Jeff Kashiwa with Chuck Loeb Interview
元Rippingtonsのサックスプレーヤー、Jeff Kashiwaがこの夏、4枚目のソロアルバ ム「Simple Truth」をリリースした。タイトルからイメージさせられるのは、感情を 素直に表現したであろう、純粋で清らかな音楽。じっくり聴いてみれば、表情豊かな メロディが、ある時は彼独特のはじけるようなサウンドで、ある時は彼独特の胸に響 く叫びで、そしてまたある時は彼独特の包み込むようなやさしい音で奏でられてい る。スムースだけれどそれだけに終わらない、独特のグルーヴを残したはつらつとし たアルバム。まさに話題となった3作目「Another Door Opens」に堂々と続く力作 だ。 所属レーベルであるNative Languageでは、早くからウェブ上でアルバムのプロモー ションビデオを公開、そこではJeffやいまやスムース系の売っ子ギタリスト、プロデューサーとなったChuck Loebを中心としたバンドのメンバーがいかに してこのアルバムを作り上げたかが新曲と共に紹介されていた。彼らに馴染みのLAやNYを飛び出してドイツでの録音、Jeff Kashiwa、Chuck Loeb、Dave Kochanskiの3人のがっ ちりとした協力体制、一体どんなプロセスでこのはつらつとしたアルバムは作られて いったのか?ご覧になった方はご存知かと思うが、疑問に答えるより、さらなる好奇 心を誘うプロモーションビデオだったと言える。 そんな彼らをキャッチしたのはIndianapolisので行われたライブだ。JeffとChuckを トップに向かえ、Jeffの馴染みの曲に加え彼らそれぞれの新作からも数曲演奏し、コ ンサートホールの熱気は「Hyde Park(The 'Ah, Oooh' Song)」で最高潮に達した。 このインタビューはその熱気覚めやらぬ楽屋で行われたものだ。JeffとChuck、精神 的に共通する点が多いと語る2人のミュージシャンにぶつけてみた疑問は、今回のア ルバムがどのようにして生まれ、どのような課程を経て音楽的にまとまっていき、各 参加ミュージシャンはどのような役割を果たしていたのか・・・などなど。時に笑い ながら、時にじっくり考え言葉を選びながら、JeffもChuckもリラックスした様子で ざっくばらんに語ってくれた。彼らの「Simple Truth」にかける熱い思いをぜひ聞い て欲しい。 | ||||||
Q1. どうやってこのアルバムのタイトル「Simple Truth」は思いついたのですか? Jeff Kashiwa(以下JK): このアルバムの曲を書き始めた時、まるで新しいことを始めようとしてるときに、大きな真っ白のキャンバスに向かっているような気持ちだったんだ。う〜ん、どうしようかなあ〜って思ったね。僕は、スムースジャズの範囲のうちならどこにでも行けるんだけど、さて、何がしたいのかなあってね。時にアイディアが多すぎるっていうのも問題なんだ。アイディアが浮かんでは消え浮かんでは消えって状態だから。それで、思ったんだ。よし、とにかく落ち着いて、自分が素直に感じるものを曲に表わそうってね。気持ちをクリアにして、自分の心に浮かんでくるものを何でも書き取ってみようって。そこで僕の頭に浮かんだのが、本当にものすごくシンプルなコードだったんだ。ストレートでシンプルなコード進行で、曲自体は確かにシンプルだけど何か力強いものを秘めていて、それで僕は名前を「Simple Truth」にしようって決めたんだ。
Q2.
今回のアルバムと今までのアルバムとの違いは何でしょうか?
