Return To Forever:
Chick Corea(Key,p)
Stanley Clarke(b)
Lenny White(ds)
Jean-Luc Ponty(vn)
Frank Gambale(g)
2011.09.28 東京国際フォーラム ホールA
(Set List)
01. Medieval Overture
02. Senor Mouse
03. Sorceress / Shadow of Lo
04. Renaissance
05. After the Cosmic Rain
06. Romantic Warrior
07. Spain
<アンコール>
08. School Days
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70年代にFusion最重要グループの1つであったReturn To Forever(RTF)の来日公演。
海外でのLIVEは「Returns」としてアルバム化されたが、今回はそのときとメンバーが異なる。
そういう意味では、RTFとは言っても、あのRTFとは別のグループと考えて良いであろう。
アル・ディメオラの代わりに、フランク・ギャンバレ、ジャン・リュック・ポンティ・・・と、かなり様相が異なっている。
しかし、結果的にはこのメンバーの違いにより、音楽がまとまり、非常に充実した演奏が聴けた。
開演時間19:00より10分ほど回ったところで、客電が消え、さていよいよ・・・と思った瞬間、客電が再点灯。
あれれ?と思うと、ステージではなく、メンバーが客席入り口から登場。
観客は大喜びで総立ちのタッチや握手をしながら、メンバーはステージに向かう。
予想外の出現に、早くも客席のテンションはあがり、つかみはバッチリ。
1曲目の“Medieval Overture”。この曲は過去にエレクトリックバンドでも演奏されている。
そしてLP/CDでよく聞き込んでいるので、この1曲でこのライブがどうなるかが予想できる重要なオープニングだ。
ポイントはシンセサーザーの音色と広がり・・・これは申し分ない。バンドのバランスも良い。
これは凄いライブになることが予想できる。
チック・コリアは、フェンダー・ローズ、シンセサイザーと、曲によってはアコースティック・ピアノを使う。
そういえばエレクトリックバンドの時のシンセの音色がしなかった気がしたが、機材を変えているのだろうか?
こういう様々な楽器を駆使する時のチックは何か楽しい。
“Senor Mouse”も素晴らしい演奏だ。ただ、うるさいことを書かせてもらえば、これは“Captain Senor Mouse”だろう。
Captainが付けばRTFで、付かないとディメオラのカヴァーか、チックとゲイリー・バートンのデュオのいずれかだ。
きっとチック的には省略したほうがすっきりするのだろうが、RTFファンとしては少々こだわりたい。
それにしてもジャン・リュック・ポンティのヴァイオリン・・・聞く前は余分かと予想したが、これがサウンドに溶け込んでいる。
それだけでなく、ジャン・リュックが居なくては成立しないと思うほどの存在感。
フランク・ギャンバレも、チックとはエレクトリックバンドでずっと一緒だっただけに、予想通りRTFに馴染んでいる。
ただ、フランク・ギャンバレはソロも素晴らしいが、むしろバッキングやサポートに重きを置いている気がする。
それはアル・ディメオラが完全にソリスト志向なのと対照的で、ギャンバレはサウンドを上手くクリエイトしている感がある。
“Sorceress” と”Shadow of Lo”はメドレーとして続けて演奏された。
“Sorceress”は「Returns」にも収録済みで、演奏されることはある程度予測はした。
スタンリー・クラークはトレードマークのアレンビックBassをばちばち弾きまくる。
会場のPAのせいか、スラップのアタック音が少々とがって聞こえたが、ある意味それがスタンの持ち味。
こういうユッタリした曲調なのに、スラップでのノリを聞かせるのはその力量を伺わせる。
”Shadow of Lo”の方が聴けたのは非常に嬉しかった。この曲は短く、アルバムの中でもちょっとした小品である。
アルバムでは聴けてもライブ向きには考えてなかっただけに、この演奏を聴けただけでもLIVEに来た甲斐がある。
よく考えると、メドレーで演奏されたこの2曲はどちらもレニー・ホワイトの曲だ。
レニー・ホワイトは昨年の東京Jazzで見たとき、そのヘヴィーなドラミングに魅惑され続けている。
今回も素晴らしいドラミングを披露してくれた。このダイナミクスは自宅オーディオではまず再現してくれない。
レニーのドラミングは生ライブで聴くのが一番なのだと、改めて実感した。
RTFのレパートリー以外で、ジャン・リュック・ポンティの” Renaissance”が演奏された。
これはRTFバージョンとして上手くこなれた感がある。まぁ、これだけのメンツだから悪くなりようがない。
それにしてもジャン・リュック・ポンティ・・・・元マハビシュヌ・オーケストラといえば、かつてはライバル・バンドの一員だった。
なのに、今回のライブでは本当にRTFに馴染み、むしろこちらが真の姿かのようにも見えてしまう。
この日は実はジャン・リュック・ポンティの誕生日・・・会場全体でハッピーバースデーが歌われた。
“After the Cosmic Rain”は、曲調として特にRTFらしさを満開にする。
チックはライブ冒頭のMCで、このバンドはJazz?ロックンロール?と問いかけて、「Space Music」と答えていた。
