06.01.2003 六本木ピットイン
新澤健一郎(key)   水野正敏(b)    音川英二(ts,ss)     ヤヒロトモヒロ(per)    岩瀬立飛(drs) 
  
1 路地裏の七面鳥
2 Quark Dance
3 Diversified Oneness       
4 Magnet              
      1 Mahout
2 Out of This Mind
3 GO-GO
4 鼓動
5 Oivren
6 Chimerical Chime
アンコール Boil Coil
最近のFusionといえばスムースJazzばかりだという声を聞くことがある。
自分も、それも時代の流れだと、少し前まではあきらめていた。
でも、ここ数年は様子が違う。これまでの型にはまってはいない、非常に個性的なバンドが次々と出てきている。
そしてそれらのバンドはFusionが発展の可能性を持ち続けていることを示唆していると感じる。

Nervioは昨年登場した、その可能性の最右翼バンドである。メンバーは既にネームバリューを持った人達であるにも関わらず、この人だったらこんな演奏を・・・というのを良い意味で裏切っている。これって嬉しい誤算だ。
その演奏は発展的でかつ創造性にあふれている。それはもしかしたら長らく刻まれてなかったFusionの歴史に、また新たなページが書き加えられるかもしれないという期待を予感する。

そんなNervioの2ndアルバム発売のツアーの1つである六本木ピットインで行われたライブにお邪魔させていただいた。

Openingに演奏された「路地裏の七面鳥」はそのネーミングもさることながら、演奏の方も非常にインパクトのある曲だ。実はこの曲はとても気に入っている。Fusionに新風と可能性をもたらす名曲に思う。
この曲はイントロが印象的だ。ピアノ音の繰り返しと思う音は打ち込みである。
しかし、その音がループし、牧歌的なSaxの調べ、パーカッション色彩感溢れる音、ベースの大地を思わせる低音が重なる。
そのうねりが極限に達したとき、それを破壊させるかのようにドラムが炸裂する。
音川英二のソプラノSaxは次第に熱を帯び、まるで切れたデイブ・リーブマンのごとく鬼気迫るものがある。
そして新澤健一郎のピアノによるソロ・・これが雄大であり冗舌だ。まるでラテン・ピアノのような力強いタッチで聞かせてくれる。
クライマックスは岩瀬立飛のドラム、ヤヒロトモヒロのパーカッションによるリズムの洪水。
最後にヤヒロトモヒロの一撃・・で次の曲にメドレーで流れ込む。

「Quark Dance」は 前の曲とのメドレーで演奏されるのだが、水野正敏のベースのワンフレーズで大きく曲の流れを変える。ダンサンブルなリズムが前の曲とのコントラストを作る。
音川英二はここでSaxをテナーに持ち変えるのだが、その図太いトーンに驚いてしまった。
少し聞かせていただいたリハーサルでは、テナーの音は押さえ気味だったが、さすが本番では”鳴り”が違う。
雄大なフレーズから細かいテクニックまで、スティーブ・グロスマンみたいなゴリゴリした印象がたまらんです。
水野正敏のベースソロも短いながら、エフェクトをかけて小気味良くまとめてくれる。

最初の2曲がかなりハードだっただけに、3曲目の「Diversified Oneness」は、わりとオーソドックスなFusionなので、むしろホっとさせてくれる。
テナーSaxがメインになったバラードで、メロウな感じがNYっぽくてなかなかい良い。
例えるならマイケル・ブレッカーのバラードを連想すれば近いものがあるかもしれないが、こちらの演奏だって胸にグっとくる素晴らしいものだ。

前半最後は「Magnet」で締めくくる。
すごい複雑なフィギュアを持った曲だなぁと思っていたら、その次に出てくるテーマがカッコ良いのだ。
ここで気に入ったのが新澤健一郎のMoogソロ。ただのシンセ・ソロではない。ここはFusionファンならば是非Moogソロと認識して欲しい。フェンダー・ローズやYAMAHAのDXのように、MOOGであることが特別なんだ。
新澤健一郎の完璧なMOOGソロの表現力は流石である。更にMOOGにプラスしてKORGのシンセとの二刀流は圧巻。
この場面をクライマックスに導き、カタルシスさえ感じる素晴らしいソロを聞かせてくれた。

      
少しの休憩のあと、ライブは後半に突入する。
実はこの後半がこのLIVEにおけるバンドの正念場なのではないかと密かに考えていた。
年季のあるバンドであれば、後半はこれまでの代表曲を並べればそれでOKで盛り上がるだろう。
しかし、Nervioはまだ歴史が浅いという物理的な意味で、そういったキャリアのあるバンドに比べたら不利になる。

さぁ。Nervioはどう出るのであろう?・・・と演奏してる人たちの気持ちも知らないで高見気分。
しかし、そんな考えは小ざかしいものであった。凄い演奏に打ちのめされた。

後半2曲目「Out of This Mind」は滅茶苦茶すごかった。特にここに来ての長いドラム・ソロである。
岩瀬立飛のドラムがまさに怒涛のパフォーマンスを聞かせて・・・いや、感じさせてくれたと言うべきであろう。
これがグイグイと引き込まれるようなソロで、空気が震えるほどパワフルなソロだ。
自分に座ってるズボンのスソがびりびりと共鳴する。
  
僕がうーんとうなった曲は「鼓動」。
CDではすぐテーマが始まるのだが、ライブではそのまえに短いながら新澤健一郎のピアノ・ソロのイントロを奏でる。
このピアノの美しさといったら・・・。まるでキース・ジャレットのソロ・ピアノを彷彿する。
そしてテーマが始まると音川英二のSaxがバラードのようにやさしいメロディを吹く。
とても聞いていて落ち着く気分になる演奏で、なにかキース・ジャレットのグループ・・とりわけ「My Song」のような気持ちよさを感じる素晴らしい演奏だった。

そして「Oivren」という曲では、ドラムの岩瀬立飛とパーカッションのヤヒロトモヒロが前に出てきて、ダブル・パーカッションになる。僕はこの曲がこのライブで感じたBESTだ。
2人のドラムの音に、ベースの水野正敏がテーマらしきメロデイを出すと、新澤健一郎がストリングス系の音でSaxの音川英二はその空間の中を自由に泳ぐかのように吹く。

しかし、クライマックスはこれからで、他の人の演奏がやむと2人のパーカッションの共演が始まるのだが、これが凄い演奏です。
いつまでも太鼓が続いて欲しい・・まるで飽きない。まさにビートなのである。
大地のサウンドだといいたくなるほど雄大な曲だ。
  
最後の曲「Chimerical Chime」では、ソロを取った順番にステージから姿を消す。
Sax→キーボード→ベース→パーカッション→そしてドラムのソロが終わると、誰も居なくなった・・・ではなくて、全員がステージに再び集まり大円団である。
アンコールに「Boil Coil」と、各メンバー紹介を行ってステージは終了した。


このバンドのライブはまさにFusionには未開拓な可能性があることを暗示していると思う。
むしろライブ聞いて、Fusionの本来持っていた可能性をこのNervioが思い出させてくれた気持ちである。
もしかしたら、このバンドはもっとなにかをしでかすのではないか(もちろん良い意味です。)そんなポテンシャルの高さを感じさせてくれるに十分な凄いライブだった。(TKO)

2003.02.05のNervio Live Report

REPORT:TKO
PHOTO:アスワン