Chuck Loeb(以下CL): いやあ・・・・・とにかく誰かが僕にアーティストとしてのビジョンを実現するのを手伝ってくれって頼んでくれることは、とても光栄なことだよ。今回の「Simple Truth」みたいな特別なものを思いついた時などは特にそう感じるね。思うに、Jeffと僕は、いわばスピリチュアルな傾向がある人間なんだ。だから「Simple Truth」について語るということはすごく重要な、僕らそれぞれの内面的なものに関わることなんだ。だから、自分たちの持つ日常的な要素を全て僕らから取り払うってことは素晴らしいことだと思った。例えば、君がニューヨークにいる時、いや、例えば僕自身がニューヨークにいる時、僕は自分に関わるいろいろな物事や事情のためにいろいろ違った方向に引っ張られてしまうんだ。ロスに住んでるメンバーやシアトルにいるJeffも、自分自身の環境の中にいたら、集中できないと思うんだよ。それで、ドイツで僕らは小さな家族みたいに集まるチャンスを得て、ユーモアも仲間意識も友情も(Jeff:あっという間にね!)高まったんだ・・・・。 JK: レコーディングの最初の日、Chuckがスタジオに入ってきて一言、「OK、素晴らしいよ!みんなここに集まれて最高だね。良かった!」Chuckとは場所や時間が合わなくて、僕らはやっと一緒にスタジオに入れて、Simple Truthを演るのに準備万端整ったってわけだ。で、彼はそのままこう続けたんだ。「ここで1つちょっとはっきりさせておきたいことがあるんだ。重要なことは、僕がどう思ってるかってことだからね。」(笑) CL: 僕としては、これだけははっきりしておきたいって思ったんだよ。誰でもそれぞれ自分のアイディアは持ってるものだけど、この場合、唯一本当に重要なことは、僕がどう思うかってことをね。 JK: もちろん僕らは大笑いさ。それですごくリラックスした気分になって、レコーディングにのぞんだってわけだ。まったく本当にすごい経験だったよ。
Q3.
Simple Truthのクレジットを見ると、3人の才能溢れるミュージシャン−Jeff Kahiwa, Chuck Loeb, Dave Kochansuki−が、ミュージシャンとしてだけではなく、プロデューサーとしても名前を連ねています。この3人はどう協力し合ってレコーディングにのぞんだのですか?単純に言って、誰が一番ボスだったのですか?
CL: 一つそのことについて印象的だったのは、アルバムの中のある曲についてなんだ。これはもともとジェフと、バンドのギタリストであるAllen Hinds(アレン・ハインズ)が書いた曲で、ちょうどレコーディングに取掛かる段階に来ていた時のことなんだ。僕らは、ギターにテープレコーダーに譜面を持ってスタジオのラウンジにあるソファに座って、そうそうJeffは鉛筆を持っていて・・・ちなみに彼は楽譜を書くのがものすごく早いんだよ・・・で、曲を書き換えるようなことをして、3人の間のすごくいい感じのやり取りを通じてすごくいい曲が出来上ったんだ。すべてがこんな感じで進んだんだよ。いくつかアイディアがある人もいれば曲をある音楽的方向に持って行きたいって思ってる人もいる。試してみて、そしてうまくいけば演ってみるっていうのが暗黙の了解って感じだったよ。で、その結果が音楽だ。そこには誠実さと喜びがあるんだよ。 JK: その曲の一番面白かったことは、3方向で書かれたってことなんだ。アレンと僕、それにチャックが加わって、その曲に実際にどんどん付け加えていったんだ。実際にビデオに撮ってあるんだけど、本当にすごいよ。僕たち3人とも腰を落ち着けて、うまく行かなかった部分を何とかしようって考えていて、そのうちアイディアが何となく見えてきて「あ、それかっこいいね!それ演ってみようよ。」って、どんどんアイディアが積み重なっていって、そしてその調子で実際にその曲をレコーディングしたんだよ。曲作りをした3人ともが本当にその曲に満足だった。それは自分だけで作ったものとは違うものになるんだ。それが肝心のことなんだ。
Q4.
Nativelanguage.comでのプレビュービデオで、あなたは音楽を通して「Chemistry(化学反応)」を捕らえたいって言っていますが、スタジオでそういった「Chemistry」を生み出すのに重要なことはなんだと思いますか?そして何故今回の「Simple Truth」のレコーディングでその「Chemistry」を捕らえることができたのだと思いますか?
Q5.
「Simple Truth」の中の、ご自分のお気に入りの曲について、コメントをください。
(私は“Something About You”の2分17秒あたりから始まるソロが好きです。とてもすばらしい。)
(それに彼のソロは凄くセクシーですよね。)
Q6.
バンドのそれぞれのメンバーについて教えてください。
Q7.
あなた方はいつからサックスやギターを演奏し始めたのですか?
JK: 僕は25,6年間演奏してきて、今本当に言えることは、僕ら二人とも、いまだに新鮮だし、興奮するし、まだ「もっとこれをうまくこなしたい、あれもうまくやりたい。」って感じてるってことだ。決して終わりがなくて、自分を謙虚にいさせてくれる。 CL: 歳をとっても希望だけは持ち続けられるからね。 JK: あ〜、もう歳だ。背中が痛い・・・(笑)
Q8.
