Report 1
by TKO
SideStepsというバンドは非常に興味深いバンドである。CDで聞けばわかるようにテクニック抜群で、その音楽も非常に楽しませてくれる。
なのに一言で言うとスレてないと言うか、音楽性を最も大切にしている………もっと言ってしまえば”売る”よりもFUSIONの理想の”求道”を感じさせる、日本においてはなかなか存在しにくいバンドだからである。
バンドも長く続けて行くとどうしても理想と雑多な現実の狭間に何かを失っていくバンドも少なくない。
そんななかでSideStepsはこれだけのキャリアがありながら、そんな失われがちな”何か”を無くす事無く理想を追い求める……そんなバンドに思えてならない。
今回このライブ及びリハーサルを取材としてお邪魔させてもらったので、そのレポートもさせていただきます。
【リハーサル】
13:30に僕等がシルバーエレファントに入ると、既にメンバーは楽器のセッティング最中でPA等の確認をしてました。この日のライブを成功させるためにもメンバーは真剣そのもの。
ドラム府川氏は1つ1つのセットを叩いてPAと音の調整を念入りに行い、キーボード伊東氏は特に電気系統が気になる楽器と言う事で色々と気を使っていました。
またベース岩井氏もモニターが気になるのか色々と注文を出していたようです。
ギター田村氏はセッテイングが早く、誰よりも先に一杯弾きこんでいたせいか、は割とアッサリと終わってました。
一通り音のチェックが終わると………今日のライブのためのチラシをメンバー一人一人が手作業で折り込んでいました。ライブに来られた方々の手元に渡ったパンフレットは全てメンバーによる手作りのものです。
こういう音楽とは別の作業という、華々しい表舞台には出て来ない努力もあるもんなんですね。
14:30 準備も完全に整ったところで、LIVEが始まる前に数曲の録音が実施されました。
その録音は真剣そのもの。でも、緊張からかNGも数度と出て………でもバチっと決まった時はなんとも達成感が伝わって来ます。
ギター田村氏の快調なソロの途中に、突然ギターの音が聴こえなくなりました。当然、演奏はそこでSTOP。そのソロがあまりに良かっただけにボツになるのは少し残念。
でも、その時はそれどころではありません。今日はこの後にライブが控えている事ですし、とにかく早くギターの音を出さなくては……。アンプからは少し音が出ているし、PAにも問題はないようだし………結局、エフェクタとアンプの間のシールド接触不良が原因で、シールドを交換して無事問題なし。しかし、これがライブ最中でなくて良かった!!
その録音も終わった頃には時計の針も15:00を示し、開演まであと1時間。あとは開場、本番を待つだけです。
メンバーもスタッフもあとは「時を待つ。」という体制に入り、リラックスしながらも緊張を感じます。
【開場、および観客】
この日の入りは凄かった。なんせ人数の関係で急遽2部入れ替え制になるほどです。
その人気ぶりはうかがい知れるでしょう。おかげで筆者は1、2部通してずっと立見のまま。
ライブが始まる前はメンバーに「2部になれば座れますよ。」とは言われていましたが、もうそれどころでは無く、場所の移動もままならない程です。
また、男女比ですが、やや女性の方が多いように思え、fusion系では珍しく女性だけのグループで来ている方々もいるようでした。年齢的には…暗くてよくわからないですが20代中前半が中心だろうと思います。
【ライブ】
------1部------
最初の1曲目にガツンと来る曲が来た。観客はそれに圧倒されてしまったかのようである。オープニングにしてはこの上ない立上りで、グイグイと引っ張って行くSideStepsを見た。
実はリハーサルでの演奏も聞いていたのだが、そちらはまぁまぁの印象だったのだが本番が始まると流石に違う。
そこにはピーンと張り詰めた物があるかのように感じる。
ただし、観客は圧倒されてしまったゆえに反応が鈍くなっている気がした。(もしくは1部、2部で客のタイプが違ったのかもしれないが。)
