2004.8.31 川崎クラブチッタ PRISM 和田アキラ(G) 木村万作(Dr) 岡田治郎(B) 新澤健一郎(Key) 石黒彰(Key) 中村哲(Sax) 中島オバヲ(Per) 森園勝敏 (G) 渡辺建(B&Vo) 【ライブ直前】 「バンドというのは生き物なんだ。」 これはライブ直前の雑談で、このライブに出演する新澤から出てきた言葉だ。 もちろん、この時はPrismについて特に言った言葉ではないのであろう。 しかし、この言葉はまさに今のPrismを言い当てていると、後になって感じることになった。 結論を先に言えば、それほど今回のLIVEは充実の凄いLIVEになった。 そして川崎クラブチッタ・・・会場の大きさといい、その音響といい、また雰囲気といい、全てが理想的。 まさに舞台は整った。そこに「あの男」が帰ってくる。 「あの男」・・・とは、Prism結成から数年前まで長きに渡ってバンドを支え続けてきた渡辺建である。 今回のLIVEの一番の見所は、Prism脱退以来初めてバンドと共演する渡辺建の存在にある。 昨年のPrismを去来した過去のメンバー達と再演した「Presence I」「Presence II」と、それにつながるライブなど。ここに渡辺建が居たっておかしくない、いや何故居ないのだ?・・と感じたファンはきっと少なくはあるまい。 しかし、機は熟した。まさに「この時」を待っていたのかもしれない。 昨年のLIVEやCrossover Japan2004では、現Prismと元メンバーとの共演に、まだ懐かしさという雰囲気がどこかしら残っていたような感じがした。 それが今回のライブではそんなノスタルジックな雰囲気が雲散霧消していたのだ。 そこには過去メンバー、現メンバーという垣根が無くなり、全員が「現在の音」を創造しているのが見える・・・そんな風にこの日のPRISMは生き物のよう に変化していた。 きっと、これより早ければ早過ぎになり、これより遅ければ時期を逸したであろう、そんなジャストなタイミングで渡辺建と共演できたのは奇跡に近いような気 がする。 「あの男」が再び現れるには、時も場所も・・・それに相応しい全てが揃った、まさに千載一遇の「タイミング」が必要だった。 【リハーサル】 ライブ前ってメンバーは緊張してピリピリしてないだろうか? 今回の取材はそんなリハーサルから会場入りした。 なんせ、ただのLIVEではない。それにDVD用の録画もあると話に聞いている。 ところが・・・・そんな緊張した空気はリハーサルには無かった。 もちろん真面目にサウンドをチェックしているが、メンバーは誰もがリラックスした雰囲気。 14:00頃、メンバーはまだそろわず、一人一人が順番にサウンドをチェック。 あたかも楽器教則のメソッドを見るかのように、これだけでも凄みを感じてしまう。 ステージ上は談笑しているメンバーの余裕すらうかがえる。 一通り全員のチェックが終わると、仕上げにバンドでのリハーサル。 ステージ上ではまず見られない光景なのだが、曲の途中からも「Eフラットから」で、それも全員ぴったりミスなんて無く始められる。こんなところからも本当 の一流ミュージシャンは凄いなと圧倒される。 リハーサルが終わり、メンバーは皆ステージ裏へと消えていった。 それと入れ替わりに、開場とともに観客が客席へと向かう。 この日は立ち見まで出るほどの盛況ぶりだ。 ミュージシャンだけではなく、照明スタッフも、今日の録画のスタッフも準備完了で本番を待つ。 あと数分でライブはスタートする。その刻一刻の時間が待ち遠しくなる。 【ステージ】 1曲目「Beneath The Sea」のイントロから、まさにこの日のLIVEはいつもとは違うと予感がした。 非常に幻想的で、それは音だけではなく、会場全体を包み込んだような雰囲気までも何かが違う。 和田アキラのギターが流れ出す・・が、このテンションは何だろう? ノッている?・・・いや、それだけではないだろう。しかも単なるOpeningではない。 木村のドラムが打ち鳴らされると、セキを切ったようにビートがドライブし、最初から和田のギターがすさまじい。 最初の1曲・・・なのにすごく満足してしまった。 ライブはまだ始まったばかり・・・。 2曲目の「Morning Light」でメンバーが入れ替わるが、特にアナウンスは省き、そこは自然でまるで何事もなかったように行われる。 そしてこの「Morning Light」はすごい。1曲目とは一転してソフトなこの曲であり、くつろいだ感じは損なわれることなく、・・・・・にも関わらずテンションが落ちてないの だ。 和田、森園とのツイン・ギターでの双方のソロはいずれも個性を出し、和田が泣き、モリが歌う・・・なかなか味わいがあるギターに酔う。 次の曲のイントロで新澤のピアノがコードを弾きはじめると、もう次の曲を予感した観客から拍手が漏れる。 