マイケル・ブレッカー Live Report

大阪BlueNote 2000.2.26 2nd Set

Michael Brecker(tenor sax),
Larry Goldings(organ),
Adam Rogers(guitar),
Idris Muhhamad(ds)


大阪の最終日で、土曜日の2ndセットということもあって、大阪ブルーノートはソールドアウトで満席だった。相変わらずブレッカー人気は根強いようだ。

ニューアルバム「Time Is Of The Essence」を発表後、初の来日となる今回の来日公演、メンバーもベーシストなしで、オルガン、ギターを加えるというニュー・アルバムと同じ編成になっている。
最大の特徴は何といってもベースがいないこと。そのパートはオルガンのラリー・ゴールディングスの左手がカバーしている。そしてドラムのアイドリス・ムハマド(マイケルはイードリスと発音していたが)。彼は70年代にはCTIからリーダーアルバムをリリースするなど、どちらかというとR&B、ブラック色が強く、繰出すリズムもかなりファンキーなベテランドラマーだ。過去のマイケル・ブレッカー・バンドのドラマーのジェフ・ワッツやアダム・ナスバームなどがパワフルでタイトなリズムを売り物にしていたのとは対照的だ。

ステージの1曲目はニューアルバムでも1曲目に入っている「Arc Of The Pendulum」から始まる。アルバム同様、ゆったりとした印象を受ける曲だ。リズム隊が繰出すルーズ目のノリの上で、マイケルもゆったりと吹いている。聞いている方は若干物足りなさを感じるような演奏なのだが、マイケル自身は笑みを浮かべて気持ちよさそうに吹いている。高テンションの演奏とはまた違った味がある。ステップス、ブレッカーブラザーズ、マイケル自身のバンドと攻撃的なリズム・セクションばかりをバックにライブ活動を長年してきたマイケルだが、今回のような隙間が多く、リズム的に自分自身の自由度が高い中で演奏してみたかったようにも感じられる。

2曲目、3曲目とニューアルバムからの曲が続くが、2曲目「Timeline」の終盤から、従来のマイケルのパワフルで、高速パッセージを繰出すスタイルに突入していく。3曲目の「Renaissance Man」はアルバムでもブルージーな雰囲気のある曲だが、アイドリス・ムハマドのタイム感、アルバムでのパット・メセニーとは違うアダム・ロジャースの意外とファンキーなバッキングが、この曲によくマッチして盛り上げてくれる。その上で、マイケルはブリブリとフラジオを連発して吹きまくってくれる。ちょっとファンキーな曲でのマイケルは、相変わらず凄まじい。

アルバムでのパット・メセニーの代りに今回のライブに参加しているアダム・ロジャースだが、パットが「Time Is Of The Essence」では、サウンドに溶け込むような演奏をしていたのに対し、はっきりとした太い音色で、かなり存在感のあるプレイをしていた。テクニック的にはかなりのもので、ちょっと耳に付く部分もあったが、メカニカルなフレーズの早弾きでゴリゴリと盛り上げたり、太い音色のゆったりとしたフレーズでファンキーに決めたりと、もう少しフレーズの組立てが、こなれてくれば今後おもしろい存在になりそうな予感がするギタリストだ。

そして一息つく感じで、マイケルとラリー・ゴールディングスとのデュオで始まったのは、ちょっと意外な「ラウンド・ミッドナイト」。セロニアス・モンクの曲で、マイルス・デイビスの演奏が有名なスタンダードだ。この曲ではしっとりと聞かせてくれる。
最後の曲は「Tales From The Hudson」に収録されていたパット・メセニーの曲「Song For Biblo」で、しめくくってくれた。アンコールはなかったものの、1時間半以上の長いステージでたっぷりと聞かせてくれて大満足のライブだった。(橋 雅人)


Michael Brecker Discography (from CDNow)
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