須藤満


美芽.
今回もベースソロをいくつか弾かれてますよね。
須藤.
ベースソロは今回多かったなあ・・・。自分の曲はバラードなんで、ベースソロを入れる気はなかったですけど。本田君の曲には2曲とも入ってて、(「TRELA ALEGRE」「SAMURAEI METROPOLIS」)安藤さんの曲には1曲入ってます。(「MAZE」)
美芽.
あっそうそう。5弦と6弦のベースがあって、フレットがあるのが5弦、フレットレスが6弦なんですよね。使い分けとは、どういうふうに?
須藤.
今回のアルバムに限らないんですけど、チョッパー物だなと思ったら5弦ですね。でも「指弾きのほうが面白いかな」っていうときに「フレットのあるのとフレットのないのじゃ、どっちがいいかな」って考えるんです。要するに曲の中のフレーズで、それぞれのニュアンスがあるじゃないですか。例えば、一個の音を出すのに向かって「にゅっ」ってグリッサンドしてもっていった時に、フレットレスの味わいとフレット付きの味わいで、そのどっちがその曲に合うかな?って。それでフレットレスかフレット付きか決めるんです。だからフレットがあるかどうかで、弦の数は関係ないです。
美芽.
では、今回はフレットレスはどの曲で使ったんですか?
須藤.
今回は安藤さんの「MAZE」のソロの部分だけですね。ライブでは最初から最後までフレットレスでやる・・・かもしれないし。だからそれも考えどころで、ソロのところをちゃんとした味わいでひきたいと思えばフレットレスでいくという手があるし。フレットレスでやってもおかしくはない曲ですから。秘密兵器としては、ダブルネックというのがあるんですけどね。
美芽.
あ!!あれはなんでああいうものを持っているのか考えてませんでしたけど、 ・・・・そのためのものなんですね!!
須藤.
そうなんです。持ち替えなしでどっちも出せるんですよ。両方の音を一緒に出すことはないんですけど、持ち替えなしで、切り替えで「こっちの音」って出せるから。
美芽.
し、知らなかった・・・・(大ショック)なんでああいうの持ってるんだろうと思ってました・・・
須藤.
それは、去年のツアーをご覧になりましたね。去年のツアーの時には、メドレーがあって、で冗談でいってたのにホントに作ってきてくれた業者がいたんですよ。じゃ、使ってみようかいな・・と。あれは特注ですね。2度と作りたくないっていってましたね、作るひとも。めんどくさいよ、って。(笑)
美芽.
それで・・・重いけど、ああいうものが存在するんですね。今回もそれも使うかも・・・しれない?

須藤.
使うかもしれないですけど・・・一応曲調と見栄えがまったく合わないもので、これはどうしたものかなと今考えてるんです。バラードのしっとりした中でひとりだけ「にゅっ」とかダブルネック持ってたら、バカみたいじゃないですか。(笑)いろいろ考えることあるんですよね、何かと。今のところだと、その前に持ち換える時間があったら「MAZE」はフレットレスにしようかなと思ってますが。
美芽.
そうやってどこでどっちを使うか考えているわけですね。
須藤.
例えば、ただのボサノバっぽい曲とかあるじゃないですか。それをソロもなくて普通に弾くだけなんだけど、フレット付きのベースとフレットなしのベースで味わいが変わるから、「こういう曲だし・・・どっちにしようかな」とか考えたりするんですよ。
美芽.
今回のアルバム用には曲は何曲作られたんですか。
須藤.
今回は5曲ぐらいかな。この前の自分のライブではアルバムに選ばれなかった曲をやりました。
美芽.
作るペースは、早くなってますか?
須藤.
いいえ。そんなことないです。時間かかりますね・・・。それで、時間かかるものはたいがいダメなんです。1曲のメロディーラインがつながるのに時間がかかるのはたいがいダメですね。今回入ったバラードは・・・わりと早くできたかな。
美芽.
題名は決まったんですか?
須藤.
題名はねえ・・・、「FROM THE BOTTOM OF MY HEART」っていうのに決まりました。
美芽.
出だしのピアノががすごく綺麗ですよね。全部のアレンジを須藤さんがなさったんですか?
須藤.
うーん・・・和泉さんに好きにやってもらってよかったんだけど。その通りやってくれちゃったんです。
美芽.
私はあの出だしを聴いたら、星がピカピカピカって光ってるのが見えてしまいました。
須藤.
