とにかく酷いコンサートだった。それはTOTOが悪いん
じゃ無い、音が悪いんだ。
東京国際フォーラムでコンサートを見るのは初めてで、地下鉄からそのまま建
物に入り、まるで迷宮のような順路の先にはとても綺麗なホール、ロビーがあった。
建物は芸術ちっくなガラス張りで、ロビーにはビール、ワインを出すカウンターもあ
るし、なにしろ何から何まで新しく、豪華で、こんなきれいなホールでコンサートが
見れるなんて何て素晴らしいのだろう・・・と実際コンサートが始まるまでは思って
いた。
しかし、演奏が始まると音が来ない・・・2階席で見たのだが音は前方からし
か聴こえないというPAだった。そしてドラムのバスドラは響くものの細かいディテ
ールが全く欠落した音で、リズムの刻みは分かってもおかずや細かいテクなどは全然
わからない。ギターだってある程度の演奏はわかっても、早弾きになると何をやって
るかなんてこれも全然聞き取れない。臨場感なんて無いに等しく、ライブを見てる気
がしない。
こんな音響の悪さを他と比較しても、あの音が悪いことで有名な武道館どころ
か、音楽には向かないだろう東京ドームでさえもましに思ってしまうくらいうの酷さ
だ。多分、1階席はまだ音が良いのであろう。しかし、まるで音は1階までしか考え
てないかのように、2階席はまるでなさけない音しか供給してないかのようだ。
ここで肝心なのはこの2階席もあの1階席と同じS席なのだ。同じS席なのに1
、2階でステージから近い遠いというのは予約の順番から仕方ないけど、2階ならば
わざわざ立って(1階は総立ちになって否応なく立って見る事が多い)見ることもな
いし、それは考えようと思っていた。しかし、ここまで音がひどいと文句も出る。つ
まりこんな酷い音の席をS席とする主催者側のS席チケット水増しにも腹が立つのだ。
(いや、それよりも一番の元凶はPA不備が悪いのだが、それとも元々このホールが音
楽には適していないのか?・・・要するに僕は視覚的には多少我慢できても、音が悪
い事に関しては我慢ならないのだ。)
この会場では後日、小沢征爾指揮ボストン・フィル公演があるそうだが、本当
か?と疑ってしまう。実は後でこのホールでJEFF
BECKも見る予定になっているが、その後日にでも再度このホールの音については報告
したいです。
さて、ここからが肝心のTOTOのライブ・レポートです。
TOTOは初代ボーカリストのボビー・キンボールが復活
し、リユニオンと銘打ってツアーを行っている。1曲目は「TOTO
XX」の快調なナンバー「TALE OF A MAN」から始まる
、もちろんメイン・ボーカルはキンボールだ。なんともなつかしいTOTOが帰って来た
のを実感できる情景を目の当たりにし、ちょっと感慨がある。
更にその感慨が極まって目頭が熱くなったのは「TOTO4」の・・・なんて説明
不要な「ROSANNA」だ。最初のリズムですぐにそれと
わかる曲で、最初にルカサーが歌い、次に出てくるキンボール・・そこで自然にキン
ボールへの拍手がわいた。ただ、残念な事にキンボールは少し声に衰えがあるようで
、ハイ・ノートはかなり苦しげに歌っていた。やはりハイ・ノートな声というのは年
齢とともに厳しくなるのであろう。そういやロバート・プラント(ZEP)も数年前のラ
イブでは高い声は初めから出さず、随分無難に歌っていたっけ。
コンサート前半は最新作「MIND FIELDS」が中心になって、他にも「KING
OF DESIRE」などの近作からの曲が中心になるが、不思議な事にキンボールがいるこ
のライブでは新しい曲でも往年のTOTOのサウンドになっている気がした。そして途中
、途中に初期の曲もおりまぜながらライブは進行していく。やはりオーディエンスは
古い曲には反応が良いが、新しい曲はいまいち大人しくなってしまっているかのよう
だ。
そしてスティーブ・ルカサーがアコースティック・ギターを持ち出すと「99」、「MAMA」といった
懐かしいナンバーが演奏された。ただ、ちょっとショート・バージョンなのが残念と
友人が言っていたけど。
「HOLD YOU BACK」もあまりに懐かしい・・・
歌もそうだが後半のギターのあのフレーズに対する反応も多い。
TOTO中期の曲はあま
り演奏されなかったようだが、これははずせない「
I'LL
BE OVER YOU」はルカサーがボーカルを取った。(残念ながら「PAMELA」は演
奏されなかった。)
それと「AFRICA」・・・大ヒットしたこの曲
はデヴィッド・ペイチがメイン・ボーカルなのだが、キンボールのコーラスが凄く良
い・・・「TOTO
XX」で聴ける彼のいないライブ演奏はなにかサビ抜きの刺身のような物足りなさがあ
ったのだが、ここでは本当に満足な演奏だった。声の衰えなんて野暮な事を最初に書
いたが、キンボールありなしでは大きく違う。更に僕は個人的にそのキンボールが歌
う「A
MILLION MILES AWAY」が演奏された事には感動ものだったのだ。
コンサートはどうやら1階席はノッていたようだが、2階席は音も悪いせいでノ
リ切れず、ずっと席にドカっと腰を下ろして、立って演奏を見る人はほとんど居なか
った。最後の曲「WHITE
SISTER」になって何人かは立ちあがった程度だったのがこのコンサートを物
語っている。
しかし、アンコールになると2階席のほとんどが立ち
上がってしまった。アンコールしょっぱながなんともなつかしい「CHILD'S
ANTHEM」を演奏したからで、それに続くのが
「GIRL GOODBYE」だから座ったままではいられなくなったのだ。最後は�FONT
COLOR="#00FF00">「HOLD THE LINE」で文句のつけようのない締め方だった。
さて、ここで総評。音が悪くてノリきれないのが非常に残念なコンサートだった。
サイモン・フィリップスのドラム・ソロも、スティーブ・ルカサーの早弾きも、
音のせいで楽しむことが出来なかった。さすがに懐かしい曲になると多少の音のまず
さはカバーされてしまうのだが、新しい曲ではある程度音が勝負だからそこはキツイ
・・・知ってる曲はノレて、知らない曲はノレないというレベル以前に思う。
ところでTOTOはロック・バンドか、FUSIONバンドか?・・・なんて議論されることもまれにはあるようだが、インスト・ナンバーを
演奏する時は音が完全にFUSIONバンドになっていた
。これには正直言って驚いたのだが、TOTOくらいになるともうロックだろうがFUSIONだろうが完璧に演奏できる。ライブではその変わり身が極端で興味深かった。(まぁ
、あちらのミュージシャンはそういうテクニシャンが多いのだが・・・。)
それにしても最後まで「音さえ良ければ」が悔いになってしまった。(TKO)
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