Michael Brecker Live in Bay Area
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Michael Brecker Band live
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at Yoshi's |
アメリカでもようやくニューアルバム「テイルズ・フロム・ハドソン」がリリース されマイケル・ブレッカー・バンドがカリフォルニアを皮切りにその後ヨーロッパを 周る7週間に渡るツアーを開始しました。
今回はそのツアーのスタート地点となったオークランドでのライブをレポートします。 オークランドはサンフランシスコ湾のベイ・ブリッジをはさんだサンフランシスコ の対岸の街で、演奏は6日間にわたり日系ライブハウスであるYoshi'sでおこなわれ ました。Yoshi'sは8月末にはゴンサロ・ルカルカバ、スタンリー・クラーク、 トニー・ウィリアムスという異色のトリオを出演させたりと最近の西海岸では もっとも充実したプログラムを組んでいる日本レストラン兼ジャズ・クラブで 何と寿司をつまんで日本酒を飲みながらジャズが聞けます。
今回はその5日目にあたる、10月5日に見に行ったのですが、その日は 晩のYoshi'sでの演奏の前にサンフランシスコ市街地の中心部にある ヴァージン・メガ・ストアで昼過ぎに新譜のプロモーションの為の ミニ・ライブが行われました。 2階のジャズ売り場の空いた場所に楽器をセッティングしただけの ストリート・パーフォーマンスのようなライブで観客はたったの 30ー40人程度、しかもそのうち半分くらいはたまたまCDを 買いにきただけの人達でおそらく誰が演奏しているかも知らずに 聞いているようでした。 マイケルの他はピアノにジョーイ・カルデラッツォ、 ベースにジェームス・ジナス、ドラムにジェフ・ワッツという メンバーです。 メンバーは演奏の前後にはCD売り場で自分の欲しいCDを物色して いたりというリラックスした雰囲気でしたが、演奏が始るとさすがに 手抜きなしで気合の入ったプレイを聞かせてくれます。
演奏曲目はニューアルバムの頭から曲順通りに"Sling and Arrows", "Midnight Voyage","Song for Bilbao"と3曲約35分の演奏でした。 筆者は去年の11月にニューヨークのイリディウムでマッコイ・タイナー ・トリオと共演した時見て以来の生のマイケルのステージだったですが、 その時と比べても昼間のミニ・ライブとはいえ全く遜色ないどころか、 マッコイとの時よりも出来がいいくらいだと思いました。 マイケルのライブは何度となく見ているのですが、はずれがないという か、本当に安定して聞かせてくれる人です。 マイケルはステージの最後に観客に向かって「今晩Yoshi'sに見に来てくれたら もっと熱い演奏を聞かせるよ」と挨拶をしてステージは終了し その後はヴァージン・メガのカウンターでのサイン会となりました。 サインをもらいに行っていたのはほんの10人程でその内2ー3人は ヴァージンの店員のようでした。アメリカでの、特に西海岸での ジャズ・アーティストの人気というのはマイケル程の超大物でもかなり 厳しいものがあるようです。
サイン会が終わったあとマイケルはCDを物色していたので、何を
見ているのかと横から覗いてみると、アフリカ音楽のコーナーでした。
そこでマイケルにお薦めのアフリカ音楽を2枚選んでもらいました。
Les Tetes BruiEES by Hot Heads (Shanachie 64030) '90 アメリカ盤
Moussolou by Oumou Sangare (World Circuit wcd021) '91 UK盤
どちらもマイケルが非常に気に入っていると言っていたものです。
特にOumou Sangareは女性ヴォーカルなのですが、CDを聞いてみると
マイケルの曲作りやEWIのソロなどにも影響を与えているように思いました。
