<2004年5月16日: The Day Two>(最終日) 初日に続いてかなり実力派が揃った2日目。メインステージのトップ、Lavay Smithに続いて登場したのが、Jeff Kashiwaを中心に若手サックスプレーヤーのKim WatersとSteve Coleが加わった"The Sax Pack"。それぞれのアーティストがさりげなく、だが着実にSmooth Jazz局への登場回数を増やす中、この組み合わせはSmooth Jazzファンからすれば、一粒で三度おいしいといったところだろう。そして、リーダー的存在のJeffが慣れた様子で楽しそうにMCをこなしているのを見ると、Rippingtons脱退以降の彼のソロとしての活躍ぶりが簡単に想像できる。3人のアーティストの個性をきちんと残したまま、全体として1つの流れを持ったステージにまとめあげる力量はなかなかのものだ。 さて、このステージで演奏されたのが3人の持ち曲と新しいアルバムからの数曲。自分自身の持ち曲の時は、もちろんそれぞれがリードしてステージを進めるが、ソロのステージと大きく異なるのが、両脇にさりげなく違った音の違ったアレンジを生み出すサイドサックスがいること。ステージは"The Sax Pack"ならではのかなりエキサイティングなものになった。 ここで内助の功役であるキーボードのMike Ricchiutiについて一言付け加えておこう。まだまだ名前的にはマイナーなこのアーティスト、実はソロアルバムからの1曲がRadio and Records誌の2004年のSmooth Jazz年間ヒットチャートにしっかりフィーチャーされており、じわじわと実力が認められてきている感じだ。そのソロアルバム「The Way I See It」だが、視聴したい方はぜひ彼自身のオフィシャルウェブサイト(www.mikericchiuti.com)へ行ってもらいたい。聴いていただければわかると思うが、音・メロディ共に馴染みやすく、その心地よさからすればDavid Benoitにも匹敵する作りになってる。3人のSax奏者を縁の下でしっかり支えたのがMikeの実力を垣間見れるアルバムだ。
1. "Everyday" by Steve Cole from [N.Y.L.A.] (2002) 2. "In The House" by Kim Waters from [From the Heart] (2001) 3. "Show Me Love" by Jeff Kashiwa from [Simple Truth] (2003) 4. "Off Broadway" by Steve Cole [N.Y.L.A.] (2002) 5. "The Ride" by Kim Waters from [Someone to Love You] (2002) 6. "Peace Of Mind" by Kim Waters from [From the Heart] (2001) 7. "Waterfall" by Kim Waters from [Someone To Love You] (2002) 8. "Our Love" by Steve Cole from [Stay A While] (2002) 9. "When I Think Of You" by Steve Cole from [Stay A While] (2002) 10. "Hyde Park "Aah Ooh Song" by Jeff Kashiwa from [Another Door Opens] (2002) 11. "My Lovin' (You're Never Gonna Get It)" by Jeff Kashiwa from [Peace of Mind] (2004) ファンの方々は想像ができると思うが、何と言ってもラストから2曲目のHide Parkでの、観客との一体感溢れる演奏が聴き所だ。観客の大合唱とJeffを中心とした3人のサックスが溶け合い、ぬけるような青空に向かって響き渡っていく瞬間を体験出来るのは、夏のジャズフェスティバルならではの醍醐味だろう。
演奏の後、3人はサイン・ブースへと向かった。それぞれが非常にリラックスしてにこやかだ。ステージからサイン・ブースまでは会場の脇を歩いて数分だが、3人がそこに着く頃には既にファン達の長蛇の列ができている。席に着くなりファンからのサインや写真のお願いに、にこやかに答え始める3人。いつも感じることだが、Smooth Jazzのアーティスト達は本当にフレンドリーで話し易い。(そのためか、それぞれのファンもついつい話が長くなり、長蛇の列はいつまでたっても短くならないが・・・。)
ここでリーダー格のJeffについてちょっと情報をアップデートしておこう。2002年の 「Another Door Opens」の中の"Hyde Park 'Aah Ooh Song'"のヒットに続いて、2003年に出された「Simple Truth」でもメロディアスな彼独特の音楽を披露し、西海岸のSmooth Jazz局でさらに人気度をあげたと言える。その人気をさらに確実なものにするかの如く、2004年の夏には新作「Peace Of Mind」を発売した。これまた彼らしいメロディアスなサウンドがいっぱいの秀逸作で、これまでのJeffの作品にすっかり「はまっている」ファンだけでなく、初めて聴かれる方々にもぜひお薦めの作品だ(以前の橋さんのアルバム評にある、いい意味で「今井美樹が歌いだしそうな曲調」は健在だ。)
そして、既にSmooth Jazzの重鎮になりつつあるPeter Whiteが登場。新作の「Confidential」からの数曲に加えて、過去のヒット曲を総ざらい・・・もちろん「Caravan Of Dreams」からの名作も次々と演奏され、ファン達は大喝采だ。しかもステージの途中、ファンには嬉しいMindiの飛び入り参加があり、会場はかなりの盛り上がりになった。ちなみにこのPeterのバンドには元RippingtonsのDrummer・Dave HooperとPercussionist・Ramon Yslasが加わっており、強力なリズム隊を控えたPeterのバンドの聴きごたえは充分だった。
1. Grady Nichols (sax) 2. Kevin Toney (sax) 3. Michael Lington (sax) * Dave Kozのバンドで人気を博しソロに転向したキーボードプレーヤーBrian Culbertsonの2003年のツアーに参加して知名度をあげた新人サックスプレーヤー。1997年のデビュー作「Michael Lington」、2000年の「Vivid」でその実力を着実に披露し、2002年の「Everything Must Change」で新人サックスプレーヤーとして一躍注目を浴びるようになった彼は、2004年の最新作「Stay with Me」でソロアーティストとして認知されるようになったと言える。 4. Paul Brown(g) 最終日のトリを取ったのが、これまたスペシャルユニットの「Guitars and Saxes」の面々――サックスにWarren HillとEuge Groove、ギターにMarc AnotoineとJeff Golub――というなかなかの顔ぶれだった。
カリフォルニアの青空の下繰り広げられる質量ともに充実したNewport Beach Jazz Festival は、初夏のイベントとしては最適だ。例年、アーティストのラインアップは3月上旬に発表になるので、その辺りに公式ホームページをチェックしてみてはいかがだろうか。Hyatt Newporterから宣伝料をもらっているわけではないが(笑)、ゴールデンウィーク後のちょっとした気分転換としてぜひお薦めしたいイベントだ。 最後に、今月頭に発表になった2005年のラインナップを紹介しておこう。2004年同様に西海岸系Smooth Jazzの人気者達が一堂に揃うNewport Beach――言い換えれば、過去数年、割合にアーティストが固定しているようにも感じられる――が、今年意外にも目を引かれるのはDavid Sanbornだ。夕暮れ時のNewport Beachに、David独特のあの尖がったメタリックな音が響き渡る風景も、これまたたまらなく魅力的だ。また、以下のメインステージのラインアップに、サブステージのアーティスト群が加わるので、ものすごい総勢人数のアーティスト達によるSmooth Jazzに、大興奮の3日間に請うご期待といったところだろう。(特にSaxファンの方々には、たまらないJazz Festivalになりそうだ!) <2005年 Newport Beach Jazz Festival>
5月13日(金)前夜祭:
5月14日(土)
5月15日(日) |
Photos and texts by Mai |