星ですか?(苦笑)星はイメージ違いますね。(笑)あんまりロマンチストじゃないんですよ。かなり現実的な人間なんで。
美芽.
タイトルと曲についてもう少し詳しくうかがいたいんですが。
須藤.
曲自体は案外スッとできたかな。前回のアルバム「B.C.A.D」に入った「PIOGGIA DI CAPRI」という曲もそうだったんですけど。案外・・・スッとできちゃったものほうがいいんです。
美芽.
ご自宅でマックに向かって作るんですか?
須藤.
うん・・・とっかかりはギター弾いてたりベース弾いてたりキーボード弾いてたりする中でできますね。。作っていく段階ではマックに取り込んでいかないと忘れていっちゃうので、マックに打ち込んでます。
美芽.
ずっと昔に比べると、こう・・・渋い曲も書かれるようになりましたよね。
須藤.
年とったからかなあ。いや、こう・・子供がダアアアアッ!!って曲も作ってあるんですけど、そういうのはなかなか選ばれないんですね。ダアアアッていうのでも他にいいのがあればそっちになっちゃうんで。まあ・・・若干バランスの中で選ばれる面もありますから。
美芽.
選ばれるのは渋めであっても、作風は既にいろいろあるわけなんですね。
須藤.
・・・と思いますけどね。
美芽.
オリジナルも、結構曲がたまってらっしゃるのでは・・・
須藤.
たまってるというか・・・。案外あるかな?案外あるっていっても、神保彰さんの比じゃないですけどね。だって、神保さんの譜面に800番とか書いてありますからね。
美芽.
800番!?800曲あるってことですか!?す、すごい・・・・(絶句)
須藤.
・・・すごいでしょ。それに比べたらもう・・・。20曲あるかな?って感じですから。人前でできるのもそんなにないぞっていう。
美芽.
去年のアルバムの話になっちゃいますけど、「PIOGGIA DI CAPRI」が個人的にすっごく好きなんです。ピアノで練習しちゃったくらい。あの曲は人気ありますよね。もとのタイトルが「泣き濡れてひとり」でしたっけ?
須藤.
そうなんです。だって、あの曲が採用されるとは・・・思ってませんでしたから。デモテープで作ってた段階ではあまりにもさっぱりしすぎていて、あんなに構成ぐちょぐちょしてなかったんです。イメージがだぶるかなと思いながらも、ドラムパターンは昔の「ROMANTIC CITY」って曲をパクった感じで入れていったんですよ。どうせ、選ばれないから「タイトルぐらい遊んでつけて笑ってもらおう」ってやったら、なんだか選ばれちゃって。
美芽.
今回のタイトルは、どうやってつけたんですか。
須藤.
今回は・・・別に曲作ってる段階ではそんなにタイトルのイメージもなくて、でもバラードでこういうのできたぞ、って。なんてことはない、伊達公子さんの引退の試合でね、あいさつがあって、その中で「FROM THE BOTTOM OF MY HEART」の「HEART」っていうところだけすっごく感情がこもってたんです。この一節は「もらい!」かな、と。別に英語の決まり文句だし。タイトルなんてそんなもんですよ。まず曲があるので、タイトルが先にくることはまずないですね。イメージから作る、っていうのでもないんです。逆に楽器をいじってて浮かんだひとフレーズひとフレーズをふくらませていく・・・方法かな。だから、僕はこういう景色があって、その景色にあう曲・・・みたいなのはいっさいないんですよ。できないしね。それに、曲の景色自体も作っているうちにまた違っていくのかなというのがあるんです。
美芽.
今回、本田さんの「SAMURAI METROPOLIS」が、メロディックな上物VS「マーカスミラー入ってるぞ」系のファンキーなリズム隊の対比がいい感じだな、と思ったんですけど。
須藤.
今回は、あれがまあまあハデな曲かな。毎回みんなの曲を聴いてると、いろんな曲があって面白いんです。あれから8曲選ぶっていうのは・・・大変ですわ。一応全員の曲を一回は全部聴くんですよ。
美芽.
全体を通して、こんな感じかなあ・・・と説明できるような何かってあります?
須藤.
うーん・・・どうなんだろう。全体を通してだと・・・そうだなあ、一応5人みんなにきいてもそういうと思うんだけど、「ただのさわやかスクエアじゃないぞ」っていうのはどこかここかに見え隠れしてるんじゃないかと思うんです。例えば安藤さんの曲であるとか。
美芽.
