今回CD化された森園氏の作品は、オリジナル発表順に「Bad Anima」「Cool Alley」そして本作の3枚で、いずれも初CD化となります。本作「Escape」は、よりバンドサウンドを強調するためなのか、正式な名義を「森園勝敏 with Bird's Eye View」としています。 さて森園勝敏というギタリスト、日本のロック黎明期の代表的バンド「四人囃子」で活躍後、日本フュージョンバンドの草分けともいえる「プリズム」初期に和田アキラとのツインギターで参加、その後ソロ活動とともに「ギターワークショップ」はじめ数々のセッションを経験、まさに日本フュージョン黄金期の生き証人ともいえるミュージシャンの一人です。ところが90年代に入って表舞台からパッタリと姿を消してしまったため、若いリスナーの間には彼の活躍ぶりを知らない人もいるのではないでしょうか。その意味でも今回のCD化は意義のあるものだと思います。 今回CD化された3枚は、いずれもプリズム脱退後ソロ活動に入った時期に制作されたもので、それぞれ持ち味が異なり、本当はすべて聴かないと彼のギタリスト像が見えてこないのですが、あえて1枚、ということで私は迷いつつ、作品として最も完成度の高い本作を選んでみました。ここでの森園氏は単なるギターアルバムというよりは、トータルなサウンド作りをめざしているかのようで、これはこのころ彼の片腕として活動していた中村哲によるところも大きいと思われます。またギタープレイも円熟の域に入っており、バリバリに弾きまくっているわけではないのですが(元々彼はそういうギタリストではない)、変幻自在なプレイの中に、ハッとするようなひらめきを感じる一瞬があります。また曲によりヴォーカルも披露してますが、まぁ何というか、これもサウンドの一部のような所があって、基本的にはインストアルバムと考えればいいと思います。 全体のサウンドは、かなりリズムを強調したロック寄りのものですが、かといってこれがロックかといえばチト抵抗も感じるもので、私はまさに「フュージョン」の言葉がぴたりと当てはまる内容ではないかと思いますが…改めて聴き直してみると、これはやはりいい作品です。まあ内容がやや通好みということもあって、大ヒットしたという話は聞きませんでしたが、間違いなくわが国フュージョン史に残る屈指の名盤ではないでしょうか。 ☆最近の情報では、ライブハウスを中心に、また他のアーティスト(角松敏生とか)のバックにもひょっこり登場したりして、マイペースな活動をしているようです。今はロックっぽいプレイが多いようだけど、一度うんと大人のフュージョン作品を作って欲しいなあ。(セリエJ)
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