安達久美 club PANGEA SPRING TOUR
Live Report




安達久美(g)
河野啓三(key)
清水興(b)
則竹裕之(ds)

目黒 BLUES ARREY JAPAN 2011.04.05

セットリスト

〈1st〉
1, Rise (CD未収録曲)
2, Danjiri Funk
3, Jumpin' jack flash (カバー曲)
4, Air Pocket
5, PANGAEA
6, X-wing fighter

〈2nd〉
1, KITSUNE no YOMEIRI
2, Gorilla Gorilla Gorilla
3, Phoenix (CD未収録曲)
4, Cookie Monkey
5, lose control
6, Flat out (CD未収録曲)

〈Enc〉
Winners!

写真提供 : (株)ラグ・インターナショナルミュージック (使用写真は名古屋 THE BOTTOM LINEでのステージより)




ライブに行くということは、時に期待した通りの音楽に出会えることがあり、また時に期待以上の音楽に出会えることがあり、また時に出会えないことがある。
しかし、まれに予想もし得なかったくらいに期待を上回った音楽に遭遇する場合もある。

ここ数年、話題の新進ギタリストである安達久美。
今回、ライブで見るのは初めてだったので、予習をして少しは理解していったつもりだった。

またバックを勤める面々も申し分ない。
元T-SQUAREの則竹、現T-SQUAREの河野という、新旧T-SQUAREの2人が揃う顔ぶれへの期待。
そしてNANIWA EXPRESSの清水・・・・こんなベテラン・ベーシストがいるならば心強いであろう。
このメンツならば楽しめるし、好サポートが期待できる・・・あとは安達がどんなプレイを見せてくれるのだろう?

しかし、その考えはライブが始まった時点で、多少・・・いや、かなりの軌道修正が必要になった。
そこでは予想や期待以上、そしてメディアでは表現しきれない音楽が、ライブではくりひろげられたのだ。


目黒ブルースアレイ・・・目黒駅に近くの坂にあるホテル地下に所在する。
狭めのハコなのでステージがすぐ目の前にあり、かつてMiles Davisが出演したことで記憶に残る高級Jazzクラブだ。

19:40をまわったところで、メンバーが登場した。
本来は直ちに演奏に入るところだが、この日は震災について安達のスピーチがあった。
今回は震災から約3週間後、まだ余震も収まらず、関東も計画停電中(この日は未実施)のなかでのライブだった。
中止も考えられたそうだが、勇気をもってツアーを敢行したミュージシャン、関係者には頭が下がります。

最初の曲はロックなナンバー“Rise“でライブが始まった。(ちなみにこの曲はまだCDには未収録。)
しょっぱなからテンション全開で、激しいソロの応酬。
安達のブルースロックなギターソロが良い音をしていて、聴いていて心地よく響く。
特に則竹の怒涛のドラムを最初から浴びるほど聴いてしまう。

“Danjiri Funk”はお祭りのコラージュから曲が始まる。
客との声の掛け合いで盛り上がるし、お祭りとFunkを結びつけるなんてなかなか楽しい演奏だ。
フルースアレイのお客さん・・・ホールのような大人数ではないけど、みんな声を出して楽しんでいるようだ。

ローリング・ストーンズ”Jampin’ Jack Flash”をカバーし、安達がボーカルを披露した。
ストーンズというよりも、今度初来日するジョニー・ウィンターのカバーに対するオマージュのようだ。

ギターをストラトキャスターにチェンジしての曲は、Fusion色の濃い演奏になった。
“Air Pocket “は、変拍子もあり、どことなくReturn To Foreverを彷彿する。
ギター・スタイルもこの曲で変化があり、それまでのRockスタイルに、少しJazz/Fusion味が増したかのようである。

