則竹裕之 Cyber Interview Part 1.

ニューアルバム「B.C.A.D.」について

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則竹氏挨拶
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美芽.
今日はもしかして撮影用に洋服を着てきていただいたんですか?
則竹.
撮影がない・・ともいいきれないので、いつもよりはちょっとこぎれいかなっていう感 じですけど。(笑)
美芽.
なんかどこかで拝見してますが・・・ツアーパンフでしたっけ?
則竹.
服は全部自前で・・・たいした服じゃないんですけど・・・。
美芽.
えっ!自前!!
則竹.
自前って・・・こんなもんですけど・・・すごい安物です。(笑)
美芽.
まず、今回のアルバムについてうかがいたいんですが、今年のアルバムでは1曲目 に 則竹さんの曲が入ったということで、楽しみに聴いたんですよ。しばらく聴いてるうち に、スネアの位置がちょっと変わってると思ったんです。あれはオリジナルのパターン なんですか?(注:前書きページで流れているパターンです。)
則竹.
そうですね。まあ、太鼓のパターンは、ねえ、ドラマーですから・・・
美芽.
うわあ・・・斬新!!と思ってびっくりしちゃいました。
則竹.
そうですか?
美芽.
っていうか、はじめ聴いたときは、何か変わってる感じだと思ったんですけど、よ ー く聴いてたら、2拍目と4拍目じゃないって気がついて・・・
則竹.
そうそう。ひっくりかえってるのね。
美芽.
私、スコアを買って見たんですけど、両手でなんとかって書いてあって・・・(と こ こでスコアを出して則竹さんに見せる)ここで両手うちのパターンが・・・ってことな んですが・・・
則竹.
両手うちって・・・いつも両手うちなんですけどね、ドラムは・・・(爆笑)
ええと・・・(スコアを読んでいる。)
うん。・・・うん。要するに、オルタネート・スティッキングってやつですね。オルタ ネートのスティッキングというのは、まあ、16ビートの場合は右左右左右左、要する にただ交互に打っているだけで、叩く楽器を移動しているっていう一番まあシンプルな 動きなんですけど。この曲のリハーサル番号Aにあたる部分は、全部そういう、こうい うオルタネートスティッキングというドラムだけを抽出するとすごくシンプルなパター ンなんです。
美芽.
スネアを両手で打ってるんではないかという説があったんですが・・・
則竹.
ああ、そうではないです。1拍目にくるスネアが右手で、2拍目の16分のおしりのこ れは左手になるわけですね。非常にドラマー的な発想というか。
美芽.
この「Yuh-ja(勇者)」っていう曲は、作曲は何でなさったんですか?
則竹.
僕のマックにはヴィジョンっていうのがのっかってるんです・・・2.0かな。昔そもそ も マッキントッシュをうちのバンドに持ち込んだ人は伊東たけしっていう人なんですけど 、彼が当時マックのすごい初期でまだ日本人が高くてだれも持っていない時代に、こう いう面白いものがあるよ、って・・・で、ソフトにパフォーマーっていうのがあって、 それを入れて・・・レコーディングではどれから入ってるかな?ちょっと忘れちゃいま したけど、そういうものを伊東さんが買ってきたんです。コンピューターってすごいね 、っていうことで。伊東さんがその後新しいコンピュータにどんどん買い換えていって 、僕その一番古いやつをゆずってもらったんですよ。で、最初はそれで作曲するように なって、今はマッキントッシュのLC630ってやつに、ソフトはヴィジョンってやつを 使ってます。最近はずっとそれで曲作りしてますけれど・・・・
美芽.
じゃあ、ぱあああっとメロディーが思い浮かびますよね。そしたら、とりあえず五 線 譜にかきとめておくんですか?
則竹.
うーーーーん・・・。(考える)
僕はやっぱり、どっちかっていうと、即マックに・・・。で、僕、鍵盤も弾けないんで すけど、だから、あの、テンポ遅くしたりして入れていくんですけどね。コードの和声 の理論とかも、よくわからないので、まったくカンで、「こんな響きかなー?」と探し ながら、適当に押さえて「あ、たまたまいい響きだな」と思ったら、それをそのままや っちゃったり、作曲してるというよりは、・・・遊んでいるような感じ、そのうちでき ればいいかなという感じですね。僕は曲を書くのは、すごく時間がかかるんですよ。音楽理論をあまり知らないもので。ただ、耳だけは自信があるので、えー・・ まあ、耳だけをジャッジの頼りに、音をだんだん前に進めていくわけなんですけれども ・・・そうですね。
まあ今、コンピュータのおかげで鍵盤が弾けなくてもイメージだけはあるっていう人で も曲が書ける時代になったんで、僕なんかすごく助かってますけれどね。マックがなけ れば、僕、曲なんて書いてない!と思いますね。イメージがあっても細かいところまで 形にできないから。今は・・・時間を止めながら、絵を描くように音楽が作曲できるよ うになりましたからね。・・・いい時代ですけどね。ま、その弊害もあるな、って最近 思ったりするんですけど。
美芽.
例えば?

