特集 : 深町純 & The New York All Stars Live



2.アルバム収録曲について
1. Rocks (Randy Brecker)

75年にリリースされたThe Brecker Brothersのデビュー・アルバムに収録されていた曲。 このアルバムの姉妹作品とも言える1978年7月のモントルー・ジャズ・フェスティバルでのアリスタ・オールスターズのライブ盤「Blue Montreux」でも聴くことができる。 Michael BreckerとDavid Sanbornが交互にソロの掛け合いをするバトルがいきなり展開される。そしてRandy Brecker対Steve Khanのバトルがそれに続く。 Steve Gaddの切れ味鋭い裏打ちハイハットも気持ちよい。

The Brecker Brothers
2, Sara Smile (Hall and Oats)

77年にリリースされたMike Mainieriのアルバム「Love Play」に収録されていたダリル・ホール&ジョン・オーツのヒット曲のカバー。David Sanbornの泣きのサックスが本領発揮するバラード。Mike Mainieriのヴィブラフォンの響きも美しい。

Love Play
3. Virginia Sunday (Richard Tee)

Richard Teeのデビュー・ソロ・アルバム「Strokin'」収録。Michael Breckerのファンキーなソロがたっぷりと聞ける。最初の部分ではエフェクトをかましていたりするのが今では珍しいし、吹き始めの部分にミストーンがあったりとMichael Breckerも人間なのがわかる。

Strokin'
4. Inside Out (Randy Brecker)

The Brecker Brothersのライブ盤「Heavy Metal Bebop」に収録されている曲。シャッフルのリズムとホーンのテーマがカッコいい。深町純のシンセ・ソロもファンキーで、それに絡んでくるAnthony Jacksonのベースもまくっている。

Heavy Metal Bebop
5. I'm Sorry (Mike Mainieri)

Sara Smile同様、「Love Play」に収録の美しいメロディー・ラインの曲。Michael Breckerのサックスを前面にフィーチャー。最近はバラード作を立て続けにリリースするMichael Breckerだが、この当時から既にスローな曲でも超一級の表現力を持っていたことがよくわかる演奏。Michaelのソロを盛り上げるGaddのドラムもよい。 上述「Blue Montreux」にも収録されているが、断然こちらのヴァージョンがよい。

6. Dance of Paranoia Op.2 (Jun Fukamachi)

アルバム唯一の深町純のオリジナル曲。深町純の「On The Move」収録でいかにもBrecker Brothersのホーン・セクションを想定して書かれたような曲。深町のシンセ・ソロと共にRandy Breckerのエフェクターをかけまくったソロが聞ける。Gaddの繰り出すリズムが小気味よい。

7. Gypsy Jello (Richard Tee)

TeeのStaffの盟友Eric Galeのアルバム「Multiplication」に収録されている曲。 いかにもRichard Teeという切れ味のいいピアノが聞ける。ギターソロはSteve Khanにしてはファンキー目のフレーズで入ってくるが、後半はやっぱりというSteve Khanお得意の変態フレーズで締めてくれる。この曲のメインのソロをとっているのは、Mainieriなのだが、今にして思えばこの曲のソロはTeeにとって欲しかったような。

Multiplication
8. Jack Knife (Randy Brecker)

このアルバムで初めてレコーディングされ、その後1980年のThe Brecker Brothersの「Straphangin'」に収録される。今聞いてもコンテンポラリーな響きのする曲。その後のフュージョンの流れを予感させる曲でもある。

Straphagin'
9. Love Play (Mike Mainieri)

Mainieriのアルバム「Love Play」のタイトル曲。ドラマチックな展開の曲で、Steve Gaddのドラム・ソロがハイライト。今でもこの曲でのガッドのソロが彼の無数にあるレコーディングの中でもベスト・ソロと言えるのではないかと思う。 この曲は「Blue Montreux」の続編にあたる「Blue Montreux II」にも収録されているが、こちらはドラマーがSteve JordanなのでGaddのプレイは聞くことができない。


当時、大阪公演の模様はFM大阪でほぼ完全中継されオンエアされていた。筆者が当時エアチェックしたテープによるとアルバムに収録されていない曲ではDavid Sanbornの「Lotus Blossom」とMike Mainieriの「Blue Montreux」(コンサート時MCではBlue Moonと紹介されていた。)Steve Khanの「Some Punk Funk」が演奏されている。この大阪公演の「Rocks」はアルバムに収録されているものよりテンポがかなり速くて少々荒い演奏だが、あおりまくっていて面白い。
またSteve KhanがMCで「Inside Out」をちょうどリリースされたばかりのThe Brecker Brothersの新作「Heavy Metal Brothers」からの曲でジャケットのランディー、マイケルの写真だけで買う価値があると紹介すると客には受けずにバックのメンバー(マイケル・ランディーか?)だけが笑っているのが聞こえる。
Blue Montreux

上述のようにこのライブに先立つこと約2ヶ月前、7月にスイスのモントルー・ジャズ・フェスティバルに出演したアリスタ・オールスターズが「Blue Montreux」、「Blue Montreux II」の2枚のアルバムを残している。Mike Mainieri, Michael Brecker, Randy Brecker, Steve Khanが参加し、「Rocks」、「I'm Sorry」、「Love Play」が共通のレパートリーとして演奏されている。「Blue Montreux」2作はアルバム自体は素晴らしい演奏なのだが、これは実は後からかなりスタジオで編集されているようで、先日、WOWOWで放映されていたモントルー・ジャズ・フェスティバルでの未編集の映像を見ると、もろにリハーサル不足が伺える演奏で決していい演奏とは言えないものだったのが、興味深かった。 それにくらべるとこのNew York All Starsのライブはラジオで流された音を聴いてもアルバムを聴いてもほとんど編集の手が加えられていないようなのにも関わらず、モントルーに比べて圧倒的に演奏のレベルが高い。ひょっとすると参加メンバーはモントルーのリターン・マッチのつもりだったのだろうか?
Blue Montreux II


目次.特集 : 深町純 & The New York All Stars Live

1.アルバム発売当時の音楽状況、またその歴史的意義について

3.アルバム参加メンバーについて

4.深町純が語るThe New York All Stars



Copyright  by 2002 Cyberfusion
Text by Masato Hashi
Special thanks to
Jun Fukamachi