Mt.Fuji Steps Ahead | ||||||||
Mike Mainieri | Michael Brecker | Steve Gadd | Mike Stern | Daryl Jones | Adam Holzman | |||
直前のベン・E・キングのステージでは土砂降りだった雨もステップス・アヘッドが始まるころには少し小降りになってきていた。 「Live in Tokyo 1986」の再演とも言える今回の再編成ステップス・アヘッドだったが、1曲目はそのアルバムと同じ「Beirut」から幕を開けた。アルバム同様シンセのヒット音のイントロからマイケル・ブレッカーのEWIによるテーマに入っていく。マイケルが手にしているのは弁当箱のような四角い形をした新型のEWIだ。 マイク・スターンが楽しそうに弾いているが印象的だった。昔のような直線的な展開のソロではなく、硬軟織り交ぜた表現力豊かなソロを聞かせてくれる。 2曲目はブレッカーがテナーサックスに持ち替えての「Opps」。3曲目のバラード曲「Self Portrait」までは「Live in Tokyo 1986」と同じ曲順で進行していく。 マイケルは直前に背中を痛めて思いっきり吹けないのが残念だと言っていたのだが、そんなことを全く感じさせずに強烈にブローしている。 86年当時のドラマーは元ジャーニーのスティーブ・スミスだったが、今回は第1期ステップスで叩いていたスティーブ・ガッドが加わることによってバンドによりグルーヴ感が加わっている。 第2期の代表曲、今は亡きドン・グローニックの「Pools」も泣かせてくれる選曲だったが、この曲はできることならドンのピアノで聞きたかった。直前に参加が決まったアダム・ホルツマンがサポートに徹していたのはやむないとしても、バンドリーダーのマイニエリの存在感が少し薄くなっていたのが気になった。
ステージ中央にブレッカーだけを残して始まったのは新型EWIを駆使してのソロだった。90年代の再結成ブレッカー・ブラザーズのライブで「Song For Barry」のイントロ部に演奏されていたものの延長線上にあるようなサウンドで、アフリカや中近東をイメージさせるヴォイスのサンプリング音やサウンド・エフェクトをリアルタイムでEWIでコントロールしながら、その上を太いシンセ音で駆け巡ると言った構成だった。そしてそのまま叙情的なメロディーを奏でる「In A Sentimental Mood」へと流れていく。 マイケルがこれだけ本格的にEWIをライブで演奏するのは、かなり久しぶりだと思うのだが、以前でもEWIを究極まで極めているという印象だったのに、より一層表現力が上がっているのには感心してしまった。 そして最後は86年ライブ盤同様にポップでノリのいいナンバー「Trains」で、スターンが存分に弾きまくってステージを締めくくった。ライブの最後を飾るのにもってこいの盛り上がる曲だ。 雨の中、気がついて見れば1曲目から最後までほとんどの観客はずっと立ったままで、当然アンコールなしでは収まるはずがない。 拍手が鳴りやまない中始まったアンコールは最近閉店された六本木ピットインでライブレコーディングされたStepsのデビューアルバム「Smokin' In The Pit」の1曲目「Tee Bag」だった。この日は86年ライブ盤からの曲を中心に第2期以降の選曲ばかりだったので、このメンバーでアコースティック時代からの曲が聞けるとは嬉しい驚きだった。 マイク・スターン、ダリル・ジョーンズはこの曲は初めての演奏だった様子で、最初のテーマは2人寄り添って譜面にかじりついていてぎこちなかったのはご愛嬌だが、中盤以降は、曲を飲み込んで乗ってきたようで、スターンは自分でソロをとるとステージ脇に引いていたブレッカーを手招きして呼び寄せ掛け合いをはじめた。 最初はテナーで応じていたブレッカーだが、途中でEWIに持ち替え、スターンもそれに呼応するように目一杯ディストーションをかけてギンギンに弾きまくっていた。それをバックでガッドが煽りまくる展開となりそのままエンディングに雪崩れ込んだ。 始まる前は売れっ子ミュージシャン達のこの日だけのための再結成とのことで、リハーサル不足を懸念していたが、個々のミュージシャンのレベルの高さを見せ付けてくれ、86年当時よりも完成度も上がっているような圧倒的なライブだった。 大規模なジャズフェスのトリを飾るにふさわしい企画、演奏だったと言えるだろう。(橋 雅人) |
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PHOTO:アスワン |