則竹.
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まあ、僕は小さい頃からドラムやってたんで・・・なんていうかな、ドラムのことだけ 考えてずうっと今まで来ましたけれど。でもその、コンピューターで、もう、オーケス トラが打ち込めちゃうわけですよね。そうすると、弾けなくても音楽を形にすることが できるじゃないですか、今。音源なんかもどんどんよくなってきてて、サンプリングの 音源なんか使えばもう、その人の音がそこにあるわけですから。なんていうかな。ひと つの楽器を演奏するっていう・・・・ことに興味を示す人が少なくなってきてるんじゃ ないかって。自宅DTMで、とりあえずオケが作れちゃうっていうのがね・・・。
まあ、両方とも文明の利器として使いながら、僕が一番大事にしているのは、アコース ティックドラムをいかに上手になるっていうか、もっといろんなこと表現できるように なるっていうことで、そのための道具ですから。いいんですけど。
美芽.
実は、ちょっと話が飛びますが、青年団(注:則竹氏が高校時代組んでいたバンド 名 )のKさん、っていらっしゃいますよね。
則竹.
えっ!?なんでそんなこと知ってるの!?
美芽.
実は、パソコン通信で知り合って、いろいろ高校時代のこととか教えていただい たんです。
則竹.
Kーーーー!!!!どうしてるんだーーーーー!!!!!(机につっぷして、笑顔で小 声で叫ぶ)
美芽.
6月に知り合ったんですが、お元気そうですよ。で、Kさんによると、高校時代は ギ ターで作曲なさってたとか。
則竹.
誰が?僕!?うわーやめて!!!(笑)作曲なんていえるもんじゃないですよ!(笑) うわあ恥ずかしいなあ・・・それ以上突っ込まないでください・・・昔のことは・・・ (笑)
美芽.
で、「勇者」のことをもう少しうかがいたいんですが。
ご長男のことを思って書かれたというお話でしたよね。

則竹.
本当のことをいうと、B.C.A.Dの前の、ウェルカム・トウ・ザ・ローズガーデン のた め にあの曲は書き始めたんです。
美芽.
じゃ、ずっと前に・・・!
則竹.
ずっと前に。で、イントロの8小節のパターンができて、Aメロもできたんです。で、 Bメロ行くときに行く前で止まっちゃってて、結局その・・・ウェルカム・トウ・ ザ・ローズガーデンのアルバムの作曲の締め切りに間に合わなかった訳なんですよ。で 、その曲のコンセプトっていうのは、うちのチーフプロデューサーの青木幹雄さんからですね、スポーツのサッカーかなんかのイメージのタイアップのための曲がほしいから、そ れで書いてくれる?っていうふうに電話があったんですよ。それが締め切りの1週間ぐ らい前で。で、僕、曲かくのって1年ぐらい平気でかかっちゃうんです。ほんとに1個 1個、こう、1拍づつ前に進めていくんで。だから、無理を承知で書き始めたんですよ 。だから、もとはスポーツをイメージして、っていうか、だからあのスチールドラムの 音もブラジルっていうか、サッカーってイメージで作り始めたものなんです。そのうち に、うちの子ができたりして。で、なんかその、その曲を作り足していく過程でなんか 、気持ちが子供に入っちゃったっていうか。なんか思ってないと書けないんですよ、僕 。うん。だから、自分の中ではいつのまにか子供のための曲になっちゃったんですね。 そういうきっかけが何かないと、漠然とできないんで。

