2003 Best Albums
セリエJ

2004年あけましておめでとうございます。昨年のフュージョンシーンをながめてみると、ひとつには、国内におけるベテラン勢の活躍がありました。全盛時の音源のリメイクや再活動など、なかなか話題豊富だったと思います。一方、本場ベテラン勢は、おおむね原点に返ったような活動が目立ちました。それはジャズであったりブルースであったりするわけですが、本来、フュージョンとは種々の音楽要素を融合し再構成するところから始まったわけですから、いろいろな方向性があっていいと思います。ただ残念なことに、このところ割と重厚で渋めの作品が主流を占め、パーッと朗らかな?フュージョンが少なくなってきたような気がします。時代性ということもあるでしょうか・・・さて、2004年のフュージョンシーンはいかが相成りましょうや?

David Benoit「Right Here, Right Now」

 一世を風靡したスムース・ジャズも、ここにきてアーティストごとの独自性を要求されるようになってきました。スムースな中にもどこか引っかかりを加える必要が出てきたようです。その結果、偶然かどうか以前のフュージョン形に戻ってきたのではないか、なんて思う時があります。この作品もスムース系とはいえ、適度な張りがあり、特にトラック2は全盛時のジョー・サンプルを思わせる佳曲です。久し振りでフュージョンらしいフュージョンを聴いた気がして、2003年一番気に入ったアルバムでした。私のイチ推しです!

松原正樹「Humarhythm Live」

 2003年は、特に国内でリメイク盤や復活バンド、復活ライヴが目立ちました。ある意味、現状に行き詰まりがあるからか?なんて、ひねくれた見方をしなければ、オールドファンにとっては結構楽しむことができました。このアルバムも彼のこれまでのフュージョン活動の総決算的な内容です。特にパラシュート時代の曲は、ファンへの長年の借りを、ドンと利子をつけて返した、というところでしょうか。

The Rippingtons featuring Russ Freeman「Let It Ripp」

 今、最も旬なユニットといえますが、バンドとしてのオリジナル盤は結構久し振りなんですね。これまで通りの、休日のお供にピッタリという一枚に違いないですが、これを単なるリゾート・ミュージックかというと、少し違う気もします。しっかり地に足が着いているんですねえ・・・。ところで最近、フュージョンで、根っからのノーテンキなリゾート・ミュージック作品がなくなってしまったような気がします。淋しい限りです。

Spyro Gyra「Original Cinema」

 息の長いバンドですが、定期的にアルバムをリリースしていく姿勢は大したものです。彼らの作品は、大ハズレはないものの、このところ大きく目立つ作品もなかなかないのが実情のようですが・・・、本作も強いインパクトはないですが、コンセプトアルバム風にテーマを持たせたところが新味か? 聴く前の印象は(タイトルや表紙のイラストなどから)、やや重いか?とも思ったのですが、なんのなんの、相変わらずのハッピーなサウンドにホッとした次第です。

ナニワエキスプレス「Life of Music」

 これも復活バンドとして話題になった一枚です。どことなく落ち着いた雰囲気は、皆さん一回り大人になった証拠? 20年以上前に彼らを聴いた、あのインパクトこそなかったものの、いい意味で安心してじっくり聴ける作品だと思いました。遊び心満載の内容です。活動を継続するようなので、今後の動向も要チェックです。

須藤 満「Favor of My Friends 2003」

 元々、Tスクエアをそれほど熱心に聴いた方ではないのですが、ソロ活動をする彼の作品は当サイトのライヴ・レポートの中で紹介があり、一度聴いてみる気になりました。ドライヴ感あふれる内容で、若向き?!のロック・フュージョン作品となっています。特に全編にわたってギターの米川英之氏がフィーチャーされており、彼のアルバムといってもいいほどです。その米川氏ですが、今やすっかり本格派ギターリストとして定着しましたね。上手い!・・・とても、元アイドル(CCB)などと、あなどってはおられません。

John Tropea「Standard Influence」

 このところ本場フュージョンシーンでは、結構こういう「先祖還り」みたいな作風が盛んなようで(悪口ではありません!)、ハーヴィー・メイソンしかり、ラリー・カールトンしかりです。その象徴的作品という意味で取り上げてみました。聴いてみると全くの“ジャズ”で、ケニー・バレルかと間違えそうですが、これをスティーブ・ガッド、アンソニー・ジャクソンのツワ者と組んで演ってしまうところに凄みを感じます。注目曲はウェス・モンゴメリの「フル・ハウス」。ライヴの名演をスタジオ録音でどうよみがえらせるか、興味ある方はぜひ聴いてみて下さい。

Micro Stone「Groovers Move On」

 お約束の一枚です!・・・前作から3年余の間、彼らは遊んでいたわけではありませんでした!着々と爪を研ぎ、次なるステップを虎視眈々と狙っていたのです。満を持して出された本作は、優に本場フュージョンに匹敵する内容となっています。具体的には、一層ジャズ色が加わり、本格的になったといえましょう。様々な音楽情報を彼らなりに消化し取り込む柔軟な発想は、彼らがベース、ドラムスというボトムを受け持つパートだからこそ出来るのだともいえるでしょう。今年も更なる一歩を期待します。



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