T-スクェア FAREWELL&WELCOME LIVE REPORT



4月25日 六本木ピットイン 安藤まさひろ(Gt) 則竹裕之(Dr) 須藤満(B) 和泉宏隆(Piano&Key) 難波正司(Key) 本田雅人(Sax&Ewi) 宮崎隆睦(Sax&Ewi)

 T-スクェアは今年の2月に和泉宏隆と本田雅人の退団というメンバーチェンジを発表。あれから2ヶ月、新メンバーに難波正司、宮崎隆睦を迎え、ニューアルバム「GRAVITY」も完成した。メンバーチェンジ以後はじめてのライブ、そして旧メンバーでの最後のライブが4月24・25日に六本木ピットインで行われた。
 今回は2日とも聴いたが、1日目の旧メンバーの演奏がはじまるとなんだかぎこちなく、ほぐれるのに時間がかかっているように見えた。メンバーチェンジをしたんだ、前のT-スクェアとはもう違うことを改めて感じた。曲目は2日間ともほぼ同じだったが、1日目はいまひとつ乗り切れなかった。しかし2日目はガラリと雰囲気が明るくなって演奏も良くなっていたので、2日目の様子をお伝えしたい。

「チーチキ チーチキ チーチキ・・・」というトライアングル音が流れはじめる。しばらくしてからにメンバーが登場した。昨日にくらべて表情が断然明るいのに驚く。「MEGALITH」のイントロがはじまる。本田が入ってからはじめて出したアルバム「NEW−S」の1曲目を飾った、今やT-スクェアの定番曲ともなった感のある曲だ。T-スクェアを離れて2ヶ月たった和泉、本田のふたりについ目がいく。2ヶ月の空白など演奏からは感じられない。やはりふたりにとってもステージで数え切れないほど演奏してきた曲なのだ。
続いて本田がソプラノサックスに持ち替え「ROMANTHIC CITY」。この日はグランドピアノが用意されており、感情をきめ細やかに表現した和泉のピアノソロが印象深かった。
 メンバー中いちばん表情が豊かで、気持ちが見えやすい則竹。初日は笑顔でありながら、心の底からの笑顔には見えず、今までの思い出をかみしめながえら演奏しているような表情だった。この日は「いつものT-スクェア」という感じで、吹っ切れた笑顔になっている。同じくソプラノサックスで演奏された「PLAY FOR YOU」は、和泉が大好きだと語っていた安藤の作品。優しくおだやかに語りかけてくる本田のサックスの音色を聴いていると、この曲をこのメンバーで聴くのはこれが最後だという事実が頭をよぎる。
 続いて和泉の代表作のひとつ「宝島」。明るく元気づけてくれるこの曲の雰囲気が、このシチュエーションにはやや泣かせる。そして、本田のキメキメ系ナンバーの代表作「BAD MOON」は、ハイテンポのフリージャズ風の展開をはさみながら複雑な転調、ブレイクをくり返す凝ったアレンジで、息つくひまのない展開。たっぷりと楽しませてもらった。
 FAREWELLの部のラストには、これも和泉の代表作「OMENS OF LOVE」。シンプルで元気のいいメロディーだ。途中ギターソロでは本田が舞台中央から安藤のそばへ駆け寄り、3度のハモりをつける場面があった。ツアーでこうして向かいあって演奏するふたりの姿を何度見ただろうか。

   続いてWELCOMEの部でいよいよ新メンバーを迎えての新しいT-スクェアの演奏になる。1曲目は「THE SEVEN WONDERS」。難波のオルガンソロに、さっそく和泉とのカラーの違いが出ていた。2曲目は「SAILING THE OCEAN」。サックス・EWIの宮崎は、本田に比べると音色があっさりとした印象で、そのせいかバンド全体の一体感が感じられた。この2曲は安藤の作品。続いて則竹の「ONE STEP BEYOND」は、以前からライブハウスのセッションなどで演奏されていた曲を完成させたもの。どこかほのぼのとした則竹の世界である。そして須藤の「EXPROLER」はどこか「昔のスクェア」を思い起こさせるT-スクェアらしい曲だ。「新生T-スクェア」をこの日聴いた限りでは、全体的にトーンが明るく冴えており、さわやかな持ち味が出ていたように思う。

 ここで和泉が加わり、和泉自身から希望があったという「MISS YOU」。難波のオルガンソロに続き、和泉が入魂のピアノソロを聴かせる。都会的でどこかけだるい雰囲気に生ピアノの音色がはまっていた。さらに本田を迎えて「JUBILEE」。「BIG CITY」と並んでT-スクェアでサックスが2本になったときの定番曲である。ライブハウスで聴く本田の音には、音色といい、フレーズといい、その見事さに目を離せない引力がある。本田−宮崎のソロ回しという場面がかなり長い時間続き、両者をどうしても比べてしまう。本田が加入したときのインパクトが強烈だったためか、宮崎にも同じような期待を持つのだが、この2日間ではそういったインパクトが感じられなかったのが残念である。ステージ経験の問題かもしれない。さらに、アクのなさという意味で宮崎が起用された可能性もここからは感じられた。神戸では東京より良かったという話も聞くし、ツアーでの演奏で、安藤が着目した宮崎ならではの個性がライブで味わえることを願う。
 そして「TRUTH」は、本田・宮崎が交代でEWIを演奏。本編ラストとなった。 アンコールでは、須藤が「和泉さんのバラードがなかった」と前置きしてから和泉のバラードの代表曲「FORGOTTEN SAGA」。ピアノが静かにイントロを奏し、サックスが表情をたっぷりつけて歌う。この日、一番感動的な場面のひとつだった。メロディーのすばらしさと、本田の「歌」。1音1音に究極までつけられた表情。心に染みわたる名演だった。「Little MARMEID」「JAPANESE SOUL BROTHERS」「NIGHTS SONG」とノリのいい曲でアンコールが続く。すべてが終わったあと、10分間のアンコールが続き、予定にはなかった「IT’S MAGIC」で和泉・本田の「卒業式」、宮崎・難波の「入学式」は終わった。

 旧メンバーで演奏された和泉、本田の曲を聴いていると、このふたりが演奏家としてだけではなく、作曲家としていかに優れているかということを再認識した。今後、ふたりの書いた曲はT-スクェアで演奏されるだろうか。
 グランドピアノを終始演奏した和泉。音響的にはグランドピアノは厳しい面がかなりあるはずだが、心から嬉しそうな表情が目立った。この日は主役のひとりということでピアノソロがずいぶん多かったが、ここしばらくピアノに没頭していたという成果が充分にあらわれ、「和泉宏隆のピアノの魅力」がはっきり感じられた。
 本田も相変わらず、どこまでも磨き抜かれた「本田雅人の音」を繰り出してきた。どの曲を聴いても、アルト、ソプラノ、フルート、EWIのどれをとっても「ああ、本田の音だ」と感じてしまう。
 音楽の要素が増えれば増えるほど、ひとつにまとめるのは難しくなる。彼らふたりが入っていたT-スクェアというのはバンド内に才能と個性が多すぎて、その結果ふたりが出ることになったのかもしれないと思った。
 結果として新メンバーを迎えたT-スクェア、そして本田と和泉のこれからはもちろん見守っていきたい。だが、それ以上に今感じるのは、T-スクェアが和泉、本田を入れた5人でやっていた時代−−。それはひとつの「時代」だっと思う。
 リアルタイムでこの5人を聴けた幸せ。そして残されたアルバムの重み。いま、それらに改めて感謝したい気持ちだ。(美芽)


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