Pat Metheny LIVEレポート 

Pat Metheny Group
Speaking Of Now Tour

Pat Metheny(g)
Lyle Mays(pf,key)
Steve Rodby(b)
Richard Bona(vo,per, everything)
Cuong Vu(tp,vo)
Antonio Sanchez(drs)

2002.9.19 東京 渋谷NHKホール

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ここ数回のPMG(Pat Metheny Group)のLIVEは1つのパターン化があった。
それはベテランにありがちな演奏曲がいつも同じということではなく、PMGの場合はニュー・アルバムからの曲が8〜9割で、それといつもおなじみの2,3曲という構成である。そして1つ2つ前のアルバムの曲はほとんどやらない。
まぁ、ほとんどニューアルバムからの曲で満足させてしまうのだから驚異的で、ミュージシャンとしても理想だと思う。ただ、個人的にはそれに少々付いて行けないところもあり、今回はパスしようかどうかとも迷ったくらいだ。

しかし、今回は行って本当に良かった。
結構、昔の曲も演奏したし、新メンバーのパフォーマンスも本当に素晴らしかったからだ。

・・・ということで見た席もチケット取りにはあまりリキが入らず3階席である。ここ数回は1階席数列目で、いつもパットを見上げるように見ていたが、久しぶりに上から見下ろすパットもなかなかよい。初めて見たのはユーポートの2階席だったが、メセニーは上から見下ろしてもステージがカッコ良いなんて珍しいと当時思ったことまで思い出してきた。
 

はじめメセニーが一人で出てきてアコースティック・ギター・ソロ。
これがカントリータッチでどことなくECM時代を彷彿。こういうのもいいですねぇ。

Pat Metheny Group(1st)
想い出のサン・ロレンツォ
そして!!グループとしてのOpeningになんと1stアルバム収録のPhase Dance
この曲が聴けるとは。これを生で聞いたのは10年以上ぶりになる。
とどめは次のThe Bat には泣いた。この付近の曲はもう生で聞くことは無いだろうと思っていただけに、ECM時代からのファンの僕にとっては最初から感動させてもらってしまったのだ。
もしや丁度来日時期にこの時代のCDが再発されるプロモーション??? それともやはり新加入メンバーのお披露目も兼ねての旧曲再演??・・・と色々考えてしまったが、理由はともあれ聞きたいけど無理だろうと思っていた曲が聴けただけに、ここで既にコンサートに来て本当に良かったと早くも思った。

How Insensitiveは最初はなんかミストーンもあったようだが、それからの展開、盛り上げ方が凄い。この曲が始まった時は、もっと他にも聞きたい曲もあるのになぁと思ったが、次第にそんなのを吹き飛ばすような凄い演奏をしてくれた。

新曲The Gathering Skyでは、コンサート終盤でも無いのにに早くもドラムソロ。新ドラマー:アントニオ・サンチェスの期待度が高い演出と考えても良いであろう。これには大いに注目した。
確かに手数は多く、上手い。このままいけば凄いスーパー・ドラマーになるのは間違いないと思った。ただ、ソロは凄いことは伝わるのだが、ガッドやウェックルとはタイプが違い、悪く言えば煮え切らない・・・誰かに似てるなと思ったら、これってJack DeJohnetteみたい。むしろソロよりも演奏中の方が滅茶苦茶ほとんどソロ叩いてるみたいな暴れっぷりなところが似ているなと思った
 

そこから新曲が続くが、意外に新曲への観衆のリアクションが大きい。
それだけニュー・アルバムをよく聞き込んでくるんですかね?
また、結構PMGは初めてという人も多いようですし・・。

新曲はまだアルバムの曲を生で聴けたなくらいにしか僕は思わなかったのだが、 新メンバーもなかなか・・・特にサンチェス(この人はどの曲でも凄いけど)、ヴーも頑張っている。リチャード・ボナは逆にこのグループでは出番も少ないし、勿体ない気もしてくるがAnother LifeYouでのボーカルが素晴らしく、この人の居る間しか聞けないだろうからと堪能しました。(と、なんとなくあまり長くは居ないだろうと予感してるのですけど。)
 