どうやってジャズと関わるようになったのですか?
CL: 僕はかなりロックに入れ込んでたんだけど、2枚のレコードを聴いて、ジャズを追求していこうという気になったんだ。1枚はJohn Mclaughlin(ジョン・マクラフリン)のMahavishnu Orchestra(マハヴィシュヌ・オーケストラ)の「The Inner Mounting Flame」で、もう1枚はWes Montgomeryの「Smokin’ At The Half Note」だった。そしてそれまで僕は独学でギターをやってきていたんだけど、この2枚が音楽やジャズをきちんと勉強する必要があるとわからせてくれた。それからずっとさ。
Q9.
どうやってテクニックを向上させたのでしょうか?
CL: 練習は完璧さを創り出す。何かを一生懸命やっている時って、まあこれは僕の場合だけど、時々今まで長い間演奏したことがなかったような奇妙な瞬間があることがあって、それで演奏してすごく気分がよくなるように思うんだ。それに大抵僕はたくさん演奏し、練習したときに最高の気分になれる。 JK: 最近は僕は練習するとき、単に特定のものを練習するんじゃなくて、心の中を開いて感じるままに流せるように練習している。そういうことなんだよ。
Q10.
あなた方のアイドルは誰ですか?
CL: Michael Breckerも JK: Michael Brecker は凄い人だよ。あと David Sanbornに Kirk Whalum… CL: Wes Montgomery, Pat Metheny, Joe Pass, Pat Martinoからは大きな影響を受けている。それにJimi Hendrixからもすごく大きな影響を受けているな。僕はJimi Hendrixの大ファンなんだ。それにEric Clapton,にDjango Reinhardtとか、たくさんの違ったタイプのギタリストだね。それにサックスやトランペット奏者、Herbie Hancock, Chick Coreaなどのピアニストからも大きな影響を受けたよ。
Q11. どうやって作曲するのですか?例えば、メロディー、ハーモニー、コードのうち、どれが先にくるのでしょうか?
Q12.
あなた自身について話してもらえますか?Jeffの日系人としての生立ちについては日本のファンも興味があると思います。
(いままで日本にいったことはありますか)
Q13.
今後のツアーの予定など教えてください。来日の予定はないのですか?
Q14.
では、最後の質問です。もし3連休(3-day weekend)がとれたら何をしたいですか?
CL: もうすぐ休みを取る予定だよ。すぐ休暇なんだ。僕はただ家族と一緒に過ごしたいね、それから・・・・・・・ゆっくり寝たいな。 JK: 僕はもし睡眠が足りていて寝る必要がなければ、妻と僕とで家の手入れをしたいな。やりたいと思っていることが一杯あるんだよ。何がやりたいかって?ほんとに知りたいかい?じゃあ、教えてあげるよ。2階の寝室に新しいドアをつけるだろ、それに新しいモールディング、壁と天井の間の飾り、スパックルみたいなやつを直して、塗って、でも僕がこのギグに出る前はまだ半分だったけど...... CL: もういいよ。聞いてるだけで疲れてくるよ。(笑) JK: (笑)家の手入れなんだよ。僕がやることはそれだけだから。 CL: それはリラックスできるんだろう? JK: それに映画を見て、買い物をして・・・。
8月中旬リリース以来、ベテラン勢のアルバムラッシュにも負けずにかなり健闘して いた「Simple Truth」。Jeffもちょっと一段落というところだろう。 さて、10年在籍していたRippingtonsから離れ一人歩み始めたJeffだが、彼は確実に 自分の音楽を見つけつつある。Rippingtonsのファンの中にはいまだに彼のグループ 脱退を残念がる人もいるが、多くは彼の新たな音楽に興奮し、更なる期待を寄せる。 「Another Door Opens」、「Simple Truth」と、キャッチーなメロディと骨のある サックスの力作が続く中、彼の次なる一歩はどこに向かうのか?今の段階ではまだそ こまでははっきりしないが、彼のおかげで「スムースジャズ」がまた一段とバラエ ティに富んだ音楽分野になったことは間違いないだろう。 (まい) |
「Simple Truth」 by Jeff Kashiwa CD Review
「All There Is」by Chuck Loeb CD Review
Newport Beach Jazz Festival 2002 Live Report
Interview and Photography by まい
copyright 2002 by CyberFusion