しかし、逆の見方とすれば、1部は緊迫した感じの良いステージだったと言う事ができる。
ノリだけに流される事なく、かなりインパクトのあるステージだったように思える。
1部で特に印象に残ったのは『PLAY IT COOL』。そのタイトルとは違って、かなりホットでアグレッシブな演奏。そんなの聴けばわかるじゃないかと言われそうだが、CDで聴いて知っている曲なのに当然それ以上の圧力を感じました。
アンコールには、今年お子さんが生まれてパパになったギタリスト田村氏に他メンバーからプレゼント「可愛いベイビー」のSideStepsバージョンが演奏された。しかし、あの”可愛いベイビー”メロディに続くアグレッシブなベースのスラップソロは意表をついててとても良いなぁ。
------2部------
オープニングはややメロディアスな曲で始まったので、インパクトをやや抑えた代わりに、楽しいステージを予感させるものがあった。観客も1部かた引続き見る人も居たので、リラックスした雰囲気があり、その余裕から1部よりも声援が出たのだと思う。
演奏も2ステージ目という事で、固さや緊張感も取れて、最初から良いペースで演奏できている。
「CyberFusionで聴ける…」のMCに観客から「ヒュー」と反応が…するとCyberFusionテーマ曲『FIRST MOVE』は1部の時よりも凄まじい演奏になった。
やはり、曲目アナウンスなどで客席から反応があるというのは演奏者の一人ひとりに火をつけるのだろうか。もし、またライブに行く機会があったら試してみるといいかもしれない。
『GO TOGETHER』は良い曲ですね。2部でしか演奏されなかったのが残念ですが、この曲はCDで聞いただけではわからなかった部分がライブではその演奏の謎が解けます。
KEYがEWIを使っていたのも意外でしたし、特にBASSが復音でバイオリン奏法での部分はいわゆるストリングス系のシンセだとばかり思ってました。この曲は聞きてのくつろぎ感とは裏腹に演奏者はなかなか大変のようです。
それとこのステージはノリがよほど良かったのか、アンコールが2回行われたというのも珍しい。観客にかなり印象を与えたのでしょう。
ちなみに筆者の体験したダブルアンコールは(LIVEはそれほど多くないが。)チック・コリアの時以来、このSideStepsで2度目でした。
結果的にこの1、2部は同じ曲も演奏されてはいたのだが、かなり雰囲気の異るライブになりました。しかもMICの内容もほとんど違うし、1部には1部だけのクライマックスがあり、2部にも2部だけの楽しさがあったので、どちらにも甲乙付けがたいライブです。
余裕がある方ならば両方聴いても良かったでしょう。
【MC】
大抵バンドに1人はしゃべりの上手な人がいるので、MCの面白いバンドと割とあってそんなに珍しくはない。しかし、メンバー全員がMCを受持って、それぞれが皆面白いなんてバンドは他に無いのではないかな?それも1人の話題に他の人が何の前触れ無しにボケ、ツッコミをやってて、MCにおいてもインタープレイしている。(しかも面白い。)あの緊張感あふれる演奏から一転して、MICで和めるのでこのライブに一度来た人は次も来るだろうなと想像できる。
【雑感】
想像した以上に凄いパフォーマンスを聞かせてくれたSideSteps。正直言ってこんな凄い演奏をするとは思いませんでした。
CDで彼らの演奏は知っていたつもりなのですが、ライブはCD以上のものを聴かせてくれました。「CDよりもライブの方が凄い」だなんて、当り前なのでしょうが、ここまでやってくれるライブというのも昨今そう、あまりは出会えないでしょう。
ただし、ライブの音のバランスが多少気になりました。
1、2部で場所を変えて聴いたのですが、正面の一番後ろで聴くよりもステージ左のギター寄りで聴いた方がバランス良く聴こえました。これはPAと生音の兼ね合いからなのでしょうけど。(それと筆者が楽器ではギター好きというのもありますが。)
来年の始め頃には、この日のLIVEアルバムが発売される予定だそうです。
今から楽しみな人も多いはずだ。発売が決まったら、お店に予約しに行かなくちゃね!
