Steve Khan Interview


スティーブ・カーンは70年代にはブレッカー・ブラザーズ、ニューヨーク・オールスターズなどに参加するとともに「ブルーマン」など当時のNYフュージョン色の濃い自己のリーダーアルバムを3枚発表、80年代にはアンソニー・ジャクソン(bass)、 スティーブ・ジョーダン(drums)、マノロ・バドレーナ(perc.)を率いたアイウィットネスで独自のギターフュージョンを確立、90年代にはいってからは4ビート色の強いギター・アルバムを発表してきている。また98年にはキーボード奏者でありアレンジャーのロブ・マウンジーとの10年ぶりの共作アルバムを発表している。今回はスティーブがCyberFusionよりの質問にE-mailで答えれくれるという形式でインタビューが実現しました。

MH (Masato Hashi@CyberFusion)
Q.1 最近「Local Color」での共演から約10年ぶりにロブ・マウンジーと「You Are Here」を発表されましたね。これはあなたのソロとはどのように違うのでしょうか?
Steve (Steve Khan)
ロブと僕は「Local Color」の続編をやろうと何年も話し合ってきたんだけれど、なかなかうまく実現しなかったんだ。それが97年になってやっと全ての状況がよくなって作品を完成させることができたんだ。多分「You Are Here」と僕のソロ・アルバムとの最大の違いはキーボードがあるかないかってことだろうね。基本的に僕は演奏したりレコーディングしたりする時はキーボードなしの方がいいんだ。でもロブとの共同製作はすごく楽しめるしこのレコーディングはアコースティック・ギターなどの僕の他の興味を探っていく特別の機会でもあったんだ。
(注:「You Are Here」の製作についてスティーブ・カーン自ら書いた「Khan/Mounsey Saga」というエッセイが彼のホームページに英文でのっています。)
MH
Q.2 「You Are Here」でパーカッションをプレイしているMarc Quinones を紹介してくれませんか?
Steve
Marc Quinonesと僕はこの数年間いろいろなプロジェクトで一緒にプレイしてきたんだ。彼と実際にプレイして友人になる前から、彼のことはコンテンポラリーなサルサの偉大なシンガーたちとの信じられないような数の作品を通じて知っていたんだ。彼が参加したレコーディングにはOscar D'Leon, Celia Cruz, Tito Puente, Gilberto Santa Rosa, Jose "El Canario" Alberto, Tito Nieves, Tony Vega, La India, Marc Anthony, Cheo Felicianoなど数えられないほどある。これらのクレジット以上に一緒にプレイすることを通じてマークは音楽のジャンルの境界を恐れたり、縛られたりすることがないということがわかったんだ。それとマークは毎夏ごとにオールマン・ブラザーズ・バンドにも参加している。彼は僕の全ての楽器の中でのフェバリット・ミュージシャンの一人なんだ。彼の才能は無限で、僕は彼がクリエイティブでタフなプレイをするところが好きなんだ。僕たちの最初の共同プロジェクトはブライアン・ウィルソンへのトリビュート・アルバム、「WOULDN'T IT BE NICE」の中の「Don't Worry Baby"(No Te Preocupes Nena")」という曲だったんだ。それから以降マークは僕のCD「GOT MY MENTAL」とBakithi Kumaloの「SAN BONAN」とうCDの中の僕が共作した重要な曲で演奏してくれている。マークはすごいノリを持っていて、彼とよい友達になれて本当に嬉しく思っているよ。
MH
Q.3 最近の他の活動について教えてください。
Steve
8月にちょうど6−7年振り日本に行ったところなんだ。少し間があきすぎたね。Tribute to Cal Tjader GroupというバンドでDave SamuelsとDave Valentinと一緒に東京と福岡のブルーノートで演奏したんだ。Cal Tjaderのことはずっと大好きで、彼の「SOUL BURST」は僕の人生を変えたね。あのLPでのチック・コリアの演奏は僕のギター・スタイル、特に和声的に大きな影響を与えたんだ。ライブや先のレコーディングへの準備に加えて、僕の98年の最大の活動のひとつは、はじめてのコンピューターを手に入れたことだ。それで基礎を勉強するとともに、友人やEメールを通じてテキサス州ヒューストンのすばらしいミュージシャンでありホームページ製作者であるBlaine Fallisと知り合うことになった。そしてこの数ヶ月間にわたって僕らは僕のホームページの基本的なレイアウトを最終調整をしてきたんだ。僕はBlaineと知り合えたとても幸運だったと思ってるよ。というのはホームページを通じての世界中からのフィードバックはすばらしいんだ。僕らはあと2つの重要なページをちょうど完成させ、基本的なデザインを完成させたところだ。もうすぐできるのは、僕の16のレコーディングの回想を書いたディスコグラフィーなんだ。
MH
Q.4 私が最初にあなたのギターを聞いたのは78年の深町純とニューヨーク・オールスターズの日本公演の時だったのですが、この時のことを覚えていますか?
