Cyber Fusionの新譜紹介でベスト盤を取り上げるのは珍しいが、この深町純の「GOLDEN☆BEST」は多くの曲が今では廃盤となり入手が難しいデビュー時から日本のクロスオーバーの先駆けとなった70年代の作品から選ばれている。

始めの2曲は今ではちょっと想像できないシンガーソングライター時代の作品が並んでいる。

そして3曲目からクロスオーバーの時代に突入していく。
3曲目の「Stick Freighter」、4曲目の大村憲司の手による「Left Handed Woman」は日本のミュージシャンによって演奏されているが、5曲目以降のブレッカー・ブラザーズやスタッフをゲストに迎えた演奏と比べても全く遜色のないすばらしい出来だ。
特に「Stick Freighter」での若き日のポンタのドラムスの切れ味の鋭さ、「Left Handed Woman」での大村のギターの多彩なフレーズの組立てには彼らの実力を再評価させられる。

5曲目の「Spiral Steps」、6曲目の「The Sea of Dirac」は、複雑でトリッキー極まりないこの時代の深町の真骨頂とも言えるような長尺の曲で、当時無名に近い存在だったブレッカー・ブラザーズなどのＮＹのスタジオ・ミュージシャンを起用して繰り広げられるハイ・テンションの演奏は一聴に値する。聴いたことがない人は是非聴いてほしいものだ。

7―9曲目のスタッフをそのままゲストに迎えた演奏はさすがにスタッフ色が濃くでているが、9曲目の「Sea Horse」では深町のシンセ・サウンドとスタッフのサウンドがミックスしてユニークなサウンドが生まれている。

10、11曲目はブレッカー・ブラザーズを日本に迎えて日本のリズム・セクションとともに行われたライブを収録した「Triangle Session」からの選曲。11曲目の「Stick Freighter」は新らに発見されたオリジナル・マルチ・トラック・マスターからの新ミックスで「Triangle Session」のオリジナル盤とは別ミックスになっている。
「Triangle Session」はデラックス・ヴァージョンとして未発表曲も含めて2枚組で8月発売される予定。　そして時系列的にはこのアルバムには収録されていないが、ニューヨークの精鋭を集めた「On The Move」、そして歴史的なライブ盤「New York Allstars Live」と続いていくことになる。

この「GOLDEN☆BEST」は普通のベスト盤とは一線を画す濃い内容で、かなりのマニアでない限りは収録曲を全て持っている人は少ないのではないだろうか。 （橋　雅人）

Slow												Speedy
Light												Heavy
Mellow												Hard
Lyrical												Cool
Melodious												Out of melody/code
Conservative												Progressive/Tricky
Ensemble												Interplay