杉山泰のLAレコーディング日記 Part 4
ピアニストの杉山泰のLAレコーディング日記の第4回目です。今回はレコーディングも2日目で佳境に入り、本場LAのミュージシャンとのレコーディング・セッションの雰囲気が生々しく伝わってきます。
Part. 4 Recording The Day Two
10月17日(木)
江口正祥/杉山泰 今日はレコーディング2日目、スタジオに着くとピアノを調律してくれている、今回のピアノはDavid氏がいつもレコーディングで使っているヤマハのC7をわざわざスタジオに運び入れてくれた。Thank you so much!
さて今日はもう1TAKE目から全開でいくぞと気合いも十分。しかも1曲目はT's Kitchenという。ブルースの曲でジャムっぽくできたらなと思って書いた曲。今日の3曲は僕の10年来の友人で、現在LA在住、リーオスカーの後任として現在WARというバンドでブルースハープを担当している、Tetuya Nakamuraをフューチャーした曲だ。譜面はこの曲もメロディーとコードだけ。
ファンクっぽいイメージなんだとか僕がぶつぶついいながら、ちょっとピアノでテーマのメロディーを弾くと、もうわかったと言わんばかりに始まっちゃったー!しかもVInnieがCDにも入っているけどRock'n Rollと言ってカウント&フィル。アーかっこいいなーと、聞いている場合じゃないでしょって感じでまた取り残された。本当にかっこよくて聞いちゃうんだよね。彼等は本当に迷わないし途中でテンションを落とさない。必ず始まったら最後まで行く。それはやはり自分では判断できないところで、どのTAKEがベストになるかわからないという、ミュージシャンなら誰でも経験があると思うけど、案外だめかなーと思って弾いているTAKEがすごくよかったりする事がある。そして2曲目がいよいよPat MethenyのSong for Bilbao、ここで僕のテンションは最高潮に達し、今度こそTake 1で俺も決めてやる!となんかつっぱりみたいな精神状態。これは今考えると笑える。そこで一度リハという事で、僕はまわしていると思ったのだが、Tapeは回っていなかった、幻の演奏というのがあって、僕はこれが録音されていたらなーと本当に思う。もうそれは格闘技の様なテンションでみんな弾きまくって突っ走ったという感じで、終わった時みんなで大笑いになった。David氏は余りの粗い演奏に苦笑いしていたが、なんか時速300キロのブレーキの効かない車に乗っていたみたいでした。さて落 ち着いてTake2これがすごく良くて、CDに収録されています。Patのファンの人はどう思うかな?
今日はこれでVinnieとAbeは終了であとは僕と江口さんとTetuyaの3人でやるHome Againという曲。という事で記念撮影大会になる、ここではやはりファンになってしまいましたね。この日はAbeの息子さんのAbraham Laboriel Jrも遊びに来ていて、僕はバークリーで一緒にいた時期があったのでそれを言うとすごく懐かしがってくれて盛り上がりました、で今ポールマッカートニーでコンサートツアー回っているそうで、11月に日本へ来るとの事で、僕がチケットもっているよ、声かけるから探してくれよ、と言うと絶対探すよ!とお互い調子よい事を言い合っていました。
ヴィニー・カリウタ/杉山泰 ここまで来て僕は何かプツンと緊張の糸が切れて、疲れがどっと出た感じで次の曲ではNGを連発。どんどん悪循環にハマっていったところで、David氏の一言、Yasu,Don't think too much.この言葉に救われて、そのあとすぐOKテイクがとれました。このバラードでのTetuyaのハーモニカは本当に素晴らしいと思います。David氏の弾いてくれたシンセストリングスも美しかったです。
この後、Davidが夕食を御馳走してくれるというので、Blue BirdのGuitar Over Dubを30分で終えなさい、そして飲みにいくぞーと言っていました。そしてDavid氏行きつけのレストランでみんなで食事。これが素晴らしく美味しかった。興味がある方はそのレストランを教えますよ。David氏も安心したようでここまですごくうまくいっていると、言ってくれていた。でも僕は何故かその夜全然眠れなくて、今思うとやはりすごい興奮と疲れが一度にやってきて、これはこれまでの人生で一度も体験した事のない感覚だった。眠れないのはつらかった。
2日目終了!(つづく)by Yasu Sugiyama
Copyright by 2002 Cyberfusion
Special thanks to Yasu Sugiyama