KANKAWA122「ROOTS PROOF」Pioneer (PICL1245)2002 - Japan   
KANKAWA(Organ), Satoshi Izumi(g), P.Koizumi(bass), Yoshihito Eto(drums), Nao Takeuchi(sax)

  ●骨太いストレート系  ○明るく爽やか系  ○骨太系と爽やか系の中間 
  ○R&B                 ○ブラック系         ○歌物・NAC/AOR 系       
  ○ラテン系(□ブラジル系  □サルサ系        □カリプソ系)           
  ○ユーロ系            ○JAZZ系          ○JAZZとFUSIONの中間系   
  ○ブルース系          ○ロック系        ○その他


Drive Bandの新作「Confusion」を最近聞いたばかりだと思っていたら、もうオルガン奏者KANKAWA率いる別ユニットKANKAWA122のアルバムが登場した。Drive Bandが日本の人気フュージョン・ミュージシャンを擁していたのに対して、このKANKAWA122は若手ミュージシャンで固められている。

サウンドの方向性はDrive Bandと共通したインプロビゼーションを主体としたファンク系のリズムの曲が核となっている。(ジャム系と言ってしまうと誤解を招きそうな音のように思うので敢えてこう表現する。)Drive Bandの「Confusion」はライブ盤だったのだが、このアルバムはスタジオ・レコーディングされた素材を編集するという手法がとられている。その為か、ライブ盤よりもより一層、内にこもった世界を作っているような印象を受ける。わかりやすく言うと「演奏してる自分たちが気持ちよければいいんだ。それでもよければ聞きたい人だけ聞いてちょうだい。」的なスタンスを感じる。決して万人受けする音ではないし、かなり敷居の高い音だと思う。

「Confusion」はキャッチコピーでマイルス・デイビスの「ビッチズ・ブリュー」を引き合いに出していたが、それよりもこのアルバムを聞くとマイルスの「アガルタ」を連想してしまった。延々と続く、インプロビゼーション、グルーブ、聞く者を無視したかのようなスタンス。このアルバムはまるでマイルスが「アガルタ」「パンゲア」で休止してしまった世界を追求し続けていこうかとしているようにも感じる。(ここでのマイルスは自らオルガンも弾いている)

但しこの「Roots Proof」が「アガルタ」「パンゲア」の域まで達しているかというと、それは「No」である。部分的に燃え上がるようなテンション、はっとさせるようなグルーブを聴かせる部分はあるが、そのパワー、テンションを全編に渡り維持し続けるまでの「アガルタ」「パンゲア」なみのレベルには至っていないように感じるからだ。

高いレベルでのテンション、グルーブ、パワーの持続というのは、高いレベルの技量を持ったミュージシャン同士の間で生み出される、その時たまたま起る奇跡のようなケミストリーなのかもしれないが、次のアルバムではそんな音を、聞かしてくれたらおもしろいのにな、と思わせる1枚でもある。(橋 雅人)

以下、2度にわたりKANKAWA氏ご本人よりこのアルバムについてのメッセージを頂きましたので、ご紹介します。

122の紹介をしてくださってありがとう。 しかし、1つだけグループのリーダーであり、作曲家である私の所見を述べさせていただきます。

俺はパンゲア、アガルタとも大好きなアルバムですが、今回122のレコーディングをするにあたり、まったく眼中にありませんでした。アガルタは、インプロビゼーションを中心としたジャズの最高傑作ですが、122は、インプロビゼーションの手法を使ったクラブミュージックだと考えます。

DRIVE BANDが外へ外へと展開することに対し、122は、より高度な芸術性、グルーブ感を大事にしたつもりです。

とりわけ、最も大きなポイントは、とにかく、新しい今の時代のサウンドを作りたかったことです。フュージョンらしさ、ジャズらしさ、をどれだけ多く排除でき、かつ、フリーダムの精神溢れるインプロビゼーションを繰り広げるべきだと考えました。

SOULIVEとのジョイントツアーでは、より大衆性を持つために、オープン感覚 のあるグルーブサウンドも演奏しましたが、122は、今後、よりトランス系クラブミュージックを目指したいと思っています。

8月10日に、世界のトップDJ達がリミックスしてくれたハイパーリミックスアルバムを発売する予定です。
是非、楽しんでください(KANKAWA)

前略
あれから、俺自身、122のサウンドについて考えてみました。前回にも書いたように、マイルスが造ったアガルタの世界や、ジョン・コルトレーンやチャーリー・パーカーが造ったあの世界のことをあまり気にせず録音したことは事実です。ただ、生意気と思われるかもしれませんが、十代からジミースミスを追いかけ、ずっとハーレムでストレートアヘッドなジャズをプレイし、自分の父親よりも年上のテキサステナー達と共演を繰り返してきてる内に、知らないうちにジャズミュージックが自分の血や肉になってきました。その後、新しいリズムとの出会いから、フュージョンミュージックの世界の扉をたたいたわけですが、決して馴染めなかったことも事実です。今、ニューヨークの若者を中心に生まれてきたライブミュージックシーン(ジャムという言葉でくくられることに抵抗はある)の音に猛烈に引かれています。まだ手探りで一見バラバラの方向を目指しているように見えるけど、50年代のビーバップ革命のようなどろどろとした力強さを感じています。勿論、70年代フュージョンの幕開けの時にも同じようなものを感じましたが。やっぱり、リズムかな。一瞬、普通のファンクのように聞こえるそのリズムの中に間違いなく今のテイストが感じられます。ロック、いや特にヒップホップのリズムが当たり前のように体に染み込んだ若者がたたくわけですから、当然新しいものが生まれるのかな。リズムが変われば、当然サウンドも変わるし、メロディーも変化する。  

特に122の録音にあたって、一番自分がやりたかったことは、今までにない手法。俺が感じたこと、感じたリズムをオルガンでプレイし、それをドラム、ベースプレイヤーが瞬間的に感じとりリズムを作る。そのリズムの上に新しく感じたコードとメロディーを乗せる。一旦作った安定したリズムコードの上でサックスやギターがインプロビゼーションを行う。演奏途中でまた新しいものがひらめいたら、即座にまたオルガンからリズムを造っていく。

俺にとって122は、大いなるジャズの実験室なのです。これはオルガンという特殊な楽器だからこそできる手法。大昔にトニー・ウィリアムスが「ライフタイム」を造り、フュージョンと後で呼ばれる音楽を造ったけど、それを発展させたかったわけです。勿論、サウンドのテイストの中にトランス系などと通じるヒップな要素が欲しかったことは事実ですが。パターン化されないリズムライン、型にはまらない進行、兎に角、少しでもより自由になることが一番大事でした。今後、より一層、より自由な感覚で音楽をクリエイトしていければ最高です。

 いろいろと長々書いてしまいましたが、なるだけ俺自身の気持を理解してもらいたいと思いました。ジャズの戦場にあるのかもしれないし、ひょっとしたらそうじゃないのかもしれない122ミュージック。ジャムという1つの流行り言葉でくくられるのは良いか悪いかも良くわかりません。ただ、最新のMMWの音などを聞くと、マイルスに出会った時と同じようなインプレッションを感じます。どうしてでしょうかね。それはきっと、今までになかった新しい音楽の匂いがするからだと思います。 (KANKAWA)

   
Slow                     Speedy
Light                     Heavy
Mellow                     Hard
Lyrical                     Cool
Melodious                     Out of melody/code
Conservative                     Progresseve/Tricky
Ensemble                     Interplay

「Confusion」CD Review  
KANKAWA Interview