Fusion的 Eric Clapton Live Report

Eric Clapton (Guitar, Vocals)
Nathan East (Bass, Vocals)
Andy Fairweather Low (Guitar, Vocals)
Steve Gadd (Drums)
David Sancious (Keyboards, Vocals, Guitar)
Greg Phillinganes (Keyboards, Vocals)

大阪城ホール 2001.11.22(木)


エリック・クラプトンと言えば、言わずと知れたロック・ギターの神様、近年はアコースティックなサウンドをバックにメローなヴォーカルでヒットを飛ばすポップス界のスーパースターである。
また、近年はモントルー・ジャズフェスでマーカス・ミラー、デビッド・サンボーン、ジョー・サンプルなどと共演するなど、フュージョン系ミュージシャンとの交流も深めている。

今回のジャパン・ツアーは大阪から始まって1ヶ月近くにも及ぶものだが、しばらく前に引退とかいう話しも流れていたので、ひょっとしたら見納めかもと思い久々に見に行くことにした。私自身にとっては1974年の初来日、91年のジョージ・ハリソンとのジョイント・ツアー以来10年ぶり3回目の生クラプトン体験であった。

オープニングはクラプトンが一人でアコースティックギターを持って現れたと思ったら、そのまま一人で演奏を始めた。確か「レイラ」のアルバムに入っていた「Key To The Highway」だ。ギター一本の弾き語りなのだが、カッコいい!。渋い!。

そして1曲目が終わるとバック・バンドがぞろぞろと登場。ドラムはスティーブ・ガッド、ベースはネイザン・イーストという強力なリズム隊だ。ギターの神様のバックでドラムの神様が叩くという何とも贅沢なバンドだ。2曲目はそのガッドが細かい手数でボサノバ風のリズムを繰り出して始まる。クラプトンがブラジル系のリズム??とちょっと意外な展開だ。立ち見まででている超満員の観客もちょっと戸惑った雰囲気になっている。軽快なノリのリズムをバックにクラプトンがオクターブ奏法もまじえてテーマをクリアなトーンで弾いていく。そしてそのテーマにヴォイスが絡んでいく。クラプトンとしては珍しいインスト・ナンバーで、ギターソロに続いてグレッグ・フィリンゲンのオルガン・ソロ、デビッド・サンシャスのシンセ・ソロと展開していく。横で一緒に見ていた妻は「PMGみたいだ」と言っていた。さすがにクラプトンとパットのフレーズは全然違うのだが、ブラジル系のリズムをバックにヴォイスと絡んだギターインストという意味では当たらずとも遠からずといったところか。この曲だけ聞けば立派なフュージョンだ。

ニューアルバムを聞かずにコンサートに行ったのだが、帰ってから聞いてみたらこの曲はアルバムのタイトル曲になっている「Reptile」だった。ちょっとライブから話しはそれるが、このニュー・アルバム「Reptile」ではこのタイトル曲以外にもスティービー・ワンダーの曲や、James Taylerの曲でマイケル・ブレッカーの最新作「Nearness Of You」でも取り上げられてた「Don't Let Me Be Lonely Tonight」などが取り上げられていて、今までになく、AOR色が強く、フュージョンファンにも聞きやすいアルバムになっている。

「Reptile」の後は。アンプラグドで「Tears In Heaven」、「Layla」、「Change The World」など、ヒット曲が立て続けに演奏された。そしてストラトに持ち替えた中盤はブルースを中心に聞かせてくれ、「Wonderful Tonight」、そしてエンディングでこの晩2回目となるオリジナルのエレクトリック・ヴァージョンの「Layla」まで一気になだれ込んだ。アレンジ違いの「Layla」を一晩に2度演奏するのはちょっと意表を突かれた感じだった。

そしてアンコールはクリーム時代の名曲「Sanshine Of Your Love」だった。クリーム時代の重い雰囲気と違い、ガッド・イーストのリズム陣のせいかタイトでファンキーな雰囲気になっていた。これでおしまいかなと思っていると、バック・バンドが軽いラウンジ・ジャズ風の雰囲気で演奏を始め、それをバックにメンバー紹介がされていった。そしてその後、その軽い雰囲気の演奏をバックにクラプトンが歌いだしたのは、何と「Over The Raibow」だった。これには驚いた。客席にもどよめきが広がっていた。「Rainbow Concert」じゃなくてあのオズの魔法使いの「Over The Rainbow」なのだ。まさかクラプトンがこんな曲を、しかもこんなアレンジでやろうとは想像もしていなかったが、フュージョン系のバンドの完璧なバックを従えたクラプトンの渋い歌声は最高だった。

欲を言えばせっかくなのだからガッドやネイザン・イーストのソロも聞きたかったが、彼らの演奏をバックに充実したギターを弾き、渋く歌うクラプトンのステージは非常に満足度の高いものだった。 (橋 雅人)



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