Report 2
by をづ
あまりの来客数の多さのために1ステージでは間に合わず、急遽ステージを2ステージに分けて行い、しかもその2回のステージも満員、立ち見の出る程に人気の出てきたSide Steps ですが、今回のライブは来年リリース予定のライブ盤のレコーディングも兼ねているとの事で通常のライブよりも緊張感の高いステージとなりました。
------1部------
立ち見の観客が通路という通路、そして階段部分にまであふれかえって待ち構える中、堂々と登場のSide Stepsの面々が舞台に現れます。そして開幕して始まったのは
1:『Play It Cool!』
まず最初は最新アルバム『Out and Out』から、ベースの岩井氏の冴えわたるベキベキスラップ、そして「っぱ!」というキメが鋭い、どフュージョンの結晶といったカンジの『Play
It Cool!』で幕を開けます。いきなりのテンションの高さ、キレ、ノリでペースをもってきます。
2:新曲(仮題『ラテン98』)
伊東氏のピアノによるモントゥーノの導入部から熱っぽくも美しいメロディのテーマが展開される佳曲でタイトル通りラテン風の曲調。このバンドでは珍しいカラーの曲だが残念ながら現在のところ収録は未定との事
(^^;
3:『Morbit Lot』
これまた岩井氏による超絶スラップが見られるパワフルな8ビート曲で、田村氏のギターと伊東氏のシンセがシンクロするテーマが強烈で、かなり盛り上がります。ハンディキーボードを使用しての伊東氏のフロント侵出もパフォーマンスとしてかなりマルで、ステージを『ノリノリなSide Steps』色に染めます (^^)
4:『Valkylie of Sorrows』
メロウなEPのソロから導入され、拍子が変わりーの、ごろごろと転調しーの、とかなり手の込んだ構成の曲で、ほとんど『組曲』と言ってもよい程です。しかもその各部分部分がいちいち美しいのであきれてしまうほどです。ライブではおなじみの曲ですが、こういう曲が作れて、しかもライブで演奏できてしまうというのはもうただひたすら驚きです.
5:『Jazz It』
ちっともジャズを感じさせないAメロから、キメが入ってからは怒涛の超速4ビートになだれ込むという構成で非常に生理的にキモチイイ、そしてカッコイイ曲です。そして「すぱっっぱっ」と曲が終了したところでハプニングが、、、『誰も拍手をしない
(^^;(^^;』。あっけにとられたのか、それとも曲が終わったのがわからなかったのか、聴衆がシーンと静まってしまい、直後のMCで『すんません。ライブ録音なんで拍手とか入れて下さい〜
(^^;』とメンバーからのお願いが出てしまいました (笑)
6:『First Move』
当HPのテーマ曲として使用されているのはこの曲。ホンモノの府川氏が加わりまさにパワフル。Side Stepsの真骨頂なプレイがそこかしこに散りばめられた好演奏です。残念ながらアルバム収録は未定だそうです。
7:『メトロポリス』
EPのキザミから入って妖しいメロディから徐々に盛り上がってゆくSide Steps一流の巧みな構成によって形作られた曲。伊東氏のショルダーキーボードから発せられるメロディはとても妖しく、クセになる中毒性のある魔曲です。
8:『インナースペース』
どことなくキャッチーなカンジのメロディで、しかもSide Stepsでは珍しくアタマ拍にビートがある曲ですが、サビの2回目ではドラムがサンバビートになるという展開でさすがにヒネリが入ってます。クリアコーラスでのギターソロもディストーションが多かった中では新鮮。
【第一部 Encore】
アンコールの後はSide Steps名物の岩井氏と府川氏による漫才 (^^;が楽しめます。
このコンビのかけあいはまさに絶妙。会場中がおおウケです。そして今回は第一部のステージに限り、ヒミツの企画がありました。
9:『かわいいベイビー』
リーダーの田村氏にお子さんが誕生、というコトで伊東氏、岩井氏、府川氏の3人でこの曲が演奏されました。『Jazz It』でも見られた超速4ビートの上を伊東氏の軽快なピアノによるジャジーなテーマが心地よく響きます。
