和田アキラ 木村万作 岡田治郎 新澤健一郎 森園勝敏 久米大作 石黒彰 中村哲 中島オバヲ
一部
1 Into The Sky 【トリオのみ】
2 Cruisers' Street 【新澤健一郎】
3 Wind 【新澤健一郎、中村哲】
4 Prism 【石黒彰】
5 Daydream 【森園勝敏、久米大作、中島オバヲ】
二部
1 Karma 【新澤健一郎、森園勝敏】
2 Memory Of The Moment 【石黒彰、新澤健一郎】
3 風神 【久米大作、中村哲、石黒彰、中島オバヲ】
4 Suspensible the Forth 【新澤健一郎】
5 Memory Of You 【新澤健一郎、久米大作、森園勝敏、中島オバヲ、中村哲】

encore Back Street Jive 【全員】
Prism25周年の記念ライブが六本木ピットインで行われた。
Fusionの歴史から見ても、25年という長きに続けてきたFusionバンドは数少なく、非常に稀有である。
なんせFusionという言葉より前のCrossoverと呼ばれていた時代から現在に至るくらいですしね。

ただ、この25年間は当然ただ長くやっただけではない。
どんなに長くやろうとしても、そうはさせてくれない障壁を越えてきたからこその現在なのであろう。
振り返ってみれば、この25年の間にできては消えていったバンドの数々。
Return To ForeverもWeather ReportもMahavishunu Orchestraもずいぶん前に無くなった。
日本にだって一時は無数にあったFusionバンドも多くは消え、名前さえ忘れ去られてもいる。
そう考えればこの25年は非常に重い。そしてずっと一線でやり続けていることに敬意を表します。

この日は歴代のPRISMメンバーがゲストで参加するという、1つのライブとしてはかなりお得なイベントになった。
しかし、見るほうは豪華でも、ゲストの演奏者にとっては演奏曲数が少ない。
そのため少ない出番に思い切り入魂の演奏になったように聞こえた。
そしてそれぞれの曲で誰かがハイライトを持っていった。見るほうに戻ると、こんな楽しいライブはそうそうないかも。

このライブは7/25、26と六本木ピットインで2夜連続に行われたもので、取材した7/26は「PRESENT II」の曲を全曲演奏するという趣向であった。(ちなみに7/25は「PRESENT I」だったらしい。そちらも見たかった・・。)

オープニングは現PRISMトリオで「PRESENT II」収録の新曲"Into The Sky"。
3人の演奏なのに音が厚く、とても3人だけには聞こえない。
浮遊感あふれるメロディが心地よく、オープニングにはまずまずといった出足だと思う。

"Wind"での、イントロの岡田治郎のベースに引き込まれた。
タイプは違うが、ジャコ・パストリアスのように自由奔放なベース、そしてソロの歌心には痛く感心した。
むしろ、タイプとしたらアルフォンソ・ジョンソンに近いか?・・・しかしその双方をも感じさせるテクニック。
それにしても、なんと軽々と難しいプレイをこなすのだろうと見えてしまう。
それとこの曲だけに限らないが、岡田のベースは目だないところで凄いことをやっている。
他の楽器がバーンと大きな音を出してるとき、岡田のフレットさばきの大忙しなこと・・・耳を傾けると恐ろしく早いベースのパッセージが聞こえる。


そして1st Album「PRISM」からは"Prism"
この曲は以前から、これは生では演奏不可能な曲ではないかと思っていた。
聴くからにして難曲である。それだけに今回のこの演奏は感慨ものであった。

特に和田アキラのギターはすさまじい。それこそ何度もCDで聴いてはいたが、LIVEで聞くということはまるで写真でしか見たことのないフェラーリがフルスピードで駆け抜けて行くのを目撃したような感慨に近い。
それにテクだけでなく、ここでの和田のエモーショナルなギターはどうだ・・・早いのに歌いまくってる。もう脱帽!!

それとこの曲はゲスト石黒彰の入魂のプレイが聞ける。MCでも言っていたが、難しい曲にばかり参加して・・・。
確かにそれは言えてる気もするが、そのポテンシャルの高さにはテクニックにアゼンとしてしまう。
それだけでなく、この曲はギター、キーボードはもちろん、ベース、ドラムもすごく高度なテクニックを要求される。
なのに、この人たちは・・・・さすがPRISMだと改めて感じた。

2nd Album「Second Thoughts Second Move」からの"Daydream"は森園勝敏が参加しての演奏。この曲は先日発売された「Guitar Workshop Vol.2 COMPLETE LIVE」にも収録された、なかなか名曲。
タイプ的にその後のPRISMとは違う方向性なのだが、これもとても素晴らしい。
特にPRISMでの森園のプレイ、そして和田と森園が並んで引く姿にはなにか感慨深いものを感じる。
タイプ的に違う2人のギタリストという構図は例えばエリック・ゲイル&コーネル・デュプリーやデュアン・オールマン&エリック・クラプトンとか、それに比肩するほど森園勝敏&和田アキラというこの2人は絵になるなぁと思った。
それにしても森園の演奏するテレキャスターは本当に良い音がしていた。
まさにこのステージにおける森園の入魂のプレイがこの曲であり、とてもリリカルなギターを聞かせてくれた。


