スタジオ盤としては、ほぼ3年振りとなるオリジナル新譜です。 この作品は注目点が多いです。 まず、今回はコロムビア系新レーベル「Magic Notes」第一作になるとのことですが、この「コロムビア系」というところが注目です!そうです、彼は82年以来ずっとポリドール系DOMOレーベルから作品を出してますが、それ以前の「キリン」「トチカ」「オリーブス・ステップ」など彼の黄金期の作品はコロムビアだったのです。古いファンはまずこれだけで何かやってくれそうな気がしてワクワクしてしまいます。 次に、メンバーを見てビックリ!・・・これは、かつてのKAZUMI BANDそのものじゃないか・・・このメンバーを集めたからには、タダじゃすむまい、と期待に胸は高鳴る一方です。 さらに驚くべきことは、実はメンバーはこれだけではなく、なんとフル・オーケストラをバックにしたがえたセッション作品だったのです!!フル・オーケストラ・・・そう、これはまさに、かの名作「ヴィレッジ・イン・バブルス」(’78)の再来じゃーないか!!!(私はこのアルバムは数ある彼の作品の中でも間違いなくベスト5に入る傑作と思っていますが、何故かこれまで一度もCD化されておらず、常々不満に思っているものです。)・・・というわけで、この作品は相当な期待をこめて手にすることとなりました。 しかし期待が大き過ぎたせいか、聴いてみるとこれが案外淡白な味わいなんですね・・・これは、レーベルの意向か、プロデューサー(キーボードの笹路氏)の狙いかわかりませんが、とにかく大人っぽく聴き易いものにしたかったのでしょう。オーケストラは「ヴィレッジ…」のモダンな演奏に比べこちらは何かノスタルジックな感じのするもので、ことさらオーケストレーションを強調する作りは、どうもあまり気に入らないのですが、彼のギターはさすがにバックに負けずよく歌っています。今回はこのギターの「歌」とオーケストラとのアンサンブルがポイントのようで、彼得意のディストーションギンギンのトリッキープレイは一切ありません。 これは聴くほどに味わいの増す作品といえましょう。かの「ヴィレッジ…」のような張り詰めた緊張感は感じられませんが、いい意味でリラックスした内容だと思います。どちらかと云えば気の利いたBGMとして用いられるような作風でしょう。古いファンには「ロンサム・キャット」のセルフカバーも嬉しいところ。 ○「MOBO」あたりを境として徐々に彼から遠ざかってしまった、かつてのファン(私がそうですが...!)にはぜひおすすめしたい作品です。 (セリエJ)
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