その予想通り、「Love Me」である。和田のギターが切なく泣く・・そして中村のSaxもまた良い味がでている。 ただ、切ないのは前半だけで、後半は違った展開を見せる。中島オバヲのパーカッション・ソロを挟んで、ラテン調へと変貌する。あたかもサンタナのような熱 く展開した。 このライブは曲によってメンバーが入れ替わる。しかし、そこで雰囲気が突然変わることはない。 まるで全員がPrismの現メンバーであるかのような雰囲気・・・いや、現も元もステージに上がってしまえば関係のないこと。 そこには音楽を作り出すPrismというバンドが存在しているだけなのだ。 また、和田&森園のギター・デュオという珍しい演奏も聴くことが出来た。 これはブルースの即興なのだろうか? テーマはどこかで聴いたメロディで、そこからのお互いのギターの掛け合いが楽しい。 和田と森園はブルースをやると本当に個性が際立つ。和田のストレートなブルースに対し、森園のソフトで味わい系のギターとそのブレンドされた音がなんとも たまらない。 6曲目で岡田がステージから去ると、なにかに気づいたファンからは大きな拍手が沸き起こる。 そう。ここで久々の渡辺建が入れ替わるかのように出てきたのだ。ここから2曲は渡辺建の演奏が続いた。 最初の「The First Sky & The Last Sea」はPrismには珍しいボーカル・ナンバー。 ここで渡辺建のボーカルに対して、きっとファンからしたらこの曲を生で再び聴けたという感慨を持つ人もいたのではないだろうか。 続く「Tremblin'」でも渡辺建のはじける様なベース・プレイが聴き所である。 もちろん、今回はゲストなのだが、このPrismのステージに立つ渡辺建を見ていると「建さん、来てくれたんだな」と感慨がわいてしまう。 それからライブはクライマックスに向かう。 「Spanish Soul」。この曲は昨年のLIVEでは1日違いで聴けなかっただけに感慨。 この曲もツイン・ギターなので、今回のようなLIVEでないと聴けないのであろうが、埋もれたままにしておくのはもったいない名曲だと思う。 それとCrossover Japan2004でも演奏し、TV放映もされた「Karma」。 この曲での新澤のソロは毎回本当に素晴らしいのだが、どうやらLIVEによって全然違うアプローチのようだ。 昨年のLIVEとCrossover Japanと、そして今回とまた違う。今回はあたかもスティーブ・キューンのようなECM系メロディまで出てきたのが興味深い。 そしてラストは渡辺建が再登場しての「Unforgettable」。 今回は渡辺建がリードしてのこの曲となったが、この曲は渡辺版と岡田版とでは微妙に違う。 もちろん今回は渡辺版。イントロの微妙なベース・メロディが琴線に触れる。 更に岡田も加わり、ツイン・ベースになるのだが、そのコンビネーションも抜群。 それとツインになるのはベースだけではなく、石黒、新澤のツイン・キーボードもお互いに個性の違いが顕著で面白かった。 今日はまた1つ、新たな「Unforgettable」に遭遇できたような気持ちになる。 【アンコール】 このステージで唯一、現Prismのナンバー「Cycles Of Life」。 先日のCrossover JapanでもOPENNINGに使われていたが、今回はアンコール1曲目。 最新作「mju:」からの曲で、さすが音が新しい。 最後は木村のMCで「Prismには似つかわしくない爽やかな曲」という紹介が笑えた「Back Street Jive」。 今回も今日出た全員がステージでの演奏になった。 言われてみると確かにPrismの曲としては少し異質な感じはするけど、ノリが良く、アンコール最後に演奏するにはピッタリな曲だなと思った。 【まとめ】 もしかしたらこれまで見たライブのなかでも5本の指に入るかもしれない。 そう思えるほど充実した、それも完璧と言えるようなライブだった。 ライブが始まる前までのリラックスムードとは一転し、本番ならではの集中力。 会場が良かったのか? 観客の声援が後押ししたのか? やはり「あの男」の存在か? ライブのこの出来の理由は何故なのだろうか・・・・どこにも理由が見つからない。 やはり、バンドは生き物。そして何かがそのバンドに憑依したかのような、なにか奇跡を感じるライブ・・・それに遭遇するのは本当にラッキーなことなんだと 実感する。 嬉しいことに今回のライブはDVDになる予定があると聞いている。 今回のライブを見た人も、また見にいけなかった人にも朗報だ。 DVD発売日が非常に楽しみだと同時に、今後のPrismの動きにも目が離せない。(TKO) |
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