Bill Evans Live Report




Bill Evans
Bill Evans & Push Live Report
1997.9.13 BLUE NOTE TOKYO 2nd Stage
Bill Evans(ss,ts)
Jim Beard(key)
Dave Weckl(drs)
James Genus(b)
Adam Roders(g)
Arto Tuncboyacian(per,vo)
「Starfish & The Moon」が出ていきなりのライブでCDからそのまま飛び出した様な演奏であった. Jim Beard の幻想なキーボードに Arto Tuncboyacianの天から聞こえてくる様なボイスが降りてきて彼らのライブは始まりました. 「Starfish & The Moon 」から何曲か演奏されCDとそう変わらないクオリティの高い演奏が繰り広げられました. Adam Roders も最初は生ギターで透明感あるギターにシャープなドラムそして重いベースに自由奔放に飛び回るBillのサックス........... A.Tuncboyacianのボイスは無国籍の個性を持ち、B.Evans 独特の個性と絡み合って不思議なサウンドを繰り広げてくれました. B.Evansのライブは何作か出てますが、これらのサウンドはスタジオ盤と全く異なるサウンドですが今回のライブはスタジオの雰囲気に近かった内容です. (ヒップ・ホップ系のサウンドを除いて) 近いと言ってもライブには限界があり、そのままそっくりのサウンドを作るというのは難しいと思いますが、かなり近づけた演奏だったと思います. 後半はガラッと雰囲気を変えて、ヒップ・ホップ系以前のストレートなサウンドになりました. そして圧巻は「Let The Juice Loose 」のD.Chambersのドラムソロの様にD.Weckl のソロ. このバンドはドラムソロとして独立したものでなく曲の後半に演奏をリフレインさせそこにドラムソロを入れて最高に盛り上がる特徴がありますが今回もそれを見せてくれました. 最近はスムース系が全盛でこういったストレートで骨太い個性が強くオリジナリティ溢れるサウンドが少なくなって、イマイチ欲求不満に陥ってましたが、久々にスカッ〜とした演奏が聴けました. ライブを聴いてフっと思ったのですが、Billは共演するミュージシャンの良い個性を上手く生かしてますネ. 大昔はM.Eganを上手く生かした作品.「Let The Juice Loose 」付近のサウンドはC.Loabが光ます. で、今回はJ.Beard のプロデュースとA.Tuncboyacianの不思議な個性と彼のサウンドの変遷の理由の一つが見えた様な気がします. とにかく演奏のクオリティの高さはトップクラスです. 来年、又来るかどうか分かりませんが、見逃せないですねぇ.... (アスワン)
Dave Weckl

Jim Beard

をづ/James Genus/アスワン
ビル・エバンスは最近、新作を出したばかり。しかも、その新作は今までとは方向性が違うのでどんなステージになるのか予測できないでいた。 一足先にドラムのディブ・ウエックルがドラムに座り、なにやら楽譜のチェックを行っている。それが済んで一旦戻ると、今度はメンバー全員とステージ上に上がり今夜最後のライブの始まりだ。

最初は新作の曲からスタートした。ビルのソプラノがジム・ベアード達が作り出す空間を泳ぐかのようにメロディを歌い上げる。この新曲は激しいビート、ヒップホップとは違い、カントリー、ワールドミュージック、スムースJAZZ、ロックなどを上手くミックスした、また新しい音楽を作り出しているようである。観客もシンとビルの演奏に浸っている。この新曲は良い、ビルのSAXがアドリブに移ると、それまでメロディを称えていたSAXから、更に自由な歌が聴こえてくる。

ステージ の後半は従来のFUSION路線をひたはしる。それに従ってドラムのディブ・ウエックルのビートが強くなってくる。ジェームス・ジナスもいつのまにかウッド・ベースから5弦エレキ・ベースに持ち換えて演奏している。そしてビルのSAXはまさに咆吼を始めるのもここら辺からだ。彼の金髪が振り乱され、汗と一緒にライトに照らされ光る、その様をマイルス時代から「黄金の若きライオン」に例えたくなるのは今も健在。トレードマークのバンダナはその頃から一緒なのもファンには嬉しい。 ウェックルのハードなドラム・ソロが曲を一気にクライマックスに持ち上げ、まるで一気に急降下するように曲はエンディングを迎えると、そこには何とも言えない爽快感が残った。

その他コメント
 ギタリストはTAYLORのアコースティック・ギターが使っていた。あまりお目にかかれないギターなので興味を引いたが、さすがに良い音をしている。マーチンなんかと比べたら?・・・ゴメンなさい、そこまでの違いは自分にはわからない。

** ウエックルのドラムは最高だった。前半は派手さは抑えられていたが、シンバルやスネアの細かい使い方などの上手さに目が行った。後半はいつもの爆発を見せ、様々なテクで魅了した。彼のドラミングはそのスピードとキレが好きだ。ただし、今回はベースとのカラミが少ないのが残念だった。ジョン・パティトゥーチ(B)とのコンビならば何か見せてくれるのだろうが、そういう意味ではジェームス・ジナスとはインタープレイまで昇華していないようだ。

** ビル・エバンスの方向性を考えると、今回は過渡期と言えるだろう。新作の方向性の前半だったが、そのまま1ステージを続けるまでに至らなかったのは、昔のイメージを持つ観客を考えての事かも知れない。しかし、今後この新作の路線を続けるのなら、古い曲を捨てて、新曲をメインにしてのステージにいかにしていくかが課題に思える。ただ、それはどうなるか楽しみがこもった課題なんだけど。

** それと新しい方向性だが、これはメンバーを固定した方が良いように思える。パーカッション、キーボード、ギターはこのメンツがベストであり、彼等が絶対必要に思えるが、ドラム、ベースは別でも良いような感じがした。譜面を見ながら演奏する人よりも、全て暗記して演奏できるくらい一緒に演奏するメンバーの方がより演奏が良くなって行くと思う・・・特に今回の新作のような方向の場合は。

** 今回のステージは本当に楽しい、気分も最高だった。もし、またビルが来日したら。迷わず、見に行くだろうな!・・・と自分で自分を予測した。 (TKO)



Photography by Aswan/TKO
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