そしてベキバキなベースソロにドカシャバなドラムソロが入るという、実にSide
Stepsらしいカッコいい『かわいいベイビー』でした (^-^)
10:『Broken Wave』
そして最後にハデなナンバーで締めくくり、Side Stepsのステージの第一部が終了です。
以上が第一部でした。第二部では曲が多少入れ替わり、『ラテン98』および『Mobit Lot』の代わりにアルバム『Out and Out』からの曲で『Go Together』
と『Another Encounter』が演奏されました。
第一部では演奏に固さが感じられたステージでしたが第二部はこなれた雰囲気になっていて演奏の迫力・ノリは第二部の方がまさっていたカンジがしました。 が、MCや漫才(^^;は第一部の方に時間に余裕があったせいか楽しめる内容が多かったように思います。
公式発売第2弾となるこのライブ盤は『Out and Out』と同じフランスのMUSEAレーベルからの発売となるそうです。クロサワやテヅカが世を去った現在、21世紀ももう間近となり、2000年問題もクローズアップされる今日この頃ですが、真に世界に誇れる日本のアーティストの数は多くありません。
が、Side Stepsここにあり!いつの間にかとてもヌルい場所になってしまったフュージョンシーンにカツを入れるコトができるパワーを持つ数少ないバンドとして今後とも目をはなせません!
(^-^)
Side Stepsのメンバーの皆さんからコメントを頂きました.
ライブにおこし頂きました皆様、どうもありがとうございました。
今回はライブレコーディングという事で選曲、ステージング等いつもと違ったものであったかと思います。次回のライブでは又違ったものができると思いますので、是非又いらして頂けたらと思います。
次作のライブ盤は来年1月頃、ライブは4月頃を予定しています。これからもSide
Stepsを宜しくお願いします。(田村)
当日来てくださった皆さん、そして取材して下さったCYBER
FUSIONのスタッフの方々、本当にありがとうございました。
スタジオ録音とライブではアプローチ自体が違うのもSIDE
STEPSの特徴です。それは、スタジオ録音の時からどれだけ僕たち自身が変化(進化かどうかは別として)したかの現れなのだと思っています。
次のアルバム(ライブ盤)にはこの日の演奏も含め、今までSIDE STEPSが辿ってきた道程とその曲の数々がちりばめられたものになっていますので、これを聴いてSIDE STEPSを体感していただければ、嬉しいです。
次のライブてお逢いできることを楽しみにお待ちしてます!(伊東)
SideStepsは「レコーディングよりライブの方が良い」というか、「真実」が出ていると僕は思います。
CDを聴くと想像しにくいかも知れませんが、improviseな部分が結構が多いのです。結果、かなり派手に失敗している部分もあります←これも真実(^^;)。
今回のLIVEからも、「かなり派手に失敗しているながらも勢いのある良い演奏」が1月発売のLive盤にセレクトされています。2trで録ったので修正は利きませんし、バランスの悪い曲もありますが、Liveの雰囲気は充分に伝わると思います。
耳を破壊しない程度の大音量で聴いていただければ、と思います。(岩井)
今年4月に念願のCDメジャーリリースを達成し、SideStepsは次のステップに踏み出しつつあると感じています。これまではどちらかと言うとSideStepsらしさを模索していた時期であり、最近は我々の個性をいかに洗練していくかというフェーズではないかと思います。次回リリースするCDは、直近から数年前のライブ演奏で構成されており、Out-And-Outとは違った印象をもたれることでしょう。そして現在に至るまでSideStepsが目指してきた方向性を感じていただくことで、我々のイメージがより立体的に浮かんでくるのでは、と期待しています。
ファンのみなさん、関係者の方々、今後も応援よろしくお願いいたします。(府川) |