ラリー・カールトン/Larry Carlton(Guitar) クリス・ケント/Chris Kent(Bass) ビリー・キルソン/Billy Kilson(Drums) リック・ジャクソン/Rick Jackson(Keybords) マーク・ドウジット/Mark Douthit(Sax) 大阪ブルーノート 2002.4.20 2nd set |
ラリー・カールトンを初めて生で見たのは確か「ストライクス・トゥワイス」出たころだったからもう20年くらい前だろうか。それから幾度となく、カールトンの生のステージに接しているのだが、何度見ても彼のギターには新鮮な驚きがある。1948年生まれというから、もう今年で54歳なのだが、いまだにラリーのギター・スタイルは変化し、進歩し続けているように思える。 演奏する曲自体は昔に較べて、どんどんシンプルになってきているように思うのだが、その上で、自由自在にギターを操るラリーの表現力の豊かさが、その分余計に際立つように聞こえる。ラリーのギターの凄いところは、ほとんど音が聞こえなくなってしまうような超ピアニシモでも完全にギターをコントロールしていて、そこから一気に大音量のフレーズまで連続して持っていけてしまうところだと思う。このダイナミック・レンジの広さはCDにはとても収まりきっていないので、ライブでしか体験できない醍醐味だ。 今回のステージはちょっと意外な4ビート系のブルースで幕をあけた。この曲では今までのラリーとはイメージの違うジャズ系のアプローチを聞かせてくれ、ノン・ディストーションのオクターブ奏法、コード弾きを多用してフレーズを組み立てていた。以前にリー・リトナーに変わってフォープレイに加入した直後の来日公演ではリトナーが弾いていたオクターブ奏法のテーマをラリーが弾いていたのはちょっと違和感を感じたのを覚えているのだが、今回は完全に自分のものにして、ラリー流のフレーズに消化しきって組み立てていた。 その後、硬軟とりまぜた曲でステージが進行していくのだが、印象的だったのはスティーブ・ルカサーとの競演盤でも演奏されていた「The Pump」などロック色の強い曲での演奏だった。ルカサーとの競演ではルカサーがハードな演奏をする分、カールトンは逆に意識してメローに弾いていたように思ったのだが,同じ曲でも今回はギタリストはラリー一人なので、自らハードなロック色の強いジェフ・ベックを思わすようなフレーズで弾きまくり、今までにない面を見ることができた。 そして最後は「Room335」で客席を盛り上げ、「Sleep Walk」でセットの幕を閉じた。 「Room335」は若干ゆったりとしたテンポで演奏され、ビリー・キルソンのドラムソロをはさんでいたのだが、このビリー・キルソンは今回のバックバンドの中では一番光っていた。シンプルな8ビートでも力強いグルーブを繰り出すし、「Room335」のようなフュージョンスタイルの曲でもしっかりをノリを生み出していた。そしてソロでは驚異的に切れのいいハイハットワーク、シンバル・ワークを聞かせてくれた。ちょっとデニチェンを連想させるプレイなのだが、体重はデニチェンの半分以下じゃないかと思われるような小柄な体からは想像できないようなパワフルでシャープなドラムを聞かせてくれた。 一旦,メンバー全員が楽屋にもどっている間に店のスタッフが客席にクラッカーを配りだした。何かと思ったらアンコールの際にラリーのグラミー賞受賞のお祝いをするのだという粋な計らいだった。ラリーがBest Pop Instrumenntal Albumを受賞したスティーブ・ルカサーとの「No Substitution」はここ、大阪ブルーノートで99年11月にライブ録音されたものなのだ。それだけに店側の思い入れもあったに違いない。アンコールの拍手に迎えられてステージに戻ったラリーに店側から記念品とケーキが贈呈され、客席からスタンディングオベイションで祝福されたラリーは嬉しそうだった。そしてそのままストレートなブルースナンバーが演奏されて大阪の最終ステージを締めくくった。 ラリー・カールトンが、現在も世界最高水準のギター・プレイヤーであることを改めて見せ付けられたライブだった。まだラリーをCDでしか聞いたことがないという人、特に自分でギターを演奏する人はラリーの生のステージに是非とも接してほしいと思う。 そうそうそれと忘れてはならないことをひとつ。ラリーは最初から最後までES335を弾いていました。(橋 雅人) |
1999 Live Report |