であれば、この曲ほどRTFらしい曲はないというとこになるかもしれない。
作曲者はスタンリー・クラークで、その後のポップな曲と違い、当時はずいぶんとミステリアスな曲を作っていたのだ。
ライブも佳境に入り、エレクトリックからアコースティック中心に進んでくる。
そのなかで“Romantic Warrior”が演奏されさる。この曲は好きな曲ではあるが、少々演奏時間が長い。
しかし、さすがにライブでは演奏時間が長くても、ダレることなく、見せ場も沢山ある。
このエレクトリックRTFの中でもアコースティック・セットとして、チックのアコースティック・ピアノとスタンのウッドベースが映える。
またギャンバレのアコースティック・ギターが良いし、ここでもジャン・リュック・ポンティのヴァイオリンが効果的だ。
そして遂にチックがアコースティックピアノで、聞きなれたアランフェスの和音を弾きだす。
メロディはジャン・リュック・ポンティがヴァイオリンで受け持ち、それは格調高いものになった。
そう、そしてあの名曲“ Spain “が始まる。
実は正直なところ“ Spain “は食傷し、少しうんざりしていた。
というのも名曲過ぎたために、世の中には数多くの“ Spain “のカヴァーが存在し、それは玉石混交だからだ。
それはチック自身にも当てはまり、それはちょっと・・・という“ Spain “も少なからずある。
でも、その心配は杞憂だった。今回の“ Spain “はテンションも高く、また楽しく、非常に盛り上がるものだ。
単なるセルフカヴァーでもなく、また4人RTFでのバージョンとも違う、まさにこの5人ならではの演奏だ。
ここ数年で聴いた“ Spain “では一番の出来、最高のものだと思う。
会場は大いに盛り上がり、スタンディングオベーション。
ここでライブは終了となったが、盛り上がった観客はここで終わりは許さない。
スタンディングオベーションの立ち上がったままで、そのままアンコール”School Days”がスタート。
ほとんどRock会場と化した大ノリのラストになった。
ここ数年、チック・コリアの活動は、リユニオンが主体ではあるが、非常に活発だ。
ただ、リリースされるCDも数多いのだが、多すぎて追従しきれていなかった。
でも、この充実したライブを見て、一気に現在のチックへの関心が非常に高まった。
もしかして現在は、チック・コリアの何度もある絶頂期のうちの1つなのかもしれない。
今回のRTFも含め、今後のチック・コリアにますます期待が膨らむ・・・それに気づかせてくれるLIVEだった。
(Reported by TKO)
2011.10.02 兵庫県立芸術文化センターKOBELCO大ホール
コンサートの流れは東京と同様でTKO氏が上でレポートしてくれているので違う角度からレポートしてみよう。
まずはRTFとは直接関係ないが、会場となったKOBELCO大ホール。
筆者は初めていったのだが、最初はKOBELCOというので神戸にあるのかと思ったら場所は阪急西宮北口のすぐ南側にある。
2005年にできた比較的新しいホールで、普段はクラシックを中心に使われているようなのだが、内装が床、天井、壁と無垢材で統一されていて、4階まであるバルコニー席の作りはまるでスカラ座やオペラ座などヨーロッパの伝統あるホールを連想させる。
当然、残響にも気を使った作りになっており、素晴らしいホールだ。
この日もメンバーは東京同様に1回客席後方から登場する。
まず思ったのはチック痩せたなあということ。久々の生チックだったが、以前見た時はかなり横に膨れてしまって太りすぎの感があったが、今回はダイエットしたのか昔の雰囲気に戻っていた。
ステージ後方にはRTF IVのロゴが投影されている。RTF IVは通称だと思っていたが正式に第4期RTFを名乗っているようである。
今回のRTFの来日は1983年のディメオラ入りの2期のリユニオン以来で、約30年振り2度目ということになる。
また2008年に同様のディメオラ入りの2期の再結成ツアーを欧米では行っており、その映像作品もリリースされているが、一見するとその2期のバンドをベースにギターがディメオラからギャンバレに代わってポンティが加わっただけにも見えるが、全く別物という認識なのだろう。
MCはメンバー持ち回りで全員でやっていた。
レニー・ホワイトが「メンバー全員、アメリカからきたんだ。J.L.ポンティーはテキサス州のパリからだ。」というくだらないジョークを言っていたが受けていなかった。
ジャン・リュック・ポンティの初来日は1970年の大阪万博の時だったのだそうだ。
演奏で存在感があったのは何と言ってもスタンリー・クラークだ。
アレンビックのペキペキベースに、ウッドベースとエレキでもアコースティックでも充実した演奏を聴かせてくれバンド全体を引っ張っていたような印象だ。
アコースティックの音色はまるでコンプレッサーでもかけたような唸るような低音でエレクトリックのフレットレスベースのようでもあった。
最後の「Spain」は東京とは違いアランフェスの導入部がなく、いきなり始まった。
やはりRTFとしての「Spain」は儀式としてのアランフェスを是非聴きたかったところだ。
近年、リユニオンしてはそのツアーのライブ盤というパターンが多いチックだが、正式に第4期RTFを名乗るからには是非新曲で固めたスタジオ盤を聴いてみたいものである。(橋 雅人)
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