David Sanborn
Live Report




デヴィッド・サンボーン/David Sanborn(Saxophone)
リッキー・ピーターソン/Ricky Peterson(Keyboards)
ジェームズ・ジナス/James Genus(Bass)
ニック・モロキ/Nicky Moroch(Guitar)
ジーン・レイク/Gene Lake(Drums)

2008.8.26 ビルボード・ライブ大阪 2nd set

最近は毎年のように来日するサンボーンだが、今回は東京JAZZ出演直前のクラブ公演をビルボード・ライブ大阪で見ることができた。
バンドのメンバーはお馴染みの面々が並んでいるが、ベースのジェームス・ジナスの参加は目新しい。

ステージは重ためのシャッフルにアレンジされた「Full House」から幕を開ける。
サンボーンのサックスはここ数年同様の傾向だが、昔よりもかなりすっきりと吹いているというか、サンボーンの代名詞だった泣きのサックスを演出していた独特のビブラートは全くと言っていいほど影を潜め、フラジオも控えめだ。過去10年、無数に出てきたスムース系のサンボーン・フォロワーとは一線を画そうということなのだろうか、敢えて情感を押し殺したようなストイックなスタイルで吹いている。

2曲目はニュー・アルバム「Here and Gone」からの曲「Brother Ray」が演奏される。ジーン・レイク x J.ジナスのリズム・セクションの重厚さが印象的だ。
ニュー・アルバムをリリースしたばかりなので、新曲をもっと演奏するのかと思っていたが、結局このステージでは新曲はこの1曲だけだった。

そして1986年のボブ・ジェームスとの競演盤「Double Vision」からの曲「Maputo」が続く。比較的にオリジナルに近いアレンジで演奏されるが、リズム隊がハネ系のリズムで演奏しているところにオリジナルとの差を感じる。(ちなみに86年のオリジナル盤はマーカス・ミラー x スティーブ・ガッドだった。)
この曲でのクラビ音とリード音を組み合わせたようなリッキー・ピーターソンのファンキーなシンセ・ソロは聴き応えがあった。

そして続くのは「Smile」。このステージでは他にも「Benny」、「Soul Serenade」,そしてアンコールでの「Dream」と4曲のバラード・ナンバーが演奏されたが、どの曲でもバラードでのサンバーンの細やかなニュアンスにこだわった表現力はワン・アンド・オンリーの魅力を感じさせた。

ギターのニック・モロキはディーン・ブラウン2世と言えるような風貌と演奏スタイル(またの名をマイク・スターン3世とも言う)に以前よりも磨きがかかっており「Benny」の後半部や「Soul Serenade」でのどんどんと曲を盛り上げていくギター・ソロは素晴らしいものだった。

ステージの最後を締めた「Soul Serenade」はアレサ・フランクリンのバックなども勤めたサンボーンのアイドルだったというR&B系のサックスプレイヤーのキング・カーティスがレパートリーにしていた曲だ。

アンコールに演奏されたファンにはお馴染みの「Dream」では徐々に盛り上げていく部分のヴォイスはリッキー・ピーターソンが担当していたが、その声を聴いていると何故か先日亡くなったハイラム・ブロックのことを思い出してしまった

ビブラートを敢えて抑え目にしたようなスタイルは最後まで変えずに吹ききっていたが、正直なところもっと情感たっぷりのスタイルで吹いてくれたほうがサンボーンの良さが引き立つのではないかと感じたライブでもあった。 (橋 雅人)

セット・リスト
1. Full House (from "Upfront")
2. Brother Ray (from "Here and Gone")
3. Maputo (from "Double Vision")
4. Smile (from "Straight to the Heart")
5. Tin Tin Deo (from "Closer")
6. Benny (from "Upfront")
7. Soul Serenade (from "Upfront")

アンコール
Dream (from "Change of Heart")




All rights reserved by Cyber Fusion