2. El Nino
3. Free Fall (with Randy)
4. Skylark (with Randy)
5. Autumn Leaves (with Randy)

富士通コンコードジャズフェスティバルに出演するマイケル・ブレッカー・カルテットを見に行ってきた。今回はゲストとしてランディー・ブレッカーが参加しているので、メンバー的には昨年ヨーロッパ・ツアーをしたり、モントリオール・ジャズ・フェスに出演したりしていたアコースティック・ブレッカー・ブラザーズに近いとも言える。
会場は大阪厚生年金会館の芸術ホールでキャパ1000人程度のホールとしては小ぶりの会場だった。客層は富士通コンコードの今までの出演者の傾向からか、普段のブレッカーのライブに比べるとかなり年齢層が高い。(私の隣りの席に座っていたおばさんは何と最初の2バンドをみただけでブレッカーを見ずに帰ってしまった。)

Three For Brazilというボサノバを演奏するトリオ(最後に演奏された「ブルーライト横浜」の流しの弾き語りみたいなのにはたまげました。)、The Clayton-Hamilton Jazz Orchestraの演奏が終わってから15分の休憩をはさんでマイケル・ブレッカーの演奏が始まる。

まずはランディー抜きのマイケルのレギュラー・カルテットでの「Arc of The Pendurum」から始まる。
お馴染みの曲なのだが、マイケルはテーマを結構崩しながら吹いていく。それにしてもソロに突入するとオープニングの曲だというのに凄まじく吹きまくってくれる。前に出演した2バンドともサックスが入っていたのだが、(Clayton-Hamiltonの方はサックスが5本も)前のバンドのサックスが耳にまだ残っている状態でマイケルのサックスを聞くと全く別の楽器に聴こえるほど、別次元の音だった。別に前に出演したサックス奏者が下手なのではなくて、まあ平均的な演奏だったのだが、その対比でマイケルの凄さを再認識させられたように思う。
今回はチケットを入手するのが遅れたため2階席で見ていたのだが,マイケルの演奏が始まると2階席の端の空いた席に、自分達の演奏を終えたばかりのClayton-Hamilton Jazz Orchestraのメンバー達が入ってきて身を乗り出して真剣なまなざしでマイケルの演奏を最後まで眺めていたのが印象的だった。

2曲目の「El Nino」でもマイケルの高いテンションの演奏が続く。この曲のソロでのマイケルのフラージオはいつにもまして強烈だった。 それにしても最近のマイケルはDirection in Musicや東京Jazzでの無伴奏ソロの「Naima」や、デニス・チェンバースのアルバム「Outbreak」のタイトル曲でのソロなどを聞くと何か鬼気迫るものがあるが、この日の1、2曲目もいきなりそれに近い状態で、何か別世界へ行ってしまうような演奏だった。ステージを降りると温和な普通の人なのだが、一体どこからあんなパワーがでてくるのだろうか。 日本にくる直前にはドイツのソロ・コンサート(「Naima」「African Skies」やブルースを演奏したとのこと)で演奏してきたとのことで、もうマイケル・ブレッカーにとってはバック・バンドはなくても、サックス1本で音楽を完結させてしまえるだけの領域に到達してきているように思える。最近、特にライブで聞いているときに感じることなのだが、極端な言い方をすればマイケルのサックス以外の音は不要にさえ思えてしまう。ソロでなくともデュオとかトリオといった最小限の編成のほうがマイケルの自由度が上がり、より今のマイケルにフィットしているようにも思う。

2曲目が終わった時点で、バンドのメンバー紹介をした後にマイケルの「僕が大変よく知っている人」という紹介とともにランディー・ブレッカーが登場した。 ランディーが加わっての1曲目は結構複雑なアンサンプルのテーマを2人で吹いていく曲で、この曲は譜面を見ながら演奏していたので、新しいレパートリーのようだった。(「Free Fall」)ただこの曲からマイケルがランディーとのアンサンプルを気にしたのか、兄に気を遣ったためか少しテンションが落ちたような気がした。

そして次はランディーのソロを全面的にフィーチャーしたバラードの「Skylark」。この曲はマイケルのアルバム「Two Blocks From The Edge」の日本盤ボーナストラックとして収録されていたものだが、今回はランディーのための曲になっている。生ランディーを見るのは第2期ブレッカー・ブラザーズ以来だったが、今回のランディーはなかなか好調で、当時よりも勢いがありはりのある音をだしているように思った。「Skylurk」のエンディングでは短いながらも若干ランディーに合わせたかのような最近のマイケルにしてはちょっとメローで、叙情的なソロを聞かせてくれた。

そしてエンディングとなった5曲目はマイケルのライブではもうお馴染みになったカルデラッツォのアレンジによる8ビートのファンク系「Autum Leaves」。このテーマがマイケルとランディーの2管で絡み合いながら演奏されていく。この曲ではマイケルがロング・トーンを強調したソロを展開していたのが印象的だった。
1時間足らずのステージで、アンコールの拍手も司会者(コンコードレコードの副社長という人)によって遮られてしまい、時間的には若干物足りなかったが、ランディーが登場するまでのマイケルの演奏は非常に集中力が高くてすばらしいもので、マイケルの表現力の奥の深さを改めて見せ付けられてしまった。

今回は期待していたブレッカー・ブラザーズ往年のレパートリーは聴くことはできなかったが、終演後にマイケルから聞けた話では、今回は富士通コンコードのカラーに合わせて選曲したとのこと。また嬉しいニュースとしてはランディーの新しいファンク系のアルバムが来年でる予定で、それに合わせるような形でエレクトリック・ブレッカー・ブラザーズのツアーを考えているので、それで日本にこれるかもしれないとのことだった。 (橋 雅人)

過去のマイケル・ブレッカー関連の記事

Interview 2001
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Live Report
1996.10.05 Yoshi's, Oakland, CA
1998.9.28 Osaka Blue Note
2000.02.26 Osaka Blue Note
2000.07.20 Montreux Jazz Festival
2001.12.15 Tokyo Blue Note

CD Review
American Dreams
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Time Is Of The Essence
Two Blocks From The Edge

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