彼に関する資料は多く持ち合わせてないのですが、元々ジャズ出身のギターリストで、すでにベテランといっていいキャリアがあります。主にアレンジャー、プロデューサー、セッションミュージシャンとして活躍しており、手がける音楽もジャズからJポップ、CM、アニメソングに至るまで幅広いものです。いわば裏方稼業が活動の中心のため、自己の作品を出すことはめったになく、私の知る限りではこれまで出たソロ名義の作品はわずかに2枚のみです。しかし、’83年発表の「ULAYASU」(「浦安」のこと)は、日本フュージョン史の中でも傑作に属するひとつだと確信しており、私はこの作品をほぼリアルタイムで聴いたのですが、当時ハマりまくっていた記憶があります。(このアルバムは後年、曲を追加しタイトルを変えてCD化されたようですが、残念ながら現在廃盤となっています。)ギターリストとしてもわが国屈指のテクニシャンであることに間違いはないでしょう。 さて今回の本作ですが、昨今主流のスムースジャズを意識しつつ、随所にRapを導入したHip Hop系の作品となっており、全体的にはタイトル通りジャズ色が強いものの、いわゆる保守派ジャズファンが好むような作品ではなく、むしろフュージョンファン向けの作品といえましょう。このままダンスクラブにでも持ち込みたいような曲が多く、いわば今風の「カッコいい系」とでもいいましょうか。リズムセクションが打ち込みによってその傾向をより強めています。ギターに関してはさすがツボを押さえたプレイではあるものの、あまり出すぎることがなく、少々物足りない気もしたりしました。 彼が今この作品発表に踏み切った意図はよくわかりませんが、おそらくスムース系の隆盛に触発された部分はあるでしょう。見方によってはジャンケンの後出しみたいな部分も感じますが、妙な理屈をつけなければ夜の街のドライブなんかには向いていると思います。クラブ系ダンスミュージックの好きな人にはおすすめでしょう。 ○実はもう少し「正調」フュージョン的作品を期待したのですが・・・個人的にはあの「ULAYASU」の熱気には及ばない何かを感じています。(セリエJ)
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