ふだんフュージョンしか聴いてないので、安藤さんの「BAD BOYS & GOOD GIRLS」を聴いたときには驚いちゃいました。
須藤.
どうしちゃったの!?って感じでしょ。(笑)
美芽.
この笑い声はなにーーーーーーっ!!!???誰の声!!??和泉さんの声?と思ったんですけど、・・・・違うんですよね?
須藤.
(笑)あれはサンプリングのものからとってるみたいですね。
美芽.
メンバーの誰かやってるのかと思っちゃいました・・・。
須藤.
ライブで俺やりましょうか?・・・声が裏返っちゃうんでしょ、「アハハハハ」(裏声)とかいって。
美芽.
(爆笑)・・・・ライブでは、サンプリングしたものを流すんですか?
須藤.
まあ、流すでしょうね。どうやるかわからないけど・・・フレーズをサンプリングしてサンプラーで流すのか・・・。
美芽.
さっきニューアルバムの話で、フレット付きとフレットレスについていろいろお考えになっているところをお話いただきましたけど、そういうお話はセミナーでもなさったんですか?
須藤.
いや、してないです。
美芽.
セミナーでは、あまり寝られないとの話ですが・・・
須藤.
寝たかったですねえ・・・・。前の日徹夜したでしょ。で、1日目終わって3時間寝て、2日目に4・5時間寝て、最後の日は寝てないですからねえ。セミナーの時はそういう話もしたかったんですけど、最終日にセッションがあるんです。これは毎回なんですけど。ただ、「これやるからこれできる人」みたいにしても参加者もなかなかできないだろうから、課題曲を決めてやるんですよね。課題曲の練習の方にかなり時間を割いたんです。曲の練習以外にも、音楽の中身の部分とか話したかったんですけど、話しても、多分理解できる子と理解できない子がいると思ってたんです。ただ、何年かしてから「ああ、須藤があんなこと言ってたなあ」と思いだしてくれるぐらいのつもりで、いいんですけどね。
美芽.
課題曲は何だったんですか?
須藤.
課題曲がね・・・。「MACK’S BACK」(美芽は、ここでえっ!難しい!!と叫んでしまう)と、「MISTRAL」・・・「STARS AND MOON」に入ってるマイナーのシャッフルの曲で、難しいんですよ。「MISTRAL」って曲は途中にベースソロがあって、田中豊雪さんのころの曲で、豊雪さんがオーバーダブして2本でベースを弾いてるんです。そこをやりたかったもんだから、1曲通してベースが二人っていうツインベースの仕様にアレンジしたけど、なかなか難しかったんですね。最終的な段階まで考えたら、生徒さんが完璧にできるっていうこと自体が難しい面があるし。
美芽.
で、須藤先生もベースのみなさんも寝ないで練習したんですか。
須藤.
いや。みんな結構寝てました。俺が一番寝てないかもしれない。
美芽.
こちらとしては、須藤さんは教育実習にも行ってるし、教えるのはお好きなんじゃないかと予想していたんですが、いかがですか。
須藤.
教えること自体は好きなんだけど、自分が楽器っていうものに関して教わったりしてないから、悩みますよね。例えば数学だったとしたら生徒に教えるんだとしたら、自分が教わったものを「あの先生のこういうところがいい、こういうところが良くない、授業中にキノコの話をしだすのは良くない」とかいろいろあるわけじゃないですか。そういうのを自分で消化した後に、自分が先生になって数学を教えるときはこうしよう、みたいなビジョンがありましたけど。楽器に関しては人から教わったことが一切ないので、自分でコピーして練習をして、ちょっとづつフレーズが弾けるようになってきた人間なんです。自分にとってはそれが一番だった、いまだにその方法論が一番だと思ってるんですよ。そして教えるとなったときに「さて」って困って自分なりに考えました。ベースにはリズムの部分があって、和声の部分があって、フレーズの部分があります。音楽の三要素ですね。これが全部さらえるといいなと思いましたね。リズムの部分に関しては自分なりに考えて、八分音符で構成されているところがあったら、こういうところで弾くものがあって、裏で弾くものがあって、それの音の長さはどれくらいで、みたいな話はしたんです。「こうこう、こういう意味でテキストに書いてあるからね」って言って、それを生徒に練習させる、みたいな。それが十六分音符であって、三連符であって・・・っていうところまでは練習しました。そのあとにコード進行があって、コードには何の意味があって、みたいな話がしたかったんだけど、その前にその課題曲の練習に突入しちゃったもんだからそういう話が一切できなくて。あとで「そういうも話ききたかったです」って言ってた子もいました。時間が限りがあるんで、しょうがない面もあるんですけどね。
美芽.
