「マイルス・ディヴィス・アット・フィルモア」は、プロデューサーのテオ・マセロによって大幅に編集されたライブ・アルバムであることは良く知られているが、遂にその未編集版が公式盤として発売された。
チック・コリアとキース・ジャレットが揃って参加し、人気も高いアルバムだけに待望のリリースだ。
これでようやく幻のヴェールがはがされたと言っても過言ではないであろう。
演奏は意外にというか、想像通りというか、フィルモア・ウエストのライブ盤で完全収録とされていた「ブラック・ビューティ」にかなり近い。
これを聞くまでは、「アット・フィルモア」は、キース・ジャレットが加わったことでは過激さを増したとばかり思っていた。
しかし、テオ・マセロはライブのハイライト部分をつなぎ合わせたのだなということがわかる。
考えてみれば、本当はCD1枚分またはLP2枚分の演奏を、LP片面に詰め込んだわけなので、元の演奏をだいぶ削り落とさなければ出来ないはずなのだ。
では、削られた部分は無駄だったか (?)と考えると、ここは意見が分かれるところであろう。
例えば、マイルスのテンションの高いソロに続き、次はステイーブ・グロスマンのテナーサックスが続く。
このグロスマンのテナーソロがオリジナルではカットされたのだが、確かに直前までマイルスの鬼気迫るソロがあり、マイルスが引っ込むとバンド全体的にテンションが落ちるようにも聞こえる。
だからと言って縦横無尽に吹いているグロスマンに、ファンからすれば遂にフィルモアでの幻だったソロを聞けたということは感慨でいっぱいなのである。
キース・ジャレットやチック・コリアにも同じことが言える。オリジナルで唐突に出てくるキーボード・フレイズも、実はカットされていたメロディに接続されていた部分だったなんて知って驚きである。
ここまで来るとテオ・マセロは編集だけではなく、創作の域にまで達したコラージュを施したとも言えると思う。
オリジナル「アット・フィルモア」の過激さは作為的に編集されたものだとしても、それも含めて作品であるという視点からすれば、こちらが正解であろう。
反対に本作は未編集完全版であり、オリジナル版にあった不自然なつなぎは無く、演奏すべてが見通せるためライブ感覚が満杯なので、こちらを推す人がいても不思議ではない。
これは誰がなんと言おうとも、同じ演奏なのだから、結局は好みでしかない。
結果的に長年、オリジナル「アット・フィルモア」に疑問に感じていた部分が少しずつ氷塊している。
これまでもマイルスの未発表Boxでは「Complete On The Corner Sessions」、「Complete Jack Johnson Sessions」を聴くことで、どこがどこに編集で使われ、そして新たな発見をしてきたかと思う。
本作も位置づけとしてはライブの完全版と捉えるだけでなく、素材としてのセッション集と同類と考えても良いのかもしれない。
# ようやく幻の音源が、正式盤で出たことに感慨ひとしおです。 (TKO)
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Progresseve/Tricky
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Interplay
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