First Circle
そしてFirst Circle・・・もう手拍子も観客めちゃ凄!!
コンサート前は聞き飽きたからもうやらなくても・・・と思っていたが、これがノレた。
新曲が続いたあとだけに、もってきかたがGOOD!!
やはり、続けるだけはあるというか、観客も待っていたかという盛り上がり方をするし、演奏も以前となんら変わりある訳ではないのだが、やはり生で聞くと良いなぁと感じてしまうのだ。
 

そしてScrap Metalが最高!! これがわからん奴は・・とちょっと毒づきたくなるのだが本当に今回は以前にも増して良かったのだ。ポイントは新加入のヴーのペットだ。
後半のトランペット・ソロでとても浮遊感のある空間を作り、他に例えるとMilesの実験的未発表ものや、ECM系のトランペッターを彷彿する。
それまでは、ただ過激なFREEで1つポイントを作る曲(僕は好きだ)と思っていたが、こんな新たな展開、発展があるとは思わなかった。

Into The Dreamでは本来はピカソ・ギターでのソロ演奏であるが、トランペットも参加してデュオでの演奏になった。この後半でどこかで聞き覚えのあるメロディをトランペットが奏でる・・・・それはAre you Going With meのさわりとわかった。
すると、それがイントロダクションになって、次はそのAre You Going With Meになる。
このAre You Going With Meも長く演奏を続けられた曲だけに、特に変更することなく、そのままの形で演奏された。個人的にはさすがに聞き飽きた感もあったが、初めてPMGを見に来た人には是非聞かせてあげたい曲であることには代わりはない。

Bright Life Size
それと他のメンバーが引っ込んで、またメセニーとサンチェスでデュオかと思いきや、反対のソデからリチャード・ボナがなんとフレットレス・ベースを持ち出し、メセニーの1stソロ・アルバムに収録されているBright Life Size!!
この曲を生で聴けるなんて!!(しかも、エレクトリック・フレットレス・ベース!!)
そういやトリオで来たときも演奏したんでしたっけ?・・・でも、こういうエレベとのトリオによるこの曲は大いに感動してしまった。オリジナルはジャコ・パストリアスが弾いているだけに、仮想ジャコというのはボナに失礼かもしれないが、僕は大いに楽しんだ。

メセニー、ライルのデュオでDISTANCE - IN HER FAMILY・・・ギターとピアノが何とも美しいこと。この2人のデュオはもっと聞きたい、他にもあるんだし・・・と思うのですが。

また、まるでメタルかというThe Roots of Concidenceももりあがる。
これは前作Imaginary Dayの曲だが、今回の再演は嬉しい。できればあのアルバムからは更にFollow Meあたりが聞きたかったが、そんなことを言い出すとキリがなくなるだろう。

最後にStill LifeからのMinuanoのイントロ・カット版。この曲も毎度おなじみになったが、これでフィニッシュという気分なのであろう。僕も納得である。たまには省略ではなく、フルでまた聞きたいところだが・・ ・。

アンコールにはSong For Bilbao。Travels収録のこの曲はマイケル・ブレッカーのアルバムで復活し、Imaginary Dayツアーでも使われたが、ここでも再々々登場とあいなった。
アンコールにふさわしく、すかっと決めてくれた感じだ。

アンコールも終わり、客席ライトもついたにも関わらず、観客拍手は鳴り続いた。
計3時間は最近のLIVEでは例のない長丁場だったが、飽きるなんてことはなく、本当に満足できた良いコンサートだった。特に今回はECM時代にさかのぼった旧曲も結構あり、その対比も楽しめた。近作の音楽性の高い曲も、初期のみずみずしい曲にもそれぞれに違ったなにかが存在する・・・を再認識することができた。
 

今、「Speaking Of Now」を聞きながらコンサート評を書いているのだが、コンサート前よりもグっとハートに響くようになったのは、それだけコンサートが素晴らしかった証拠だろうと僕は考えている。

(2002.9.22 TKO)