“PANGAEA”はなんとも幻想的な雰囲気・・・ちょっとPink Floydを連想してしまった。
安達のギターでも、ヴァイオリン奏法やストラトのアームを使ったソロは、Rockであり、プログレであり、そしてJazz/Fusionに帰結するような面白い演奏だ。
ところが河野のキーボード・ソロになると、まるでそこにピアノ・トリオが出現したかのような、ほとんどJAZZなソロを披露する。

“X-wing fighter”は仕掛けも多く、複雑なリズムを持った、これも激しいプログレ・テイストな曲だ。
こんなに仕掛けが多くても、安達のギターは歌いまくっているのが素晴らしい。

(注:レポートは1stセットのみ)


安達のギターも凄く良いし、なんとも弾くのが楽しそうに見える。
プレイはブルース・ロックをメインに、ほぼフルピッキングでばりばりとフレーズを弾き出す。
最近は上手いギタリストというと、やれタッピングだのやれスィープだのと、ギター・テクニックに走る人は数多くいる。
でもギターのギミックは凄くても、それが音楽的にはどうなのよ?と疑問譜がつくこともそれだけ数多い。

安達のプレイはそういう最近のテクニックには関心が無いかのように、むしろ古典的といっても良いほどのギター・スタイルだ。
でも、そこにはギターの泣きがあって、この人の音楽が何なのかがストレートに伝わってくる・・・こういうギターは好きな人にはもうたまらないのだ。

また安達はそんなギターだけでなく、音楽的にも優れていると思ったのは、非常に複雑なシンコペーションを持った曲にも関わらず、そこに振り回されず、地に着いたような、そしてそんな曲でもギターを歌わせることのできる稀有なギタリストである点だ。
ブルースロック・ギターというスタイルを持ってはいるが、そのポテンシャルの奥底は深いものを予感する。


安達のギターも凄く良かったのだが、このライブを白熱化させたのはサポートメンバーの熱演だ。
これはサポートなんてものではない。これは競いあう意味での競演であり、スキあらば相手をくってやろうくらいの気迫の演奏なのだ。

キーボード・ソロに移ると河野は、数コーラスそこそこのソロではなく、十分時間を取って起承転結のドラマ性のあるソロをとる。
T-SQUAREでも素晴らしいプレイを聞かせていたが、ここまで自由に自己主張するプレイヤーとは考えてなかった。

そしてドラム・ソロも激しく、そしてタップリと聞かせてくれる。
則竹のドラムは以前から上手いことは知っていたが、目黒ブルースアレイの至近距離で聞くと本当にその凄さが伝わってくる。
こんな演奏はCDやネットではまず伝わらない・・・リミッター抜き、手加減なし、そして破天荒な怒涛のドラムだった。

清水はソロこそは取らないのだが、このバンドの目ぐるましく変わる曲調のなかで、ベーススタイル変幻自在に変化させる。
ロック調の曲であればロック・ベースを聞かせ、そしてFunkになればFunkベースにかわり、唐突に4ビートになろうとも4ビートのJazzベースに直ちに適応する。

これだけのキャリア、才能を持ったTOPミュージシャン達が、ガチンコになって熱演を繰り広げる。
聴く方も興奮させられ、自然に笑顔に・・・予想を大いに上回る大満足なステージだった。

(TKO)


安達久美がKBS ラジオに生出演!
KBS京都 1143kHz
日程:4月19日(火)
時間:16時頃〜
番組:「音楽わいど ラジオ・ビュー」
番組URL : http://www.kbs-kyoto.co.jp/radio/view/
※インターネットからでもお聴きいただけます!
以下のKBS京都トップページ右側の「radiko.jp」をクリックするだけ!
http://www.kbs-kyoto.co.jp/

【CDリリース情報】
松原正樹が発起人となったギターオムニバスアルバム
「TIME MACHINE」に
安達久美が参加!素晴らしいギタリストばかりで発売が待ち遠しい!
『TIME MACHINE』
2011年9月7日 発売予定
品番:VICJ-61652
価格:¥2,900(税抜)
http://time-machine-project.com/TimeMachine/TimeMachine.html



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