The Rippingtons featuring Russ Freeman 「Let It Ripp」Peak Records (PKD-8514) 2003 - U.S.A.   
Russ Freeman(g), Eric Marienthal(sax), Kim Stone(b), Dave Karasony(drums), Bill Heller(kb), Scott Breadman(perc)
Additional Horns : Jerry Hey, Gary Grant, Steven Holtman

  ○骨太いストレート系  ●明るく爽やか系  ○骨太系と爽やか系の中間 
  ○R&B                 ○ブラック系         ○歌物・NAC/AOR 系       
  ○ラテン系(□ブラジル系  □サルサ系        □カリプソ系)           
  ○ユーロ系            ○JAZZ系          ○JAZZとFUSIONの中間系   
  ○ブルース系          ○ロック系        ●スムース系

Rippingtonsのアルバムとしては、2002年春に発売されたライブ盤「Live Across America」に続く通算15枚目(ベスト盤を含む)のアルバム、スタジオレコーディングのアルバムで言うと2000年秋に発売された 「Life In The Tropics」以来となり、3年ぶりのまさにファン待望のアルバムだ。簡潔に感想を言うと「相変わらずのRippingtonsらしいかっこいいサウンド」。長年のファンには期待通りのサウンド、新しいファンには意外に新鮮なサウンドに聴こえるかもしれない。

レコーディングメンバーは、現在のライブのメンバーと同様で、ギター(その他プログラミング等)にRuss Freeman、サックスにEric Marienthal、ベースにKim Stone、ドラムにDave Karasony、キーボードにBill Heller、パーカッションにScott Breadman。そのメンバーに加え、今回のレコーディングに際して特に参加したJerry Heyを中心としたホーンセクションの面々。メンツに限って言えば、多彩なゲストを迎えた以前の作品に比べると地味に見える――が、これこそまさに原点に戻った構成とも言えるのではないだろうか。

今回のアルバム「Let It Ripp」では、前作「Life In The Tropics」からなんとなく見えていた、「ギターとサックス中心のメロディラインが素直に前面に出てくるサウンド」がさらにはっきりしたような印象を受ける。初期の作品「Tourist In Paradise」や「Welcome To The St. James Club」で聴かれた独特のアンサンブルをやや残しつつも、リーダーのRuss Freemanに加え、Eric Marienthal(毎回ライブで「スペシャルゲスト」と紹介される)という一見双頭バンドにも見える構成が、かなり音楽の上にもはっきり現れてきているとも言えるかもしれない。毎回賛否両論があるヴォーカル物やカバー曲は今回のアルバムにはなく、全曲Russ Freemanオリジナルのインストルメンタルという構成。それだけに、これからのRippingtonsの行く先を占える重要なアルバムと言える。

さて、中身は・・・というと、途中で転調するRussらしい「気持ちの良い」曲調はアルバムの中のそこここに現れる:壮大な印象のアンサンブルがまさにRippingtonsらしいタイトル曲"Let It Ripp"、RussとEricのギターとサックスがユニゾンするアップテンポの"High Life"、カリプソ調の"Stingray"、切なく響くRussのアコースティックなサウンドが印象的な"Cast A Spell"。そしてここで重要なのは、アップテンポな曲でも、そのリズムに流されることない非常にキャッチーなメロディがあり、それがリスナーの耳にしっかり残るということ。"17 Mile Drive"のサビのメロディなどは何とも気持ち良く、知らず知らずのうちに口ずさんでしまいそうだ。

そしてまた、Russのギターも印象的なメロディにのって多彩に響く。"Bella Luna"や"A Private Getaway"、"Cast A Spell"でのアコースティックなサウンドは、"High Life"や"Stingray"といったエレクトリックなサウンドとは鮮やかな対象をなし、Russらしい細やかなギターサウンドが楽しめる。その点でアコースティックなサウンドは、RippingtonsというよりはRuss Freemanの音楽といった感じもあり、もしかしたら彼のソロアルバム「Drive」を思い出す人もいるかもしれない。だが、それだけアルバム自体がバラエティに富んだサウンドになってることは間違いない。

もちろん各メンバーのソロも聴き逃せない。リーダーであるRussの、ときにはしっとりとしたアコースティック調の、ときにはロック調のギターはもちろん、Eric独特のブロウやRussとのユニゾンは聴き応え充分だ。そこにBillのキーボードが絡み、キムのベースがさりげなく響く。Daveのドラムが軽快なリズムを刻めばScottのパーカッションがアクセントをつける。ここにJerry Heyのホーンが加われば贅沢すぎるくらい厚みのあるサウンドに仕上がるというものだ。最後に、今回のアルバムでは前作に続き、一時期多用された打ち込みが減り、よりライブに近い音に仕上がっていることも書き加えておこう。

始まったばかりの彼らのツアーについては、ファンの間の掲示板では「近くに来たらとにかくチケットを買え!」との叫びにも似たコメントが寄せられるほど、かなりの盛り上がりが期待されている。ライブで演奏される新作は、文字どおり「涙がちょちょ切れるくらい」かっこいい。そのライブでのかっこよさも充分にパックした「Let It Ripp」は今年発売予定の数々のアルバムの中でも屈指の名盤にあげられることは間違いないだろう。

まだ「食わず嫌い」の方がいらしゃったら、ぜひ試食していただきたいアルバム。あとは日本でもライブが見られることをひたすら祈るのみだ。 (まい)

   
Slow                     Speedy
Light                     Heavy
Mellow                     Hard
Lyrical                     Cool
Melodious                     Out of melody/code
Conservative                     Progressive/Tricky
Ensemble                     Interplay