Steve
う〜ん、すごい前のことだね。あまりよくは覚えていないだけど、唯一、覚えているのはバンドがあんなに大きすぎると、音楽的には実際にはあまり楽しくなかったということだ。多分、観客はあれだけの有名なプレイヤーを一度に見られてもっと楽しかったと思うけど、僕らにとってはまるでサーカスみたいで、いい音楽の助けとなるような雰囲気ではなかったよ。 あの場合は和音楽器の数が多すぎたんだ。深町純、リチャード・ティー、マイク・マイニエリ、そして僕、これは多すぎだったし、多分それぞれの相関関係もばらばらだった。あれが音楽的に大成功だったとは思わないな。でも個人的、音楽的に親しい友人達とツアーして演奏するっていうのは常にいいものだよ。
MH
Q.5 そのNYオールスターズの頃や、あなたの最初の3枚のリーダー・アルバムの頃はあなたのギターはディストーション・サウンドでしたね。でもアイウェットネス以降、今に至るまであなたのギター・サウンドはクリーンでノン・ディストーションですが、このギター・サウンド、スタイルの変化は何か理由があるのでしょうか?
Steve
簡単に言えば、1980年頃に自分の音や、自分が他人と音楽を作っていくやり方がいやになってしまったんだ。それで一番シンプルなもの、もともと僕が最初に演奏しようと思ったものに戻ることを決心したんだ。アイウィットネスは僕が参加した中でもっとも重要なバンドで、いつもそんな風だった。自分自身を見出し、自分の音を見出すのに本当に助けになったよ。僕はこのメンバー達、アンソニー(ジャクソン)、マノロ(バドレーナ)そしてスティーブ・ジョーダンもしくはデイブ・ウェックルもしくはデニス・チェンバースたちと演奏するのが大好きだ。こんな風にプレイヤーや友人が音楽を創り出すのを助けてくれるだけじゃなくて、愛させてくれるなんて他にありえないよ。僕はすごく幸運だったと思う。ディストーションと言えば、たまにリハーサルでは派手な音を出すこともあるんだけど、そうするといつもデニス・チェンバースは僕の方を見て「なんで、ライブではそれをやらないんだ?」って言うんだ。すると僕はいつも彼の方を見て「わからないな。ただ今僕たちがやっていることに合わないような気がするんだ。」と言う。もちろん、僕が間違ってるのかもしれないけれどね。
Eyewitness at The Seventh Avenue South, NYC in '84
MH
Q.6 フォロンの「スティーブ・カーン」という題の絵についてどう思いますか? フォロンの絵の中ではどれが一番好きですか?
