Nervio 新澤健一郎お誕生日ライブ 4/3(日) 東京都調布市 調布GINZ
東京の郊外である調布市。京王線調布駅は新宿駅から14分。
閑静な住宅地を抜けて、マンション地下にあるJazzバー・調布GINZ(ギンズ)。
階段を下りてドアを開けると、そこはJazz特有のセピアな空気を感じることのできる場所だ。

ここで毎年同じ場所で新澤健一郎のバースデイLIVEが開催される。
昨年はソロ・ピアノを披露し、今年は念願のNervioでの登場となった。
特に4月にニューアルバムのリリースを控え、新曲が多く披露されるステージになった。
前回Nervioを見たときと違うのは新ベーシスト西嶋徹の参加である。
果たしてNervioというバンドがどう変わっているかをこの目で確めたかった。

ステージは客席よりも一段下がったユニークな構成である。
なのに見難い事はなく、むしろ普段は楽器類(例えばドラムセット)に囲まれ見えにくいメンバーの顔が、ここでは良く見える。
それほどキャパは大きくないし日曜日の夜ということもあったが、思った以上の客の入りで、特に若い女性客が多く、華やいだ雰囲気になった。
◆ 1st set

1.Silk(新曲)
2.Heart Of Flea(新曲)
3.鼓動
4.Trance By Myself(新曲)
5.Pa・ra・bo・ra
◆ 2nd set

6.Bring On The Night
7.April 3rd
8.Subways(新曲)
9.12:12(新曲)
10.Life Between Life(新曲)
11.風にそよぐ(新曲)
12.アンコール
新曲「Silk」でステージは始まった。
ヤヒロトモヒロの作り出すオリエンタルムードのなかから、音川英二のソプラノSAXの響きが素晴らしい。
SaxはそこからHappy Birthdayのフレイズを織り込む。今日は新澤健一郎の誕生日、そのお祝いのメロディだ。
そこからバンド一丸になった演奏になだれ込む。

うん、いつものNervioの演奏だ。音に色彩が見えるような鮮やかなサウンド。
ここにはあらゆる音楽のエッセンスが取り込まれ、それこそ南米、アフリカ、北米、欧州と、多くの言葉が行き来する。
しかし、それがバラバラにならず、1つのサウンドにと溶け込む。


「鼓動」は、前作「Alma」でも演奏されていた曲だが、新作でも再録されている。
そこには特に大きな違いがあるのではないが、新メンバーで西嶋のベースの違いから微妙にニュアンスが変わっている。
多分、そのニュアンスが面白いので新作でも再演になったのだろうと思う。
アップライト・ピアノからジェントリーで柔らかなフレーズに包まれると、ドラム、パーカッションも優しいリズムで呼応する。
この曲でのウッドベースは聞く方にも耳によくなじむ。なかなか深みのあるベース音が雰囲気を最高に演出している。

「Trance By Myself」この新曲でこれまでと違った新鮮さを覚える。
Saxとベース弓弾きとのユニゾンがメインになり、シンセとパーカッションがサポートしながら、幻想的で音のイリュージョンの世界にいざなう。
この弓というかなりの魅力(武器?)をNervioは得たと感じた。
曲はそこから激しくジャジーなSaxソロ、そしてこれも激しいピアノ・ソロと受け継がれていく。


「Pa・ra・bo・ra」は1stアルバムに納められた曲で、ここにお楽しみがある。
なんと言っても、新澤のピアノ・ソロは、それぞれの曲によって多彩な表情を見せてくれる。
この曲でのソロもあまりに耽美。例えるならローザンヌで弾いたジャレットの一期一会、それを思い起こすような、現在ここでしか生まれ得ない旋律を新澤は繰り広げる。
このようなソロを聞かせてくれるので新澤のピアノ・ソロにはいつもワクワクしてしまう。


短いブレークがあって、2ndステージが始まる。
お誕生日新澤のために、ウエイトレスのお姉さん(ノリコさん)がステージに、ロウソクをたてたケーキと、ケーキ型帽子を運んでくれた。まるでお誕生会雰囲気に場が和む。
ここでサプライズ。ウエイトレスのノリコさんがエプロンを取ってボーカリストに変身する。

「Bring On The Night」はStingの名曲。ノリコさんのボーカルはなかなか上手い。
Nervioもここではバックにと変身するが、こういう歌伴も抜群に上手いので驚いてしまった。
話によると音川のセクションなんて珍しいそうだが、流石に上手い。
その音川のサックスソロ→新澤のピアノ・ソロ→岩瀬のドラム・ソロ→歌に戻る。
これはここ調布Ginzでしか聞けないスペシャル・パフォーマンスだ。

「April 3rd」は元々新澤、立飛のアコースティック・ユニットQuiet Leavesの曲だが、それをNervioバージョンで演奏。
ここでもアコースティックな雰囲気で演奏された、なかなかハート・ウォームな曲である。
ここでヤヒロトモヒロのエッセンスがなかなか鮮やかで、新澤によるとこの曲をここまでブラジル・テイストで演奏したのは初めてのこと。

「Subways」も新曲で、サンバ・リズムから始まって、かなりジャジーな面も見せる。
ここではヤヒロトモヒロの変幻自在なパーカッション・ソロが聴ける。
それとそれを引き継いだ岩瀬立飛のドラム・ソロも激しい。

「風にそよぐ」は新作の1曲目に配された、聴いていてとても澄んだ気持ちになる新曲。
Nervioの斬新でアグレッシブな精神の中に共存する、心地良くヒーリング的な部分が前面に出されている。
1つの音楽としてナチュラルで無理がない、なにか昔から知っていたかのような心地良いメロディ。


結果的にはNervioはNervioである。まるで違ってしまったということは無い。
ただ、なにか落ち着く優しさのようなものが加わったかのように感じる。
新加入西嶋のウッドベースの響きに落ち着き、くつろぎを覚えるからだろうか。
いや、それだけではないであろう。新曲にはまた一歩進んだ何かの魅力を包含している。
Nervioというバンドの、奥知れない魅力がまた1つ発揮されたからではないだろうか。

これは新作アルバム「Nude Energy」を是非とも聞いていただきたい。
サウンドに落ち着きと優しさがより一層感じられるようになったし、またあまり音楽を普段聴かないような人にも心地良く聞ける、素敵な作品としてオススメできます。

Nervioには常に期待しているのですが、実際のLIVEでは予想したよりずっと上でした。
良い意味で期待を裏切ってくれるというか、次見るときは一体どこまでになっているのか?
早くも次を新たに期待してしまってます。(TKO)
4.3.2005 調布GINZ

REPORT:TKO  PHPTO:アスワン

Nervio
 新澤健一郎(p,kb)
 音川英二(ts,ss)
西嶋徹(contrabass)
岩瀬立飛(ds,voice)
ヤヒロトモヒロ(perc)