Chris Potter Live Report in New York




Chris Potter (tenor & soprano sax, piano)
James Genus(a.bass)
Adam Cruz(drums)


2011.12.02 Smoke, New York City 2nd & 3rd set

クリス・ポッター率いるトリオをニューヨークのアッパーウェストサイド、アイビーリーグのひとつであるコロンビア大学にほど近いジャズ・クラブ、スモークで見てきた。
ポッターは自己のエレクトリック・バンドであるアンダーグラウンド名義の活動もしているが、今回はアコースティック・ベースとドラムスのみをバックに従えたシンプルな編成での2日間の出演で、この日のベースはジナス、翌日はジョン・パティトゥッチに入れ替えるという形にしていた。
スモークはフル・メニューの食事もできるジャズ・クラブで50席ほどのテーブルと10人程度が座れるバーがある比較的ゆったりとしたスペースの店である。

ステージは2nd セット, 3rd セットともに中盤まではポッターのオリジナル、終盤に「Round Midnight」などのスタンダード・ナンバーを演奏するという構成だった。

ピアノやギターなどのコード楽器がいない編成で、単音楽器のサックスだけがメロディー・ラインを吹くという構成だと、かなり隙間の多いすかすかの音を想像するかもしれないが、ポッターが一旦テナーサックスを吹き出すと太い音色が朗々と響き渡って比較的広いジャズクラブの一番後ろの席で聴いていたのに、空間がサックスの音で満たされるような感覚になった。音色的にはソニー・ロリンズを連想させるような雰囲気であった。
また切れ味の極めて鋭いタンギングで高速フレーズを次々と繰り出してきて時間方向にも音の隙間がなくなってくるのでコード楽器がいなかったことなどすぐに忘れてしまう。

こう書くとひたすら吹きまくる熱い演奏を想像されるかもしれないが、ポッターの場合は高速フレーズを丁寧にクールに丹精に吹いているという印象を受ける。
それだけに技術的には一部の隙もないのだが、聴き手からすると反対に曲によってはもっと乱れてもいいので、熱く盛り上げてほしいという欲求も持ってしまうような演奏だ。

また各ステージとも1曲だけソプラノ・サックスでの演奏も披露していた。
2ndセットではソプラノを吹いている途中でいきなりピアノも同時に弾き始めて、ひとりでソプラノとピアノの掛け合いをしていた。
ピアノは3rdセットでも1曲だけ曲の途中で弾きだして、あまりうまいとは言えないのだが、個性的なピアノ・ソロも聴かせていた。

ステージを通してポッターのサックスの存在感は圧倒的で、ポッターは現在の世界のサックス・シーンのトップ・ランナーであることを確信させるような演奏であった。 (橋 雅人)




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