Michael Brecker, Pat Metheney Special Quartet at Auditorium Stravinski, Montreux on 7/20/2000 Michael Brecker (tenor sax) Pat Metheny (guitar) Larry Goldings (organ) Bill Stewart (drums) |
約1ヶ月、全26公演に及ぶヨーロッパ・ツアーの終盤にあたるモントルーでのドリーム・バンドのコンサートは定刻8時半から約5分遅れただけで、始まった。 まずはこのメンバーから予想される通りマイケルの最新作「Time Is Of The Essence」からの曲でスタートする。 約3000人は入っていると思われる会場の大きさの為か、マイケルの音色はいつもよりも丸めに聞こえる。 「Time Is Of The Essence」からの「Timeline」など3曲続けたあとで、パットがおもむろにピカソギターに持ち替えてソロギターの演奏を始める。パットのファンにはもうお馴染みの40本以上の弦が張ってあるというこのカスタム・メイドのギターだが、私は先日のトリオでの来日を見逃してしまったため、生で見るのは初めてだった。左手でタッピングしてベース音を出しながら、右手でハープのようなフレーズを出し、時折コードトーンをストリング・セクションのように織り交ぜていく。そしてしばらくパットがソロで演奏した後に、マイケルのサックスが絡んでくる。ピカソ・ギターとテナーのアンサンブルの響きがなんとも新鮮に聞こえた。 そしてパットとマイケルがテーマをユニゾンで繰り出すちょっとボサノバっぽいリズムの曲(新曲?)が続く。 その後、このコンサートで初めてのそして唯一のMCで、マイケルが次の曲を紹介する。 「自分の音楽観を変えてしまったレコーディング、80/81からの美しいバラード、Every Day (I Thank You)」 マイケルの音色がいつになく叙情的だ。パットの丸く粒のそろった音色の透き通ったフレーズとマイケルの奏でるメロディーラインが、本当に涙がでるほど美しい。背筋がぞくぞくするような感動を覚えた。 間違いなくこのコンサートのハイライトだし、史上に残る名演だといっても言い過ぎではないと思う。 そしてパットの「Trio 99 -> 00」からの「WHAT DO YOU WANT」ともう1曲が続く。これもバンドの編成がレコードとは違うため、かなり新鮮が印象を受ける。 その後、パットがギター・シンセサイザーに持ち替え、いきなり破壊的な音色をかき鳴らしだす。あの、「Zero Torelance for Silence」の音色だ。それにドラム、オルガン、テナーと皆、合わせてフリージャズの世界に大音量で突入していく。まわりの観客は耳を押さえている人が多かったが、私はあまりに痛快で、思わず笑みがこぼれてしまった。パットの音が大きすぎて、吹きまくっていたマイケルのフレーズがクリアに聞こえなかったのがちょっと残念だった。 最後はもはやマイケルのライブの締めくくりの曲として定番曲となった感のあるパットの作品「Song for Bilbao」で締めくくった。ラリー・ゴールディングは、前のフリーの曲をノリを引きずっていたのか、かなりアウトしたソロをとっていたのが、印象的だった。 演奏が終わると会場はスタンディング・オペーションでなかなか、拍手がなりやまない。彼ら4人もステージの前に並んで立つのだが、お辞儀をするわけでもなく、そのまま観客席のほうを眺めつづけていた。あまりの観客の反応に彼ら自身も驚いていたかのようだった。 一旦、ステージ脇に引っ込んだあと、パットとマイケルの2人だけが登場して、パットのアコースティック・ギターのかき鳴らすようなコード弾きからアンコールの曲が始まる。「80/81」の1曲目の「Two Folk Songs」を思わせるような始まり方だ。そしてマイケルが吹きはじめたテーマは何と「Summer Time」だった。「う〜ん、やられた」という見事なアレンジだ。 演奏が全て終わっても、呆然としてしばらく動けないというほどインパクトのあるコンサートだった。何か、エライものを見てしまったというのが、正直な感想だ。こんな凄いバンドがヨーロッパとアメリカの一部でしか、見れないのは不公平だと思う。是非、是非、日本へのツアーの実現も望みたいものだ。
翌朝、ワークショップと銘打ってパットとマイケルが200人くらい集まったファンの質問に約1時間半に渡って答えるという催しが行われた。そこで印象にのこっている部分を一部だけだが、書き出してみる。 (橋 雅人) |