ORGAN JAM 2002 Live Report



KANKAWA122:
KANKAWA(org)
竹内直(ts、fl)
江藤良人(ds)
和泉聡(g)
小泉"P"克人、KG-K(turn-table)

東京・渋谷AX 2002.3.26

SOULIVE:
ニール・エヴァンス(kb、org)
エリック・グラズノー(ds)
アラン・エヴァンス(ds)
サム・キニンジャー(as)


「DRIVE」バンドを始めたこともあり、既にJフュージョンのリスナーという立場からも無視できない流れになってきた今日この頃です。アルバム「ネクスト」をリリースしたばかりのソウライヴは、2001年に続いて二度目の来日。迎え撃つKANKAWA122は、この2月にデビュー作「ルーツ・プルーフ」を発表したばかり。ともにハモンドB3を使用する日米ジャムバンドが、この3月に共演してツアーを行ったわけです。なお、この日はツアー千秋楽に当たっていました。  

最初に登場したのはKANKAWA122の5人。ドラムのビートが、ストーン、ドカーンと迫ってきます。全員が大熱演で、特にオルガンは強烈な音。ギターの和泉さんは激しく動き回りつつ演奏し、終盤には弦が切れてぶらさがってました。しかしKANKAWAさんはさらに凄かった! 本編最後の曲「キャット・ストリート」のソロでは、キーボードを床にたてて弾き、顔で弾き、さらには床にキーボードを置いて鍵盤を足で踏んで、這いつくばって弾いてしまうありさま。パフォーマンスのせいなのか、演奏のせいなのか、ものすごく引き込まれてしまい、すっかり感動。何にどう感動したのかいまだによくわからないのですが、分析など不可能な、人間の本能的な部分に訴えてくるパワーを秘めている音楽なのでしょう。  

ソウライヴは、1曲目がドラム・オルガン・ギターの3人、そして2曲目からは新メンバーでもあるサックスのサム・キニンジャーが登場。KANKAWA122とも共通していますが、とにかくシンプルで踊れる、激しくインパクトのあるビートと、ハモンドB3を筆頭に、とっても「生」っぽい楽器の音色が特徴的で、温かい手触りがある音楽です。曲の構成としては、短いリフのようなフレーズを繰り返し積み重ねるスタイルが印象に残りました。また、テンポは割合にゆったりとしています。これらによって、理屈でなく感覚で曲に入り込める音の渦ができあがっていたのでしょう。  

ひとつ重要なことですが、ソウライヴにはベーシストがいません。ベースは、ハモンドB3オルガンの上に載せられたキーボードを、ニール・エヴァンスが左手で弾いているわけです。ベーシストが弾いたものに較べて、音の立ち上がりは曖昧なところがあり、そのせいでバスドラムの音が非常に目立ちます。また、キーボードでベースラインを弾くわけですから、音に持続性があり、じわじわと体に低音の振動がしみこんでくるような、独特の感触がありました。MCはドラムのアラン・エヴァンスが担当してましたが、語りかけるというよりは、絶叫調といったほうがよく、あくまでもスタイリッシュなステージングを計算している印象です。面白かったのは、終わり方。ドラム、ギター、オルガン、サックスの順に演奏をやめて、ひとりずつステージから消えていきました。

 演奏もさることながら、お客さんはクラブ系の人が多かったようで、「うぉおおおおおおー!!!」という歓声が頻繁にあがり、びっくりしました。フュージョン的な感覚でいうと、歓声があがほどでもないシンプルなフレーズに、大歓声に大拍手が。ソウライヴで、誰か一人プレイヤーが8小節ぐらいプレイを休んだだけで「おおおおお」と、オーディエンスから反応があるほど。また、終始激しく踊りまくっている観客が圧倒的多数で、最初は踊っていなかったビジネスマン風の外国人男性でも、舞台上の演奏がヒートアップすると両手両足をフルに動かして踊りまくっています。キャミソールなどを着てちょっと肌を出している女性も数多く、目を閉じて陶酔気味に踊っていたり。客席には誰もがジャム・サウンドの陶酔に飢えているかのような、ある種の「殺気」すら流れており、妙にエキサイティングなムードでした。  

それにしても、ハモンドB3オルガンと、ゆったりした跳ね系のダンスビートの組み合わせというのは、ちょっとけだるくリラックスしたフィーリングと、スタイリッシュな雰囲気を併せ持っていて魅力的です。これから日本でも、こうしたジャム系のスタイルは着実に増えていくのではないでしょうか。(山本 美芽)



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