孤高のベーシスト、ミロスラフ・ヴィトウスの意欲作「Universal Sycopations」の2作に続くスタジオ盤である。
現代のジャズ界において芸術としてのジャズに真摯に向き合い、同時に常に高いレベルのアウトプットを出している数少ないアーティストの一人と言ってよいだろう。
最新作は題名からもわかるとおりウェザー・リポートをテーマにしたアルバムである。
とは言え、ウェザー・リポートのカバーは1曲もなく、ウェザーの音楽を土台にした新たな音楽という形をとっている。
ライナーに記されたヴィトウス本人の言葉を借りるなら「1970年に自分がウェザーに持ち込んだコンセプトを使った新しいレコーディングであり、それはリズムセクションが隷属的な地位にある古い役割から脱却した楽器同士の会話と等価性である」ということだ。
1曲目の「Variations of W.Shorter」ではいきなり「Nefertiti」のモチーフが登場する。
トランペットのフランコ・アムブロセッチが参加していることも相まって、ウェザー・リポートを通り越してマイルス・デイビスを連想させるような音だ。
2曲目の「Variations of Lonely Woman」ではそれがオーネット・コールマンまで拡がっていき、4曲目の「Surfing With Michael」はタイトルの通りヴィトウスとゲストのマイケル・ポルタルの2人のフリー・インプロヴィゼーションのように聴こえる。
そして5曲目の「When Dvorak Meets Miles」ではドヴォルザークまでも登場し、「新世界」のフレーズがモチーフとして使われている。
タイトルには「ウェザー・リポート」を冠するもののアルバムの内容はそれに止まらずもっと拡がりを持っている。
ライナーには自分が脱退して以降ファンク化していったウェザーについて否定的とも取れるようなヴィトウスのコメントもあるのだが、このタイミングでのリリースはザヴィヌルへの追悼がきっかけであることはほぼ間違いないであろうから、これがヴィトウスなりのウェザーへの、そしてザヴィヌルへのメッセージということになるのだろう。
(橋 雅人)
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Progressive/Tricky |
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Interplay |
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