Steve
フォロンの「スティーブ・カーン」という題の美しいギターの水彩画でもっとも面白いのは、何年たっても彼が僕の名前の綴りを間違ってるってことだよ。彼はいつも僕の名前を「KAHN」って書くんだ。だからあの美しいポスターも僕の名前の綴りは間違っている。でも何であれ、これは信じられないような名誉だし、僕は彼があんな絵を描いていたなんて知らなかったので、とんでもない驚きだったよ。本当に僕の人生の中で最大のスリルのひとつだったね。フォロンが作ってくれた僕のジャケット・カバー全ての中で一番気に入っているのは、いまだに「THE BLUE MAN」だ。でも、彼の画集を見てみると、好きなのが沢山あってひとつだけというのは選べないよ。
MH
Q.7 お気に入りのギタリスト、作曲家は誰ですか?
Steve
これは大変難しい質問だね。最近はあまりギター音楽を聴かなくなってしまったんだけど、沢山のギタリストが好きで尊敬している。僕が昔、最も大きな影響を受けた4人のギタリストはウェス・モンゴメリー、ケニー・バレル、グラント・グリーン、ジム・ホールだ。作曲家については僕がアルバムでカバーしているスタンダード曲を見るとすぐわかると思うけれど、セロニアス・モンク、ウェイン・ショーター、オーネット・コールマン、リー・モーガン、ジョー・ヘンダーソン、ランディー・ブレッカー、ジョー・ザヴィヌル、クレア・フィッシャーなど挙げればきりがないよ。
MH
Q.8 アイウィットネスのCDとLPでは曲順が違いますが、何か意味があるのですか?
Steve
実際にLPとCDで曲順が違うのは「EYEWITNESS」だけだと思うけど、理由は簡単で「Where's Mumphrey?」の方が「Auxiliary Police」よりもグループとしての僕たちをよりよく表現していると思ったからなんだ。それでCD化の時に曲順を替えたんだ。このアルバムはいまだに僕の絶対的一番のお気に入りなんだ。若いプレイヤーにこのアルバムに影響を受けたと言われて正直驚いたよ。誰かにこういうことを言われるといつも得意な気分になってしまうよ。特にアメリカ以外の海外の人から言われるとね。
MH
Q.9 インターネットについてどう思いますか?
Steve
さっきも言ったように、ちょうど1年前はこの質問に答えることもできなかったんだ。インターネットは前向きのことをするのに大きな可能性があるよ。僕の友人は僕自身のサイトのゲストブックを見るとインターネットがどれだけ遠くの人達に到達しているかわかって凄いスリリングだ。もう世界中の人達が彼らが音楽を聞くミュージシャンと話すことができるんだ。それは凄くエキサイティングで音楽と芸術のパワーというものを感じさせてくれる。僕は何でもっと早くインターネットをはじめなかったのかと後悔しているよ。でも、これはただ僕の悪い部分の一例で、僕は何かを変えるのにすごく頑固で遅いんだ。でもこうして今はウェブサイトを持っている。これは奇跡だね。
MH
Q.10 1999年の予定を教えてください。日本に来る予定はありますか?
Steve
現在のところ99年については具体的な予定はない。Anthony Jackson, Dennis Chamber と多分Manolo,Marc Quinonesそして Bobby Allendeと新たに僕のアルバムをレコーディングしようという話しはしている最中だ。これが実現すればいいと思っているけれど、まだ決定はしていない。それとパティトッチとディジョネットとのレコーディング「GOT MY MENTAL」に対する評判がすごくよかったのでこのプロジェクトもまたやりたいなと思っている。実際セロニアス・モンクの曲のメドレー「Light Blue"/"Monk's Dream」をレコーディングしたんだけれど13分もあって長すぎてCDに入りきらなかったのでミキシングもしていないのがあるんだ。だからできればまた続編をやりたいと思っている。日本に行ってプレイするのは大好きだ。今のところ、日本に呼ばれてはいないんだけれど、是非Anthony, Dennis, and Marc Quinonesというメンバーで行きたいと思っている。どうなるかわからないけれどね。
MH
CyberFusionのインタビューに答えていただきどうもありがとうございました。


Interviewed and translated by Masato Hashi
Eywitness photo by Masato Hashi
Steve Khan photo courtesy from Steve Khan official web site
Special thank to Steve
Copyright 1998 by CyberFusion