指導案というか、カリキュラムのようなものは組まれたわけですね。
須藤.
そういうものは作りました。これは前二回で勉強したことでもあるんだけど。一回目はT-スクェアの曲のカラオケを作っていって、全パート入っててベースのところをミュートすれば練習になるかなと。それを作って、ようし準備は完璧だ!!と思って、セミナーに行ってみたんですよ。1回目の生徒はT-スクェアのことよく知ってたからそれでうまくいったんです。二回目ではT-スクェアの曲を全然知らない人がけっこう来てたんです。「『TRUTH』しか知らないんですけど・・・」っていう生徒さんもいて「うわ!!どうしようかな」と思いましたよ。とりあえず基礎練みたいなことをやってみたんだけど、これはちょっとできる人にはまったくつまらなくて飽きちゃうことなんです。初心者は初心者で「これは何の意味なんでしょう」とか質問してくるし、二回目はそういう意味でクラスの雰囲気とかも大変な状態になってたもんで・・・。そういう二回の経験もふまえて今回はうまくできて良かったですね。
美芽.
私も音楽の授業やってましたけど、レベルが違う人に同時に教えるのは大変ですよね。セッションの完成度まで追求してやると、当然厳しい面もあると思うんですが。
須藤.
そこまでは、無理ですよね。音楽の中身の話に関しては、きかれたら説明というか、自分の考えを言ってみようかな思ってましたけど。最後の晩のセッションが終わってからクラスごとに宴会状態になるわけですよ。宴会状態もひとしきり進んできたころに、キーボードのクラスにいた子たちが遊びに来たんです。その子たちはエレクーンをやってて、今のエレクトーンの指導のされ方にかなり不満を持ってるらしくて、そこでちょっとそんなような話はしたけれども。それを果たして自分のベースのクラスの生徒がきいていてわかったかどうか・・・。
美芽.
では、セミナーを終えて苦労されたぶん、得る物もあったといった感じでしょうか。
須藤.
そうですね。でも、セミナーで人に教えると言ってて自分で「ああそうか」って再確認できる部分もあるし。例えばほとんど初心者に近いような子がいたんですけど、課題曲の練習になって「やってみて」って言うんですけど、わかんないところで詰まっちゃうんですよ。弾きやめちゃって、次はどこからっていうのもわからなくなる。「今はみんなで弾いてるからいいけど、これがセッションとかで出てたとしら、そこで弾きやめるとベースはいなくなるでしょ。それがどういうことかわかる?」って言って、「それはね、全体の中でベースがいなくなるから、上の人たちは何も出来なくなるんだよ」って説明したんですが、「はあ」って答えしか返ってこないんです。とりあえずなんでもいいから弾いてろ、弾きやめるのだけはよせ、って言いました。なんで分からないかな・・って思いながらも、一応その人には弾いててもらって、僕がサポートのつもりでキーボードを持っていったから一緒にベースラインを弾いてたんです。そしたら、自分も分からないと弾きやめることに気づいたんです。ベースだと弾けるけど、鍵盤だと弾けないじゃないですか。「うわあ」と思って弾きやめちゃうんですね。これは初心者はやめちゃうもんなんだと思って、あとで俺は謝りました。「悪い。これはしょうがないわ。」って。って自分でやりはじめたころのことを思い出させてもらえるんです。例えばインプロビゼーションがどういうものかっていうことを話したりする。今の自分の考えをいっても多分理解できない、でもそういうことがわかりだした自分の頃に立ち戻って話をすると、聞く人には近いところにいるから、わかりやすいんですよね。見本演奏でやって見せてるときに、音の長さに気を配ってやってみるとか、ここはなんで8分休符でなくて何故16分休符なんだとか、そういうことっていうのを一応譜面づらにして生徒に伝えるんだけど、「果たして自分はどうなの」と自問する。実際にその譜面をやってみて「あっそうか」「俺、違うじゃん」とかね。
美芽.
自分を再構築するみたいな部分がありますね。
須藤.