美芽.
Bメロってサビのところですか?
則竹.
いや、サビはCメロです。もっと前のところですね。
美芽.
えっ。じゃあ、結構最初のほうでずっと止まってて。
則竹.
そうなんです。
美芽.
Bができたら、Cはけっこう、スッと・・・?
則竹.
・・・でもなかったんですね。(笑)
美芽.
Bもまた、結構難産だったというか。
則竹.
だから、締め切られた時点ではBまでできてたのかもしれない。で、Cができずに、あ きらめたんですよ。
美芽.
Cまでできたら、あとは構成をいろいろ考えて、できあがりっていう感じですか?
則竹.
はい。
美芽.
ご長男が大きくなって、この曲を聴かれたら嬉しいんじゃないですか?
則竹.
嬉しいかなあ・・・?(笑)あの・・・、自分自身、親父とかお袋にたいする思い出が ・・・、今も元気にしてますけど、自分がちっちゃいときにいろいろしてくれたことっ ていうのが、すごく自分の中で大きいんですよ、今でも。だから、うん・・・いろんな ことをしてあげたいなと思うんですけどね、子供には。
美芽.
ミュージシャンだと、お子さんと過ごす時間をつくるのが大変じゃないですか?
則竹.
うーーーん・・・ツアーとかレコーディングの時期は、いない、よね。逆に今みたいに 作曲のシーズンだったりすると、1ヶ月ぐらいべたでおうちにいますから。だから、子 供の誘惑を振り切って、スタジオに入って曲を作ったり練習したりしなきゃいけないっ ていう・・・それはそれで、結構・・・・・ねえ。つらいものがあるんですけど。
美芽.
じゃ、「お父さんいかないで!」みたいなのは。
則竹.
まだちっちゃいから・・・ぼちぼちそういう感じになってきたかな?って感じで すね。
なんせ僕、親父がジャズ好きだったもんで。ちっちゃいころからもう、今でいう外タレっ ていう言い方はあんまりすきじゃないんですけど、外人のミュージシャンがきたら、大 阪・・僕大阪なんですけど、見に行ってましたねえ。そういう感謝の気持ちっていうの はすごくあるし・・・なんかね、今でも演奏するのって誰のためっていうわけでもない んですけど、一番・・・・親父とかお袋に喜んでもらいたいっていう気持ちがおっきい ですね、演奏してて。
美芽.
このアルバムで気に入ってる曲、フレーズはありますか?
則竹.
そうだなあ・・理想が高いだけになあ・・・(笑)
まああの。音楽って瞬間瞬間のできごとですから。実際、演奏してるときっていうのは それが自分のなかで美しいと思えるからやってるんですけどね。そうだなあ・・・曲的 に好きなのはね、自分の曲はもちろん好きですけど、安藤さんの「SUNSHINE SHOWER」 って曲がすごい好きで。で、あの曲はデモテープの段階では、ループドラムっていうん ですか。それがすごく印象的だったんです。今クラブミュージックにはループものって 欠かせない一つの素材になってますけど、安藤さんがその上にメロディアスな曲を構築 したっていうのがすごく新鮮でしたね。うーん、メロディーとか、全部好きですね、あ の曲は。うん・・。ループドラムをレコーディングで使っちゃうと、つまんないですか ら、自分でやったんですけど。
美芽.
本当だったら、機械がずっと同じものを繰り返しているものを自分で再現したとい う か・・・
則竹.
うん。再現したというか・・・まあ、全然再現になってないんですけど・・・
美芽.
そういうものをモチーフにしたというか・・・イメージして作られた。
則竹.
そうですね。一応、ドラムパターンを2パターン重ねてあるんですよ。ほとんど最終的 な仕上がりはそれがわからないようになってるっていうか・・
美芽.
うーん・・・今一つピンとこないなあ・・・(スコアを広げる)ここに解説がかい て あるんですが・・・
則竹.
(ふんふんとスコアを読む。)でも、こんな風には聞こえないと思うんですよ。Bパタ ーンが引っ込んじゃってるから。
美芽.
組み合わせるって、同時に2つ叩いてるんですか?
則竹.
最初にこれで(Aパターン)叩いてレコーディングして、そのあとにこれを(Bパター ン)かぶせてオーバーダビングしたわけですね。だから、一緒にはできないんです。( 笑)手足が4本づつないと。(笑)