さて晩は場所をオークランドのYoshi'sに移してのライブです。 約200人程度のキャパでしょうか、土曜の晩とあって満席になっています。 1曲目は昼間と同じくニューアルバムの1曲目の"Sling and Arrows"から スタートです。テーマの後はまずマイケルのソロです。いきなりパワー全開の プレイを聞かせてくれます。確かに昼間より熱い演奏です。そしてジョーイ・ カルデラッツォのピアノソロです。これがマイケルに負けず劣らず気迫の こもったソロです。ピアノ版のマイケルと言った感じでモーダルな細かい符割、 マイケルがソロのを盛り上げるためでフラジオを使うようなところでは クラスター(密集和音)の連発でテンションを上げるといったソロの構成は マイケルの影響がかなり感じられます。 カルデラッツォはさすがに飛ばしすぎたのか、この曲が終わると「次の曲は休憩かい?」 と言ったジョークを飛ばし場内の笑いを誘っていました。
そして2曲目は少しテンポを落として同じくニューアルバムから"Midnight Voyage" です。最近のマイケルはホレス・シルバーのアルバムなどでも聞けるのですが ブルージーな4ピートのプレイに今までになかった味がでてきているように 思います。そして3曲目は少しテンポをあげてブレッカー・ブラザーズのアルバム でも演奏していた"African Skie"です。マイケルはこの曲の前半は比較的おさえめの演奏でしたが、ソロの後半で一気に爆発し、ジェフ・ワッツのドラムソロへとつなぎます。 この人派手さはないのですが、パワフルなドラムを聞かせてくれます。 そしてメンバー紹介をはさんで、カルデラッツォの静かなピアノソロから始る "Naked Soul"へと続きます。この曲ではマイケルにしてはめずらしく叙情的で むせび泣くようなサックスを聞かせてくれます。 そして最後は87年のマイケル初のソロ・アルバムの中の 曲で今は亡きドン・グローニック作曲の"Nothing Personal"でドラムソロをはさんで 盛り上げ1stセットを締めくくってくれました。
休憩をはさんで2ndセットはニューアルバムの中からのゆったりとしたテンポの曲"Willie T."で 1stセットとは違い少し気だるいムードで起ち上がります。 テーマの後にすぐにマイケルのソロに入りますが、ソロの前半はゆったりとしたテンポにのり 抑え目に吹いていますが、ソロの後半に進むにしたがって音数の多いフレージングになり それにジェフ・ワッツが応え、盛り上げていきます。 マイケルのソロの後はカルデラッツォが渋いソロを聞かせてくれ、ジナスのベースソロでこの曲をしめます。
そして2セット目の2曲目はこれもニューアルバムの中からパット・メセニー作曲の "Song for Bilbao"です。サンバ風のリズムにのってまずはカルデラッツォが盛り上げて くれます。この人のテンションの使い方は何とも言えず気持ちよいです。 そしてカルデラッツォが盛り上げたままの状態でマイケルがソロを引継ぎ始めから 高速フレーズで突っ走り,お得意のフレーズを連発してテンションを上げのけぞらせてくれます。 そして短めのドラムソロをはさんで最後のテーマになだれ込みエンディングです。 この曲が2セット目の目玉といったところでしょう。
3曲目はリラックスしたスタンダードのブルース、4曲目はマイケルとカルデラッツォのデュオでマイケル1枚目のアルバムからの美しいメロディーラインの曲"The Cost Of Living"と落ち着いた曲が続きます。一気に最後まで突っ走った印象のあった1セット目とはかなり進行が違います。
最後の曲はカルデラッツォが書いたという未発表の新曲でアップテンポで変拍子のかなりトリッキーなテーマの曲です。
リハーサル不足のせいか凄腕のメンバー全員が顔を引きつらせながら必死で合わそうとしているのが伝わってきます。テーマの最後の方の部分でマイケルはついていけずとちっていました。とは言えソロになると当然のごとくマイケルは脳味噌錯乱級のソロで
最後の曲をしめてくれます。
こうしてオークランドの長い夜はふけていきました。
このバンド97年の2月にはそのままのメンバーで日本のブルーノートで公演を
するようですが、期待を裏切らない演奏をしてくれることは間違いないと思います。(橋 雅人)
at Virgin Mega Store | at Yoshi's |