うん、自分にとっては、すごく役に立ってる面もありますね。いいですね、セミナーは。もうちょっと寝れるように考えていかないと・・・体がしんどくてたまんないですけど。
美芽.
今回、メンバーの生演奏はなさったんですか?
須藤.
課題曲の見本演奏ですね。ニューアルバムの曲は演奏してないです。
美芽.
須藤さんは2月にソロライブでミニツアーも行ってらっしゃいますね。今回はとにかく面白かった!!という話を行った人からお聞きしました。・・・MCも大変長くて楽しかったとか・・・神保さんと共演できて、大橋さんも須藤さんも喜んでらしたとか。
須藤.
うん。高橋安土も、顔に出ないだけで喜んでました。
美芽.
3人で喜んでたわけですね。今回神保さんを呼ばれたというのは・・・どういったいきさつで?
須藤.
うん、前々から一度何かの機会に、ジャズフェスとかでその日のメンバー全員集合みたいな、バカみたいな、「ただステージの上にいっしょにいた」っていうんではないセッションで共演したかったんです。例えば神保さんのソロライブでもいいし、何かの企画、例えば是方さんがセッションやる時に呼んでもらうとか。ドラマー神保彰とベース須藤満っていう形で死ぬまでには一回やりたいと思ってたんですね。(笑)去年の10月なんですけど、ギターの大橋君が毎月ピットインでセッションやってまして、それにドラムが神保彰、ベースが須藤満という形でよんでもらったんですよ。そのときがまともな形でやるのは初めてだったんけど、すごく気持ちよくって。まあ、自分のセッションとしては、「もう世に出てる人はいいじゃん。例えば他の歌のバックとかやってる中ですごくいいものを持っている人がいる。そういう世に出ていない人が、俺とやることで沢山のお客さんに見に来てもらえるのなら」と思って始めたんです。それがポリシーだったんだけど、だんだん変わってきて。俺が良ければいいや、っていうことになったんですね。で、去年10月に大橋君のライブで神保さんと共演させてもらって、「これは、ちょっと今度の春先は神保さんにお願いできるならお願いしようかな」と。で、いってみたら「いいですよ。スケジュールがあいてれば、やらせてください」なんて言ってもらったんで。
美芽.
ドラマーとベーシストって、よく夫婦に例えられますけど。神保さんともかなり相性がいいというか、フィーリングが合うんでしょうか?
須藤.
あの・・・フィーリングうんぬんというより、基本のビートとかがすごくしっかりしてらっしゃる人なんです。そういう意味では何やっても大丈夫。そういう意味ではうちの則竹でもそうだし、いいドラマーの人たちはみんなそうなんだけど。その中でも神保さんはビートの受け皿がすごく広い。則竹なんかはビートのポイントってものに対してすごくシビアで、ある意味では自分にとってもそのシビアな部分が伝わってくるんです。それがいい意味で厳しさになってるし、スクエアっていうバンドのリズムのタイトさにつながってると思うんですけど。例えばね、セッションで神保さんと演奏してると受け皿が広いから、ある程度自由に前後ろいっても救ってもらって・・・、みたいなことができるんですよ。則竹なんかも是方さんのセッションなんかいくとそうなんだけど。(笑)
美芽.
やはり、セッションとバンドではそういった点まで違ってくるわけですか。
須藤.
うん、自分のバンドでは突き詰めようみたいな意識が則竹の中にもある。そこに関しては僕も全然異論を唱えるつもりはないんで。例えば俺と神保さんと、誰かと誰かのバンドでずっと活動していくぞっていう形になると、また神保さんのありようが変わっていくかもしれないですね。セッションだからなのかもしれない。バンドでずっと継続してやっていく場合は、バンドの中の「リズム隊」ってことで固めていこうという意識がベースでもドラムでも働きますから。そうなるとリズムに関してもすごく厳しくなるかもしれない。
美芽.
その、「固める」っていうのは、具体的にはどんなことなんでしょう。
須藤.
すごくわかりやすい例をいうと、ドラムとベース一緒にゆれなくなること。セッションなんかでやってるリズム隊は、ドラムも揺れてる、ベースも揺れてる、でも目指すポイントとしては同じところを追いかけてるから、揺れながらも合ってるみたいなところでスリルがある。バンドでやってる場合はそのバンドでやってるもの同志で、この音符は多分ジャストなんだけど多分突っ込み気味に聞こえるという相手のクセまでわかるんです。そうするとそこで、キックとベースが「バラッ」とかなるのは嫌なわけです。まあそれはすごくわかりやすい一つの例だと思うんですが。それをもっともっと先へ先へ穴を掘っていくわけですよね。
美芽.