2部の最初の"Karma"は森園のアコースティック・ギターと和田のエレクトリック・ギターとのツインのギターのからむ音のブレンドが絶品である。
ここで後半に登場する新澤健一郎のソロにおいて入魂のプレイには注目してしまった。
このステージでも意外に思えた新澤のグランド・ピアノであるが、PRISMの音楽にただマッチするだけでなく、その音に深みと広がりをもたらす効果を与えているように聞こえる。そしてアコースティック・ピアノのソロは曲にとどまることなく、更にメロディを昇華させていく・・・下手をすると原曲を超える、あまりのメロディの洪水にどこまで登りつめるのだろうと感じた、とても素晴らしいソロを聞かせてくれた。

3rd Album「PRISM III」からの"風神"。この曲も生で聞けるのは感慨である。
ここでは20分という長尺で演奏されたが、まるで飽きない。元々、それだけのテーマが織り込まれただけに、このくらいの長さが丁度良いのかもしれない。僕は個人的にYESの"危機"を生で聴いたときと同じ感慨を持った。
なんといっても、ここでは作曲者である久米大作が入魂プレイであろう。ポピュラー音楽では自作自演は珍しくないが、クラシックでは自作自演にある種の価値があるように、あの"風神"を久米大作の自作自演バージョンで聞けるというのはやはり聞く価値大だと思う。

また同時に中島オバヲも、ここではパーカッションの音の洪水満載である。プリズムの多くのレパートリーのなかでパーカッションがもっとも映える曲ではないだろうか。それだけに曲の冒頭でのパーカッションにはぞくぞくするものを感じた。

そして木村万作の凄まじ過ぎるドラムソロ。圧倒的であり、かつまた上手い!!!。
大きな音なのに、これが非常に心地よい・・・つまり、それだけ良い音してる。
それとドラム・ソロなのに非常に音楽的で、曲の流れを切らないどころか、まるでメロディ楽器のソロを聞いてるかのようなこれも歌心を感じるドラムを聞かせてくれた。

それと中村哲のSaxもここではなかなか効いている。PRISMというイメージにおけるSaxの役割はそれほど大きくは無いだろうなという先入観があったのだが、まぎれもなく中村のSAXはPRISMの音を体現しているのだ。
それはなにかPRISMというバンド自体が持っている音楽性の幅、許容性、柔軟性を感じさせるかのような入魂プレイに耳を引いた。
そういう意味ではこの"風神"の演奏にはPRISMのあらゆる魅力がつまっていると感じた。


最後の曲は必殺の泣きのバラード"Memory Of You"で締めくくった。
この曲は昔から好きで、なきぶせむような和田のギターと、それにからむ岡田のベースがまた良い味を出していた。

それにしても和田のギターはなぜにこんなに泣くのだろう。泣きのギターと言えば条件反射的にサンタナとかの名前が出てくるのだが、和田のギターも泣きに泣く。タイプ的には当然サンタナとは別のものであるが、なんとも心憎い歌心あるギターだと思う。そういえば和田はジョン・コルトレーンの「バラッド」にインスパイアされた作品を出したが、この歌心がそれを可能にさせたのかもしれない。通常、Fusionはテクニカルな演奏はあっても、ここまで心打つ泣きのギターは稀有である。

そして泣くのはギターだけではなく、やはり岡田のベースのメロディにも心打たれるものがある。それゆえに、こんなハートに来る演奏があるからこそ、それがPRISMの魅力のまた1面になっているのかもしれない。

そしてアンコール。ここでは全員がステージに上がっての"Back Street Jive"
とても聴き応えあるステージだっただけに、最後はノリの良い曲でライトに締めくくった感じである。
なんといっても8人PRISMである。全員だと、ギター2人、キーボード3人、そしてベース、ドラム、パーカッションと総勢8人のPRISMというのは、ある意味で、これは壮観ではなかろうか。
特に昔からのファンにすれば、それだけ一度に勢ぞろいした過去のメンバーを見れば嬉しくなることに違いない。
音の方は会場が狭い分、ちょっと厚すぎに聞こえたのだが、まぁアンコールだし、固いこと抜きに楽しんだ。

終わったあとはなんとも言えない爽快感。やはりPRISMは凄い、そして素晴らしい。
PRISMの魅力というのは、良い曲が多く、テクニックも凄いということはわかっていたはずだった。
しかし、ここまで凄いと・・・圧倒的であり、このLIVEで見事に打ちのめされてしまった。
それとハートにぐっとくる演奏もあいまって、やはりこれだけのパフォーマンスが可能なんだろうなぁと思った。
早くも9月にはPrismの次の新譜が出るそうだが、それも今から楽しみになった。(TKO)

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特集 PRISM : J-Fusionはここから始まった!
「Present I」 CD Review
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REPORT:TKO  PHOTO:アスワン       PRISM HP  ユニバーサル-J