Lee Ritenour Interview
リー・リトナー(以下LR): 前作の『トゥー・ワールド』は大ヒットというわけじゃないけど、コンスタントに売れ続けて、結果的にクラシカル・クロスオーバーのチャートに1年間も留まることになった。今も売れ続けていて、レコード会社としては成功したアルバムだった。数年前、会社から「いつになるか確約は出来ないが、もう一枚作りたいと思っているんだが、やる気はあるかね」とたずねられた。僕等に異論があるはずがなかった。オーケストラとの共演は、ビッグチャレンジであり、いわば音楽家の夢。莫大な予算が要るので、そうそう機会があるわけでもない。でもその話があってから、あっという間に月日が流れ、ようやく実現に漕ぎ着けたのが2年前。そこから制作に1年半を要した。ジェームス・テイラーやルネ・フレミング等超多忙のアーティストをゲストに招聘したので、その調整に手間取った。諦めるという選択肢もあったけど、この手の作品はタイムレスだから、あせらず機が熟すのを待とうということになった。おかげで自分たちが胸を張れる作品になった。妥協しなくてよかったよ。
―クラシカル・クロスオーバーというジャンルが確立されているのですか?
―本国ではオーケストラとコンサートを行っているのですか?
―『トゥー・ワールド』と『アンパロ』の違いは?
―なるほど。選曲にも苦労があったのでは。
―オリジナル曲の<エコー>は、このアルバムのために書き下ろしたのですか?
―お互いに特別な存在なのですね。
それからしばらくして僕は『ダンテ』というクラブに通い始めた。そこはスタジオミュージシャンのたまり場で、毎晩エキサイティングな演奏が行われていた。毎週月曜日がギターナイトで、バニー・ケッセル、ジョー・パス、レス・ポールといった憧れのプレイヤーが出演するので、欠かさずに通っていた。 話がちょっと脱線するけど、数年前にキャピトルレコードでレスにばったり会ったんだけど、彼の記憶力は普通じゃない。その頃すでに90歳になっていたと思うけど、すごい記憶力なんだよ。僕が「若い頃、お目にかかったことがあるんですよ」と言うと、「そうだったね。覚えているよ」というので、「ご冗談を」と言うと、「ダンテのマンデーナイトを見に来ていたよね。キミはそのときまだ19歳だったけど、ギタリストとしてすでに評判になっていた」というわけだよ。ぶったまげたね。ジョン・ホプキンス大学が研究対象にしているぐらい、レスの記憶力はずば抜けている。
LR: 本当だね。それでデイヴの話に戻ると、あるときリナ・ホーンのギタリストとしても活躍していたガボール・ザボのショーがキャンセルになり、ダンテのオーナーから電話がかかってきた。「突然で申し訳ないが、今夜のギターナイトだが、キミのグループで演奏できないか」と。もちろん答えは「YES」さ。ところがバンドもへったくりもない。大急ぎでメンバーをかき集めて、その場しのぎでショーを乗り切った。幸運だったのは、その晩、またまドラマーのハーヴィー・メイソンが見に来ていたんだよ。バンドのメンバーが、「すげえ、ハーヴィー・メイソンが来ているぜ」というので、「誰だよ、それ」「お前知らないのか?ハービー・ハンコックのドラマーで、<カメレオン>を作った奴だよ」って。 ショーが終わると、ハーヴィーが僕のところにやってきて、「さっきダニー・ハサウェイの曲やっていたけど、譜面あったらコピーさせてくれないか」と言うんだよ。で、僕は少しばかり緊張しながら「どうぞ」と言って差し出すと、「オレと一緒にバンドやってみる気はないか。キーボードはデイヴ・グルーシンだ」と言われた。ウソだろうって思ったよ。
―それから長い付き合いが始まったのですね。
―今回、ベースのエイブラハム・ラボリエルも一緒ですが、彼との付き合いもかなり古いですよね。
そうそう。エイブの最初の印象も強烈だったな。あれはヘンリー・マンシーニのレコーディングだった。マンシーニがスタジオに入ってきて、こういうわけだよ。「みんなにオハイオ州クリーヴランドからやってきた、ベースのエイブラハムを紹介する」と。エイブはメキシコ出身なんだけど、奥さんの仕事の関係でクリーヴランドに住んでいた。クリーヴランド出身のマンシーニが気に入って、地元でよく使っていたらしいんだな。 入り口の方に目をやると、ポンチョを着て、メキシコのださいゴヤ・ベースを抱えた、奇妙な風貌の男が立っているじゃないか。こいつ、いったい何もの?って感じだった。
それは月曜の朝10時ぐらいの出来事で、みんなブルーマンデーで少々退屈していた。レコーディングが始まった。1曲目の最初のソロは、エイブラハムだった。その男は自分のソロの番になると、やおらイスから立ち上がり、ぴょんぴょん飛び跳ねながら全身でプレイするわけだよ。開いた口がふさがらないってこういうことを言うのだろうね。眠気が一度で吹き飛んだよ(笑)。それがきっかけでエイブと仲良くなり、FRIENDSHIPをスタートさせたんだ。
―グルーシンにしてもラボリエルにしても、今も友情が続いているわけですね。
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Interview by Yumi Kudo
Photo by Ryo Shinoda & Takuo Sato
取材協力 : Universal Music
ライブ写真提供 : Blue Note Tokyo
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