則竹さんとは一緒に演奏していて、もうかなり長いですよね、奥さまよりも・・・
須藤.
ああ、もうカミさんよりぜんぜん長いですね。10年ですから。こんなに長いこと一緒にやったドラマーはいないです。
美芽.
それだけやってると、全部なんでもわかっちゃうという感じですか。
須藤.
いや。あのねえ、奴はねえ、分からないところがどんどん増えていくんですよ。
美芽.
えええええ!!???(ぎょっとする)
須藤.
いやいやいや、勉強熱心だから、ほんっとに。だからしばらく会わないで帰ってくると、「何だそのフレーズ・・・、また出てくる・・」みたいな。わかんないですよ彼は。で、半年会ってないと、半年前に言ってたことが180度変わってたりしますからね。
美芽.
じゃあ、新鮮味がありますね。
須藤.
新鮮味はありますよ。ホントに。逆に俺が新鮮味なくて向こうが飽きてないかなって、それが心配。
美芽.
でもふたりして新鮮味があったらぐちゃぐちゃになっちゃうんじゃないですか?
須藤.
いや、これは楽しいでしょう。(笑)
美芽.
最後にお子さんの話を伺いたいんですが・・・お嬢さんは今おいくつでしたっけ。2才と・・・
須藤.
2才と4ヶ月ですね。
美芽.
じゃあもう・・・お話もできますよね?
須藤.
しゃべります。
美芽.
何をしゃべるんですか?何でも?2語文なんかもう出てますか?「これとって」とか「ゆいちゃんいくの」とか。
須藤.
もう、もう楽勝ですよ!!最近もう電話ごっこしてますから。「もしもし、ああ、なにちゃん?ちょっとまってね。」て渡されるんですよ。「ちょっとまってね。唯ちゃんに代わるから」「あ、もしもし、じゃあね、ばいばい」・・・やってますよホントに・・・うるさいうるさい・・・(笑)
美芽.
唯ちゃんは、お父さんがベース弾いてるところ見たことあるんですか?
須藤.
ああ、去年一度見に来たけど7月だから・・・、まだ2才になってなかったし、まだよくわかってなかったかもしれない。
美芽.
ご自宅・・・あまりベース弾かないんですか?
須藤.
ひきますよ。弾いてるときに来るけど、「なにしてるの?」ってきくんですよ。「え・・・ちょっと仕事してるから、あっちに行ってて」「・・・なにしてるの?」・・・なかなかね、解放してくれないんですよ。
美芽.
じゃあ、じゃまするというか・・・じゃれついてきちゃうんですね。(笑)唯ちゃんは何か楽器をさわったりするんですか?
須藤.
まだそこまでいってないですけど、鍵盤は好きみたいですね。僕が仕事しててマックに向かってるでしょ。ちょっと休憩しようかなと思ってると、だだだって来て。「ピアノ弾く」っていうから「はいはい」って座らせて。「バァンバァンバァン」・・・「やめてくれ・・・」って。たまに「バンバン」をマックに録ってみたりしてね。あとで聴くと、わけわからないんで、ゴミ箱に捨てちゃうんですけど。(笑)
美芽.
えーーーーもったいない・・・。「唯ちゃん何月何日」ってとっておいたらどうですか。成長していくのがわかるし、アルバム代わりに。
須藤.
いいですねえ。今度やっとこう。いいことを教わりました。
美芽.
マックの鍵盤で、打ち込み用のものを「バンバン」とやるわけですね。そしたらとっておけますよね。いつぐらいから、どんなものが出てくるか楽しみですね。
須藤.
そうですねえ。ピアノやらでようかなと、カミさんは言ってるけど。どうなんだろう。音楽教室が近所にできたみたいなんで、行かせてみようかなんてね。まあやらせてみて、本人が「飽きた」っていったらやめればいいし。
美芽.
おうちではCDは何をかけてるんですか?
須藤.
うちですか?スマップの「ダイナマイト」がかかってます。(笑)
美芽.
唯ちゃんは、スマップを聴いて・・・
須藤.
