Akiko Grace 「JAZZ Street〜 The Duo+」コロムビア/SAVOY (COCB−53031) 2002 - Japan   
アキコ・グレース(p) 中西俊博(vin)、藤原清登(b)、赤木りえ(fl)、中村善郎(g、vo)、川嶋哲郎(ts)

  ○骨太いストレート系  ○明るく爽やか系  ○骨太系と爽やか系の中間 
  ○R&B                 ○ブラック系         ○歌物・NAC/AOR 系       
  ●ラテン系(■ブラジル系  □サルサ系        □カリプソ系)           
  ○ユーロ系            ●JAZZ系          ○JAZZとFUSIONの中間系   
  ○ブルース系          ○ロック系        ○その他

2002年1月に「フロムニューヨーク」を初リリース、続く9月に「マンハッタンストーリー」を発表したアキコ・グレース。彼女がナビゲーターをつとめる、BS wowow2ラジオ番組「Jazz Street」の中で迎えた、5人のゲストミュージシャンとのスタジオライヴが今回、アルバム「The Duo」に収められた。 それぞれ多彩な活躍を見せている5人と、アキコ・グレースのピアノのDuoは各2曲づつ収められており、いままでの2枚とはまた違った特別なアルバムだ。 今回はグレースが前面にでるより、それぞれのカラーに合わせてグレースが鮮やかにトーンを変えているのが印象的だ。相手をひきたて相手から音を引き出すのがうまく、そして奇をてらわずに、彼女のピアノの表情はオーソドックスで、とても安心して聴けるものだ。

中西俊博の泣くようなバイオリンの1曲目では、クラシッカルな奏法、2曲目グレースの作品「So beat it」では時折打楽器的にも聴こえるバイオリンの迫力ある弓さばきには、堂々と構えたピアノで答えている。

オーケストラでも演奏し、ソロでの活動も多く、ジャンルを超えたベースの藤原清登。音の美しさとスケールの大きさでは抜きん出たベーシストだ。彼の作品「Rain」では、少ない言葉で語るよさを堪能できる。きめの整ったスローナンバーだ。藤原清登も、アキコ・グレースも、基にクラシックのテイストも持ちつつ、幅広いジャンルを感じさせる。「when I fall in love」で、グレースは、ハーモニーの複雑さや、熟達した技巧をさらりとアドリブに流し込み、仰々しくなくしっかり聴かせ、もちろんジャズのテイストも味わえる。2人ともシンプルに鳴らしているだけなのに、間合いの素晴らしい、ささやきのようなDuoだ。

赤木りえの自在変化のフルートを迎えた「straight no chaser」では、赤木りえの鼓舞するような、息遣いそのもののフルート、そこにグレースも、フルにピアノを鳴らしている。「what’ s new?」での、Bill Evansをあおるような、Jeremy steigを思い出させた。そして一転、ゆったりした「como fue」のフルート。ここでもソロを支える抜群のうまさが目立つ。

中村善郎の、ギターもヴォーカルも、例えば、ジョアンジルベルトの声と歌の持つ叙情に限りなく近く、驚嘆に値する。ピアノはなぜかなつかしい雰囲気がよみがえる。新しすぎないピアノに、息の仕方に、ボサノバにしっくりくるピアノに、すっかり変化している。

川嶋哲郎の、初リーダーアルバムのタイトルチューン「My soul」では、そのアルバムの演奏とは、うってかわり、グレースのピアノで、ダイナミズムより、静けさ、優雅さに重きをおいた演奏になっている。グレースの曲「white roses for you」は演奏もさることながら、作曲の才能も窺える。彼女のピアノの輝きが出て、川嶋哲郎もグレースも、相当の深みを持つミュージシャンだというのがよくわかるプレイだ。

アキコ・グレースがメジャーデビュー1年にして、すでに多くの支持を得ているのは、細やかな、真摯なピアノで、どんなタイプの演奏者とも、確かな音楽を作れるその確固とした実力にあると、改めて気づかされる。 彼女のセカンドアルバムに入っている曲「pulse fiction」の別テイクが、ボーナストラックで最後に入っている。強烈な主張ではないのに、はっきり意志を発する、全体をまとめこむ力強い存在感のピアノ。そしてスピード感溢れる、未来的なピアノトリオだ。 ぶつかりあって作り出す音楽ではなく、溶け込むグレースのピアノに魅せられる。 番組中の録音がそのままアルバムになったとはいえ、かなり豪華版で、あちこち巡ったような、聴き徳感のあるアルバムだ。(ユン)

   
Slow                     Speedy
Light                     Heavy
Mellow                     Hard
Lyrical                     Cool
Melodious                     Out of melody/code
Conservative                     Progressive/Tricky
Ensemble                     Interplay