トニーニョ・オルタ ライブレポート
(完全版)

トニーニョ・オルタ ライブレポート
1/23/1998(土) at Sabbath Tokyo

トニーニョ・オルタ (g, vo)
レナ・オルタ(flt)
松本敏明(harm)


昨年のオルタのライブは『Durango Kid』の再現で、生ギターとボーカルをメインにしたオルタの原点というべきサウンドでした.『Serenade』もその日本のライブをそのまま録音した様な内容でした.今年は、フルートのレナが一緒に来るというので、フルートが一体どういう風に絡んでくるのか、ある程度は想像が付く反面、どうなるんだろう??という期待でライブに望みました.

出だしの2曲は『Beijo Partido』『Aqui-OH!』と生ギターとボーカルの曲で『Durango Kid』の世界です.3曲目から妹のレナが登場.えっこの人がオルタの妹!!美人じゃん(失礼!)と思わずオルタと顔を見比べました.鼻筋が兄弟だなぁ...と思いつつフルートが参加しました.サウンドはフルートがメインでオルタはバックに回って彼女を引き立てます.その後ハーモニカの松本氏が参加してW.ガリスン(オルタのモスクワライブに参加.他に『Overjoyed』『Calling You』等のFusion系の作品もリリース) が参加した様な感じでボーカル中心というよりはFusionにより近い感じのサウンドが繰り広げられました.イメージ的には『Durango Kid』というよりは『モスクワライブ』や『Moonstone』の様なサウンドです.演奏した曲目は後に詳しく紹介するとしまして、インスト中心の曲やボーカルにフルートとハーモニカがうまくミックスした幻想的で浪漫溢れるオルタの世界が広がりました.

アンコールは6/8拍子の『Pras Criancas』が始まりました.本日の観客は事前に練習しているのかリズムが崩れません.そしてメドレーで『Maniel,O Audaz』..事前に歌詞を完全に覚えていたので一緒に歌えることができました.目の前でオルタが歌って、それに合わせて原語で歌えるなんて....至福の瞬間です.

『Durango Kid』路線を期待していた観客は、今回のサウンドが異なっていて戸惑っていた人もいたと思いますが、僕自信は彼の別の一面が聴くことができて、ラッキー!!と思いました.スタイルは違ってもオルタの世界なんで、なんか得をした様な満足感を持ちました.ギターは生ギターの音やそれにイフェクター(コーラス系とディレイ系)をかけたり、エレクトリックギターも演奏したりで、イロイロ彼のギターも堪能できました.こういう面でミナスサウンドファンやFusionファンまで幅広く楽しめるサウンドだったと思います.彼の作品もオルタの世界ながらボサノヴァ系のアルバムやFusion系のアルバム、スタンダードjazzの世界とスタイルはイロイロあり、そんな彼のスタイルの幅広さを象徴する様なライブでした.来年はどんなサウンドを披露してくれるか期待が広がります.(アスワン)


1/24/1998 at Sabbath Tokyo
トニーニョ・オルタ (g, vo)
レナ・オルタ(flt)
ヤヒロ・トモヒロ(perc)

ツアー2日目は、Toninho、Lena、ヤヒロ氏、そして彼の友人たちが各々の手にパーカッションを持って歌いながらステージまで行進して登場するという、意表をついたオープニングです(曲はミナスに伝わるフォークソング)。
超満員(お店の方の話ではこの日は何とSold Out!)の観客の手拍子とあいまってそれはもうにぎやかな雰囲気です。初日とは打って変わった幕開けに「今日は何かが違うかも!」という期待で気分がいやがおうにも盛り上がってきました。 今日からは編成にパーカッションが加わったことから、サウンドにメリハリがつき、Toninhoのギターにも、いっそうの力強さが加わっています。Lenaも初日に比べると、アップテンポの曲では、よりリズミカルで小気味よい演奏をしているように感じられます。 

圧巻は中盤に演奏された「Serenade」、これはライヴ盤『Live in Moscow』、『Serenade』にも収められていますが、そのどちらとも印象がまったく違う演奏に驚きました。曲半ばでのヤヒロ氏の素晴らしいパーカッション・ソロの後、それに呼応するように、Toninhoのプレイにはものスゴイ熱気がほとばしっていたのです。大きな体を揺らした彼の汗が飛んできそうな程のカッティングに目を奪われ、また、間奏やエンディングで波のように繰返される哀愁を帯びたアルペジオのフレーズにはその音色、Toninhoの指さばきに会場全体がしーんと静まり返り、終わった時には割れるような拍手でした。曲のタイトル(=小夜曲)とは正反対のアツーい演奏で、本当に鳥肌がたち、この日で最高の出来だったと思います。 

また、エレクトリック・ギターに持ち替えた、C.Porterの「I Love You」ではワン・コーラスめの"I love you〜"という部分をおどけたり、低い声で歌ったり、「日本の皆さん、I love you」という内容に歌詞を変えたりして歌うという場面もあり、その時の彼のクルクルと変わってゆくチャーミングな表情には、思わず微笑まずにはいられませんでした(^^)。 

今回のショウは、Lenaのフルートが大活躍でしたが、私が特に印象的だったのはアンコールの「Manuel O Audaz」。いつものように聞き慣れたイントロのコードが進行し、さあ歌が始まる!と思ったら流れ出したのは美しいフルートの音色。メロディーはちゃあんと「Manuel O Audaz」なんですが、まるでバロック音楽のワン・フレーズを聴いていると錯覚しそうなアレンジです。それは、とても小粋で凝っていて、ファンにはおなじみのこの曲で、こんなふうにさりげなく素敵なことをやってのけてくれるToninhoとLenaの懐の深さに感激して、私は泣きそうになってしまいました。

 昨年のショウではキーボード(Andre Dequech)を従えてはいたものの基本的にはToninhoのソロ=『Durango Kid』の世界でしたが、今回はフルート、パーカッションと絡みあった、まさに"セッション"と呼ぶにふさわしいショウだったと思います。演奏された曲目も彼のオリジナルは全体の約半分で、他はフォークソング、A.C.Jobim、おなじみのカバー曲など、バラエティーに富んでいて、彼の豊かで奥深い音楽の素養、また、1つのスタイルにこだわらないおおらかさが、自然に湧き出るようなステージでした。また一歩、彼の世界に足を踏み入れられたような気がして、本当に満足のいく内容でした。Toninhoは次に会える時もきっと、このような幸福を味わせてくれるにちがいありません。(MARIKO)



(この時行った最新版インタビューも近日掲載予定ですので乞ご期待)

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