STB139 2001.06.23
コレノス
ゲスト
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コレノスは、是方博邦(g)、須藤満(b)、則竹裕之(ds)の3人による、とびきりパワフルで爽やかなギター・トリオである。98'年から活動を始め、トリオの機動力を生かして全国でライヴ活動を行ってきた。この日は「コレノス・スペシャルユニット」として、3人のメンバーの他に和泉宏隆(p)と松本圭司(key)のふたりをゲストに迎えている。その結果、則竹・須藤・和泉・松本と、4人のT-スクェア出身ミュージシャンが顔を揃えることになった。実はこの5人でのライヴ、昨年の12月に京都のライヴ・スポット「ラグ」で一度行われている。そのとき非常に手ごたえがあったため、このたび東京でも実現したという経緯があり、何が起こるのか期待も高まるところだ。 ライヴ冒頭では、まずはコレノスの3人が登場した。1曲目は是方のロックなギターが炸裂する「ナミブの嵐」。ステージ上の3人とも吹き荒れるように激しいプレイで、いきなり飛ばしている。続く「スーパー・アービー」では、ゲストの松本が早くも登場。こちらもロック・テイストの曲で、スピーディにオルガンを弾く松本の存在感が光る。 そして3曲目からは、2人目のゲスト、和泉も加わって5人の演奏になった。和泉はピアノの隣に用意されたローズに向かって、ゆったりした即興的なイントロを弾き始めた。それまで熱くなっていたステージに、サーッと涼しい風が吹いたかのようだ。そして始まったのが、スロー・テンポの渋い是方ナンバー「ムーンライト・メモリーズ」。途中、和泉が切々と歌い上げたソロは、いきなり本領発揮ともいえる素晴らしさ。ブルージーな是方のギターとリリカルな和泉のピアノが溶け合って、クールでメローなひとつの世界ができあがっていた。続いて、ディープな雰囲気が漂う和泉のナンバー「フォービドゥン・ラヴ」。この曲のギター・ソロは、聴いているうちに全身の力が抜けてしまいそうなほどエモーショナルで、是方らしい魅力がにじみ出ていた。 また松本の曲「ニュー・オーリンズ」では、和泉と松本の「鍵盤バトル」が見せ場となった。松本は最初から激しくテンションをあげて、才気あふれるフレイズを連発。和泉は「いや〜参ったな〜、そう来たか(笑)」的なゼスチャーを見せつつ、プレイのほうはどんどんヒート・アップしていく。ふたりのこんな表情、こんなソロの展開など、めったに見られるものではない。 中盤になって、ゲストの2人がいったん退出すると、ステージ中央にスネアとシンバル1枚がセッティングされ、コレノス名物のアコースティック・コーナーへ。コレノスの3人が一気にメドレーで7曲を聴かせる。そして和泉・松本が再びステージに戻ると、最後はふたたび大音量で盛り上がった。「ハート・オブ・アース」では、ドラムソロが入り、いろいろな種類のグルーヴを則竹が力強く叩き出す。「パープル・サウルス」は横揺れ感のある8ビートにアレンジされており、松本のオルガン・ソロは、同じパターンを繰り返すスタイルが印象的だった。ベース・ソロでは、須藤が超スピードのスラッピングを聴かせ、客席からは大歓声が起こる。ラストの「クラッシュ・オン・ユー」になると、コレノス定番の客席乱入があって、是方と須藤は楽器を弾きながら客席じゅうを走り回った。その間にステージ上では、和泉が髪を振り乱してグルングルンと頭を回転させながらピアノを弾き、松本はオルガンのバッキングの他に「ピヨ〜ン」「ウィ〜ン」といったシンセの音で主張。まさに"お祭り状態"で楽しませてくれた。 ふだんのコレノスでは、主に是方がソロを聴かせるわけだが、この日は是方・和泉・松本の3人のソロの応酬があって、より多彩に楽しむことができた。そして須藤・則竹は、この3人それぞれと息がぴったり。従って、どの曲にもバンド・サウンド的な安定感があった。つまり「コレノス・スペシャルユニット」は、セッションの新鮮さと、バンドの切れ味を一度に味わえるという、なんとも贅沢な試みだったのだ。この日のチケットが早々に売り切れたのは、多くのリスナーが、こうした展開を予想したからに違いない。そしてセッションとバンド、それぞれの魅力を知り抜いている是方だからこそ、この「スペシャル」な企画を、京都に続いて東京でも実現してくれたのだろう。この5人によるライヴ、12月には再び京都ラグで予定されているそうだ。 (美芽) ●曲目表
EC アクア・ディ・ベベール(おいしい水) *この原稿はジャズライフ2001年8月号に掲載するため執筆したものです。 |
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