Joao Gilberto Live Report



ジョアン・ジルベルト Joao Gilberto (vocal/guitar)

東京国際フォーラム 2003.09.11


ハービー・ハンコックは新婚旅行でブラジルを訪れた際ミルトン・ナシメントの歌を聞き 新しい音楽に感動したという。
そのミルトン・ナシメントは子供の頃 故郷トレス・ポンタスでラジオから流れるジョアン・ジルベルトの「想いあふれて」にかじり付いていた。

ボサノバがリオデジャネイロで生まれてから、既に40年以上経っている。
トム・ジョビンは1994年になくなり、バーデン・パウエルも既にこの世にはいない。
すでにボサノバは過去のなかへ消えつつある音楽かもしれない。
だが、ボサノバの魅力は、この音楽を愛する世界中の人々の心を掴んでやまない。

既に伝説の人物をなってしまっている、ジョアン・ジルベルトがやっと アジアの片隅の国にやって来た。
何年も前から来日の噂が出ては消えていった。仮に来日しても本当に歌ってくれるのか。ちゃんとステージまでやってくるのか。
飛行機が嫌いなのに、長いフライトを我慢して日本まで来てくれるのか。

全てはいらない心配だった。ジョアンは定刻から1時間しか遅れずに公演をこなし、伝説を残して帰国した。

私のとって、ジョアンはエリントン、マイルス、ドビッシー、ストラビンスキーと同格である。
彼のライブを見ることは人生に於いて重要な意味を持つ。

トム・ジョビンの作品や古いサンバの曲を2時間 彼は歌った。
途中 喉を潤すこともなく、淡々と歌い続けた。
これが本当のボサノバなのだろうか。
今まで私たちが聞いていたものは、この人の音楽の亜流に過ぎなかったのか。

その日その日の演奏曲目など、どうでもいいや。と思った。
そこにジョアンがいて、その歌とギターが聞けるだけで完結してしまう。
そんな気持ちを持たせるステージだった。

幸せな気分だった。良かった、良かったと人に吹聴する気にもなれなかった。そんな気持ちさえ持たなかったのである。何故だろう。

かつてキューバのリズムがジャズ界を活気つけた時代もあった。

ジョアンとスタン・ゲッツの作品を契機にブラジルの音楽がジャズ界に急速に広まった。 ウエイン・ショーターはナシメントと素晴らしい作品を作った。
マイルスはパスコアールをバンドに加えた。
コリアはモレイラをバンドに招き、デオダートはCTIに作品を提供しメセニーはトニーニョに憧れ、ナナ・ヴァスコンセロスをメンバーに加えた。

いまブラジルの影響を感じない音楽を探す方が難しいかもしれない。

全て、ジョアンの子供たちの仕事である。
そんな気持ちが私の心に湧きおこる。

ジョアン ありがとう。

(ちっく)


Joao Voz E Violao Live in Montreux Joao 海の奇蹟
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