踊ってますねぇ。でもねえ、リズム感いいんですよ、なんだか。この前なんか、「シェイク」にあわせてビートに合わせて「前に4歩、後ろに4歩」みたいな踊りをしてたんです。ぜんぜん教えてないのに。
美芽.
唯ちゃんのお気に入りの曲は何ですか?
須藤.
今はダイナマイトですよ。この前は「シェイク、シェイク」っていってたのがセミナーから帰ってきたら「ダイナマイト」って言えるようになってたんです。「何だおまえ・・・」みたいな。
美芽.
楽しいですねぇ、お子さんがいると・・・!!
須藤.
楽しいですけどねえ、ドライブに行くとずーっとかけなきゃいけないんですよ。「ダイナマイト」なら「ダイナマイト」、「シェイク」なら「シェイク」をずーーーっとかけなきゃいけないから・・・煮つまって来ちゃう・・・
美芽.
そういうときに、須藤さんの好きなフュージョンを聴いたりすると、どうなるんですか?唯ちゃんはご機嫌斜めになったりします?
須藤.
いや、怒りはしないですけど、「ダイナマイト聴く。」って言われますよね。「ちょっとパパこれ聴きたいんだけど・・」「ダイナマイト!!」「はいはいはいはい・・・わかったわかった・・・」みたいな。
美芽.
じゃあ、スマップはすごく聴いてます?
須藤.
そう、すごく聴いてますね。何しろねえ、「シェイク」からなんだな。
美芽.
スマップは、バックの人たちがものすごいじゃないですか?私、009とか聴きましたけど。
須藤.
すごいらしいですよね。アルバムも聴いてみようかなと思ってるんですが・・・どうせ、買ってきても俺ゆっくり聴けないし・・・
美芽.
今のフュージョンのお気に入りは何ですか?
須藤.
間違いなくマーカスのライブ盤です!2曲めの「パンサー」、あれしか聴いてないですね!!そればっかり。今日はハイラムブロックの新譜と、イエッロージャケッツの新譜を買って帰ろうかと思ってます。ハイラムブロックは好きなんですよ。「ウェイ・クール」とかあのへん好きなんですけど、あのあと歌うたいに走りやがったでしょ、あの男。そのへんはちょっと好きじゃないんだけど。
美芽.
ハイラムがお好きなんですか。ディーン・ブラウンとかはどうですか?
須藤.
ああ・・・みてくれが・・・好きじゃないです。ライブの見栄えが暑苦しいからイヤだ。
美芽.
見栄えの暑苦しい人は苦手なんですか。
須藤.
うん。でもハイラムも暑苦しいですね。でもハイラムは許すってかんじ。ディーン・ブラウンは、無駄に騒ぐから・・・俺、自分のこと言ってるみたいですねえ。俺みたいなんですけど。
美芽.
いやいや、須藤さんの「腕振り」がないと。(「TRUTH」のサビでは、須藤さんは開放弦のDの時だけ左手で腕をぐいぐい振り上げるのがライブの通例になっている。)立川でお待ちしてますから。
須藤.
あれもねえ・・・。あの曲やらないですむようになるといいですねえ、ライブでも。
美芽.
あの役割をする、別の曲が・・・みたいな?
須藤.
「TRUTH」の前は「MAGIC」って曲がヒット曲としてあって、あれは81年のアルバムに入ってたから「TRUTH」が出るまでたかだか5年とかそのくらいなんですよ。それまでは「MAGIC」やらないと終わらない、みたいな。「TRUTH」はもう10年ぐらいたってますからね。うちらとしては、そろそろ別の曲が・・・みたいな気もしてるんですが。
美芽.
大ヒット曲で、それやればみんな納得して帰ってくれる。・・・みたいなのが別の曲で出るといいなあ、と?
須藤.
そうですね。・・・でも、やってるうちはやるでしょう。お客さんがついてこなくなったらやめますけど。
美芽.
私もね、結構最近腕振るの疲れるようになってしまって。(苦笑)大学1年のころはいくらでも何時間でもできたのに・・・横浜ランドマークホール行こうかな・・・でもオールスタンディングはきついなあ・・・みたいな。でも須藤さんはずっと立ってるのに・・・とは思うんですけどね。
須藤.
