清水興 インタビュー

今回のナニワエキスプレスの再結成、ニューアルバム発表にあたりバンドの屋台骨を支えるベーシストでありリーダーである清水興にその再結成やレコーディングなどの話を聞くことができた。

(今回のインタビューは直接対面ではなくEメールでやり取りすることによって実現したものです。)


橋@CyberFusion (以下Hashi)
18年振りのニューアルバムということでその間、何度か再結成ライブは行われていましたが、今回はアルバムのレコーディングまで至ったというのはどういうきっかけだったのでしょうか?

清水興 (以下Ko)
2000年の秋に行ったツアーが、再結成への第一歩と言えます。それまでのREUNIONはライヴハウスの何周年であったり、誰かの結婚式だったりしたわけですから、何の寿(ことほ)ぐ事無く集まったのは解散後はこれが初めてだったわけです。

誰から言い出したってわけでも無かったんですが、何となく「そろそろまた演ってみない」的な空気が流れ出してきていたのは事実でした。従って言い換えれば、このツアーは再婚を前提としたお付き合いって事になりますか(笑)。ま、そのあたりは当時CYBER FUSIONに寄稿させてもらったTEXTを読んでもらえばよりよく分かると思います。

結果的にこのツアーで充分に納得出来る手応えを感じた俺たちはそれから真剣に再出発を考えました。ところがメンバーそれぞれ既に色々なプロジェクトに関わっていたりしたので、現実のものとするのに2年かかってしまったわけです。そしてようやくスタートしたのが去年の夏のツアー、及びレコーディングと言うわけです。

Hashi
18年前の解散について今だから話せるというような話があったら聞かせてください。

Ko
憎みあって解散したわけではありませんでしたが、メンバー間の意見に大きな隔たりが出来たのは事実でした。問題は大きく言って二つありました。ひとつは商業的活動に対する意見の相違です。解散した1986年はビジネス的には非常に大きな成功の可能性を持った仕掛けが構築されつつあった年でした。それだけにそう言ったセットアップに関連したレコード会社からの要求に対してもっと精神性を重んじなければならないというようなアゲインストな意見もバンド内にはあったように思います。

もうひとつはバンドのクォリティーに対する意見の相違です。ヨーロッパを中心とした海外公演を仕掛けようとしていたのですが、当時のクォリティーではまだ時期尚早であると考えるメンバーも多かったので立ち消えになってしまいました。

これらのしこりが解散に導いたのでは無かったでしょうか。

Hashi
レコーディングは淡路島でされたそうですが、どのくらいの時間をかけてレコーディングされたのでしょうか?またレコーディング中のエピソードなどあれば教えてください。

Ko
まず8月下旬に代々木のStep Way Studioで3曲録りました。このうち2曲はmimiちゃんをフィーチャーしたもので、彼女にトラックをLAに持って帰ってもらって向こうでアディショナルのボーカルトラッキングをしてもらいました。

続いて10月と1月に南淡路のStudio Chicken George Southern Awajiで残り全曲のベーシックと若干のオーバーダビングをしました。
このスタジオの環境は抜群で、老舗の観光旅館"うめ丸"の一角にあるので海の幸に恵まれた淡路ならではの素晴らしい食事はもちろんの事、鳴門大橋を眼下に眺める温泉大浴場や、これまた抜群の眺望が魅力のオーナーのプライベート・バーなどもあるという贅を尽くしたものでした。
ただしひとたび温泉につかるとなかなか出てこないメンバーがいたりとか、あまりに気分がいいのでついついプライベート・バーでの時間が長くなってしまう等の弊害も(?)ありましたが、とにかく贅沢なレコーディングだったと思います。

そうそう釣り師岩見和彦が自ら釣り上げたチヌやグレでの夕食があった事も付け加えておきましょう。

2月と3月に再び代々木に戻って残りのダビングとミックスをしたわけです。
ミックスも後半に差し掛かった時に一度メイン・レコーダーに使っていたハードディスクがクラッシュしてしまった事がありました。バックアップ用のハードディスクも用意していたのですが、こういうときに限ってそれ以前の3日間ぐらいのデータのバックアップを取っていなかったのです。真っ青になって色々と修復を試みるエンジニア、なべちゃんのPCのスクリーンには「予期せぬ事態によりこのアプリケーションを終了します。」のメッセージが映し出されるだけです。彼は一言つぶやきました。
「予期せぬ事態により俺が終了します。」
結局なべちゃんの友人のMacの達人の技でデータは全て復旧できたわけですが、地獄と天国を味わった一日ではありました。みなさん、バックアップはマメにしましょう!