美芽.
あの、これ、ツアーのとき、演奏なさいましたよね?
則竹.
うん、もう、アレンジをワンドラム用に変えてやってましたから。
この曲は・・・非常にいい曲ですねー・・・。(しみじみと)
美芽.
あ、このスコアの写真のときとお洋服が同じなんですよ。
則竹.
あ、やばいなあこれ・・・これしかないんだよね・・・(笑)
美芽.
あっ!!そうそう。これ。バスドラムのビーターをアタック後、常に離す奏法にチ ャ レンジ・・・ってことなんですが・・・これって、腰が痛くなりそうなんですが。プロ の方は別かもしれませんが、どうですか?
則竹.
これはねえ、どうして離すかというと、普通、手で叩くタイコの場合って打ったあと離 しますよね。バスドラムだけなんですよね、つけたままっていうのは。それはそれで間違いじゃないんですが、より・・・その、バスドラム本来のレゾナンスっていうか・・鳴りを引き出すにはね、やっぱり打ったあとミュートしちゃうことになるんで、まあそのこだわりがきっかけなんですけど、 奏法変えると当然その、ニュアンスも変わってきますから、音の表情とか。今は両方使 い分けるのにチャレンジしてるんですけど。
美芽.
使い分ける・・・・!!(絶句)
則竹.
そう。うん。(笑)
美芽.
今回のアルバムでは全部の曲でアタック後はなしていたんですか?
則竹.
今回はそうです。
美芽.
全部!?!?
則竹.
うん。最初はもう、つりそうになりますよね。腹筋も痛いし、片足をずっと宙にうかせ てる状態ですからね。慣れるとね、楽にできるようになるんですよ。最初だけつらいん ですけど。こつを覚えるというか。
美芽.
ドラムを習うとき、バスドラムを踏んだら足をつけておくって私なんか教わりまし た けど。最初からは足を離す奏法をしない方がいいんですか?
則竹.
どうかなあ・・・。ドラムの奏法に関しては、出てる音が良ければいいんですよ。もう どーんな叩き方してたって。だから、あんまりまあ最小限のメソッドっていうのはあり ますけれど、バスドラムを離す、つけるっていうのは二通り・・・プロでも両方います からね。もう、好きにするのがいいと思うんですけどね。
美芽.
則竹さんが習ったときは、つけておくっていうことで習ったのですか?
則竹.
そうですね。僕はドラム習ったことないですけど、自然とつける奏法でやってましたね 。
美芽.
じゃいろいろ考えて、今回は離す奏法でやってみようと。いつぐらいから準備なさ っ たんですか?
則竹.
思ったときがやるときなんですよ。(笑)それをいつ最初に思い立ったかっていうのは 思い出せないんですけど、でもあの、これが最初の試みではないんです。もっと以前に 、やろうと思って挫折したことが2度ぐらいあって、まあ3度目の正直というか。で、 それをアルバムに残すのって、けっこう勇気いりますからね。これは離してるんだから すごいでしょっていったって、サウンドが良ければいいんじゃないのってことですから 。今、僕、田舎に引っ込んじゃったんです。都内じゃなくて、自然のあるところに。ま あ、そのぶん広いスペースをもつことができたんで、ドラムのブースを小さいんですけ ど作って、そこでいろいろ研究できるかなって感じなんです。今は、昔ほど何かをやる ために時間がかからなくなったっていうか。うちでドラムが叩けないっていうと、「こ ういうことやったらどうかな・・・」ってフレーズのアイデアが浮かぶんですけど。そ れを形にするのって、まずボーヤ(ローディーのこと。)に電話して、いついつスタジ オとりたいんだけど、みたいなことで。で、予約のすき間をねらってスタジオを予約し てセッティングして、それで練習に入るでしょう。思ったことを実際にやるまで、すご くタイムラグがあったんですよ。だから今は、そういう意味ですごくコンフォータブル ですね。



前書き
Part 2. 1996年の日比谷野音ライブについて
Part 3. 則竹氏の音楽的ルーツとミュージックセミナーについて


Interviewd by Mime
Photography by Linda
Copyright 1996 by CyberFusion