ああ、でも楽器弾いてると苦じゃないんですよ。僕もスタンディングのライブ行くと、座りたい・・・腰痛い・・・、ってなりますけど。自分がライブで立って弾いてるのは、楽器を弾くってことに集中してるから。好きなことやってると、時間がたつのが短いじゃないですか。ガーーーッと入り込んでひとくぎりついて、時計見たら「ああこんなに経ってた」ってことは打ち込みやってたり、楽器弾いてたりすると結構ありますね。そういう意味では立ってる時間の感じ方が短いんですよ。
美芽.
MCのときは、どうなんですか?
須藤.
あれはあれで人前でしゃべる時には違うテンションかかるから、それはそれで・・・あれもいろいろあるんですよ。見てる方はたぶん退屈なんだろうな、とか・・・MCが長いから演奏もっとやれとかね。
美芽.
でも、もっとMC長くしてっていう人もいるんじゃないですか?全然違うことを同時に望まれても、困りますよね。
須藤.
そう。もう、知らない。(笑)
美芽.
でも、須藤さんにつられてメンバーがみんな、よく話すようになってきたんじゃないですか?
須藤.
いや、僕につられてるんじゃなくて、みんなしゃべるの好きなんですよ。実は。「僕はしゃべれない」みたいな顔して僕におしつけて。ひきょうですよねえ。(笑)
美芽.
でも、須藤さんがマイク持ってると安心しますよ。
須藤.
でもね、「なんで(MCの中心が)須藤さんになったんですか」って人もいるし。なんで和泉さんじゃなくなっちゃうの、って人もいるし。・・・いいんですよ、1000人見に来る人がいたら1000通り意見があるんだし。
美芽.
須藤さんは学校の先生になろうと思ったぐらいだから、人前でしゃべるのはそんなに苦手とか、そういうタイプじゃないんじゃないですか?学校の先生なんて、人前でおしゃべりするのが仕事なわけだし。
須藤.
ああ・・・、まあねえ。・・・セミナーのときもそうだったんですけど、終わってから一人づつ前に出てしゃべるんですよ。台があって、みんなが俺のほう見ててしゃべるのは・・・苦手かもしんない、俺。あれはねえ、ダメです。基本的には。
美芽.
今後の活動ですけど、前回のソロライブ行けなくて、私「今度行きたい」と思ってるので、是非またお願いします。
須藤.
今度はいつやるかわかりません。(笑)
美芽.
セッションなんかも楽しみにしてますね。今度の日曜「JAM FOR JOY」(音楽ライターの熊谷美広氏企画のセッション)に出られるんですよね?
須藤.
そう、・・・・練習しなくちゃ・・・。テープ聴いてないや・・・。資料来たの昨日ですからねえ・・。昨日っていうかセミナー帰ったら届いてたから。今日ぐらいから復活してやらないと。聴きに来て下さいね。
美芽.
はい!!では、また今後もインタビューにうかがわせてくださいね。
須藤.
はい。こんなんでよろしかったでしょうか?(笑)

インタビューを終えて.
実は私とひさえの大学の先輩である須藤さん。「学芸大のノリ」全開でとっても楽しくインタビューさせていただきました。ひさえ語録に、「須藤さんって世に出てない人とセッションしたいなんていうあたりがモロに先生の思考回路だよね。」というのがあるんですが、それが「音を最優先」に変質してきたあたり、須藤さんの音楽を考える上でのターニングポイントなのかもしれません。最近の須藤さんのプレイの変化を一言で語ると非常に安定感が増してきた印象があります。ベーシストが手とはぜんぜん違う方向を見ながら弾くのは珍しいことではない。でも、須藤さんのプレイ中の顔だけを見たら他のメンバーや客席に気持ちが向いているように見えて、全然ベースを弾いてるような印象を受けないことが結構あるんです。それでいて音は猛烈に安定していて、本当に安心して聴ける。是方さんとのセッション「KORENANOS」で間近に聴いたときにもそれは強く感じました。サービス精神全開、元気いっぱいなのがステージの須藤さんのイメージですが、それだけではない。どこまでも熱心に、そして謙虚に自分を振り返り、見つめ、悩み続けてここまでミュージシャンとしてやってこられたことがお話ししていてひしひしと伝わってきました。そうそう、須藤さんは「すどう」ではなく「すとう」さんとお読みするんです。だからT-スクェアのメンバーには「すとちゃん」と呼ばれています。


Special thanks to Village-A
Interviewed by Mime
Photograph by Hisae
Copyright 1997 CyberFusion