予想以上にいい上がりになったので、マスタリングも本気で行こうという事になりLAへ持って行く事にしました。去年のマスタリング部門でのグラミー・ウィナーのガヴィン・ルーセンの手に委ねたわけですが、これがまた実に気持ちがいいんです。歴史を積み重ねてきた真空管の成せる業とでも言いましょうか、実にファットでウォームな音に仕上がっていくのです。彼の曲の理解力の速さと、仕事の手際よさには同行したなべちゃんも舌を巻いてました。

Hashi
ニュー・アルバムを聞かせていただいて、はっきり言ってかなり意表を突かれました。再結成のアルバムというと聞くほうは昔のサウンドをイメージしてしまうと思うのですが、今回のアルバムはかなりファンキーでヴォーカルまで入っていて昔の「Believin'」や「高野サンバ」の路線とは違ったものになっていますね。このあたりの製作意図について聞かせてください。

Ko
NANIWAの様式美、もしくはFUSIONの様式美というものはある程度理解しているつもりです。ただし今回はそういったものにとらわれないで作っていこうとしたのは事実です。
言い換えれば自分たちが今やりたい音楽をそのままやろう、という事でしょうかね。18年ぶりって事はある意味で新人バンドって言ってもいいくらいなので自分たちが一番鮮度を感じるものを中心に進めてきたと言えます。

Hashi
で、その1曲目からいきなり岩見さんのファンキーなカッティングから始まるヴォーカル入りのカバー曲ですが、このあたりのサウンドが新生ナニワを象徴しているということでしょうか?

Ko
この曲はmimiちゃんにゲストで来てもらう話が決まった段階で彼女の方から提案があった彼女の十八番(おはこ)です。特にこれが全体を象徴しているといった意識はありません。

Hashi
「DOKOZO」の呼べよ風吹けよ嵐というかナニワの再結成というより四人囃子の再結成かというようなプログレ調にはもっと驚きましたが、この曲はどういうアイデアからでてきたのですか?

Ko
プログレに関しては全員マニアとは呼べないまでも青柳を除いて全員70'sのかぐわしき数々のバンドのLPを追い求めた経験を持っていたりします。それに"うめ丸"のオーナー藤川氏は大のピンクフロイド・フリークだったりするので、この曲はお世話になった彼に捧げられたと言ってもいいでしょう。
ちなみに"DOKOZO"というのがプライベート・バーの名前です。

Hashi
今回のアルバムは皆でアイデアを持ち寄るという形で作られているのでしょうか?それとも清水さんがリーダーシップをとってまとめているのでしょうか?リズムやノリは清水さんプロデュースのKANKAWAさんのバンドでのサウンドとの共通点を感じるのですが。

Ko
トータルのプロダクションは俺がまとめていますが、それぞれの曲に関してはそれぞれの作者がプロデュースしていると言っていいと思います。
KANKAWA122とは方向性は違えどもいずれも俺自身が感じる鮮度にこだわっている関係で近しいニュアンスがあるのかも知れません。

Hashi
今回のアルバムのリリースはメジャーレーベルではなくてあえてインディーズ系 >を選ばれたそうですが、どういう理由なのでしょうか?

Ko
メジャーの方からも声はかけていただいていたのですが、何しろ新人バンドで趣味性の強い事をしていますから気長にプロモートしていかなければなりません。そういった事を考えるとやはりインディーズの方に魅力を感じたからです。
それに海外展開に対する制約も少ないですからね。

Hashi
海外展開というのは海外公演を念頭におかれているってことなのでしょうか?

Ko
当然公演もしたいですが、まずは複数の国でリリースできるディールを成立させたいと考えています。ヨーロッパを中心にアプローチかけて行きたいと思います。

Hashi
メンバーの皆さんはそれぞれが別のバンドで活動されているようですが、今後ナニワはどのように活動していくのでしょうか?今後の予定なども教えてください。

Ko
まず7月に沖縄に行きます。それから8月にまとまったツアーをします。 秋口以降も色々と面白いアイデアが出つつありますので楽しみにしておいてください。

6/11 渋谷 TOWER RECORDS インストアライヴ
7/6 沖縄 第21回 ピースフルラヴ・ロックフェスティバル2003

NANIWA EXP life of music tour 2003
7/7 那覇 D-set
8/6 名古屋 Apollo Theater 8/7 浜松 space-K
8/8 京都 RAG
8/9 大阪 BIGCAT
8/10 神戸 Chicken George
8/20 郡山 Hip Shot
8/21,22 東京 Blues Alley

Hashi
どうもありがとうございました。



NANIWA EXP特集目次へ戻る

Photos courtesy of NANIWA EXP
Interview by Masato Hashi
copyright 2003 by CyberFusion