前作「オルフェ」は、ベース、ドラム、ピアノ、ギター(なんと、ビル・フリゼール!)、サックス、パーカッションのセクステット構成で、いわば豪華版サウンドでありフュージョンファンにも十分楽しめる内容でした。が、今作もそのつもりで聴くと少々つらい面があります。今回は上記の通りギター、サックスの抜けたカルテット構成でピアノ、パーカッションは前作と同じメンバー。またドラムには新たに盟友ハーヴィー・メイソンを起用しての吹き込みで、メイソン、久々のジャズプレイとなったようです。そのあたりが聴きどころといえましょうか。 はじめに楽器構成を見て、今回は装飾を排した、よりピュアで玄人好みの方向に振られた作風か、との予測をしたのですが、実際聴いてみて予想以上にジャズに戻った点に、半分感心、半分ガッカリというところでしょうか。前作では主役のはずのカーターは非常に控えめなプレイで、むしろギターのフリゼールあたりがかなり前面に出てたようですが、今回は違いまっせ、カーターのベース、よく歌ってます。こういう作品はぜひアルティックの大型スピーカーで聴きたい(ウチじゃ無理か!)ところですね。また曲目は前作同様、オリジナルとスタンダードをとり混ぜての内容ですが、なにせどれ聴いても似たようなゆったり系のテンポで、曲目よりトータルカラーを重視したかのようです。メイソンのドラミングは、今回さすがに「ジャズの音」でのプレイですが、クッションのよく効いたプレイはいつもの上質さそのものです。 以上のように、本作は親しみやすいボサノヴァアルバムながら、ジャズ的インタープレイを重視したよりピュアな内容で、やや俗受け狙いの前作と比べるとずっと通好みだといえそうです。甘口歌謡曲風ボサノヴァアルバムを期待して聴くとイタイ目にあいそうですが、長い目(耳?)でみれば、こういう作品は飽きが来ずいつまでも愛聴できるものだといえるでしょう。 ☆はじめはまず、前作「オルフェ」から聴くことをおすすめします。(セリエJ)
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