Paul Taylor Interview
コロラド州デンバー出身のPaul Taylorは、7歳の時にサックスを初めて手に取った。そして、高校時代にはアマチュアバンドで演奏活動を活発化、さらにネバダ州立大学ラスベガス校で音楽を専攻した。やがてKeiko MatsuiやJeff Lorberといった大御所達と出会った後ソロ・デビューを果たし、Rippingtonsへの参加の傍らソロ活動を本格化させた。そして「絹のごとく」と形容される彼独特のサウンドで幅広い支持を得、安定した人気の現在に至る――そんなPaulの音楽歴を探るべく、南カリフォルニアの澄み切った青空の下Newport Beachへ急行したのが5月のとある週末。恒例のNewport Beach Jazz Festivalに出演中の彼を、30度を超える真夏の様相の屋外会場でキャッチした。さて、彼の音楽への情熱とその独特のスタイルの秘密にどこまで迫れるのか・・・文字通り、かなりホットなインタビューの始まりだ。
“まい”真由美(以下M):
もともと、どんなことからサックスに興味を持ったのですか?
M:
では、自分でサックスをやろうって決めたわけじゃなくて、どちらかというとサックスを「あてがわれた」って感じだったのですね。
M:
それでそのままその楽器をやり続けたってことですか!では、どのあたりで「これが僕の人生を変える楽器だ!」って思うようになったのですか?
M:
その高校時代にはどんな音楽を演奏していたのですか?
その高校時代に、人生の大きな節目になったことがあるんだけど、それが高校の友人達と学外の連中が集まって組んだバンドだったんだ。ファンクやR&B、それにジャズが混ざったバンドで、本当にいろいろな音楽を演奏したんだ。メンバーも、人種・性別に全く関係ない、まさによりどりみどりのバンドでね。そんなメンバー達と街でライブ活動をするようになって、ようやく自分の中で強く思うようになったんだ。「僕はサックスを吹くのがすごく好きだ。これが僕の運命の道かもしれない」ってね。
M:
そこからブレイクするまでに、いろいろパワフルなアーティスト達との出会いがあったようですね。名前を挙げると、Keiko Matsuiのバンドに参加されてますし、Jeff Lorberとも共演されてますし。どちらも素晴らしいキーボード奏者ですが、彼らとの演奏経験がどのようにあなたの音楽に影響を及ぼしたと思いますか?
スタイル的にいうと、Jeffの音楽はファンキーでジャジーだよね。僕はもともと彼のFusionバンドの大ファンだったし。Keikoの音楽はそれとは対照的なイメージ・・・より親密な音楽っていったような印象かもしれない。だから僕としては、Jeffのところで学んだものを生かしつつ、Keikoのところでも音楽的感受性みたいなものを学んだ気がするんだ。
M:
それから日本のファンにもお馴染みのRippingtonsへの参加となるわけですね?
でも、本当に人生って分からないものだよね。その数年後には、ステレオ売り場で聴いて感動したバンドのメンバーになって演奏することになるんだから。
M:
実際、Rippingtonsのメンバーになるという話はどのように来たのですか?
M:
「Pleasure Seeker」ですよね?
僕としては、本当に夢がかなったって感じだ。もちろん、僕にとって一番大切なのは、僕のソロとしてのキャリアなんだけど、時間が許す限りでRippingtonsのようなパワフルなバンドと演奏できるのは素晴らしいことだと思う。しかも、RippingtonsではEWIを演奏する絶好の機会も得られたしね。Rippingtonsで演奏することで、本当にいろいろなことが学べたと思うんだ。ある意味、メンバーとしてアンサンブルに長けていることが必須であると同時に、ソロ奏者としても確立していなければならないから。
M:
個人的には、「Live Across America」(2002) の中の、“She Likes to Watch”でのあなたのソロが最高に気に入っています。印象的なサウンドとあなたらしいフレーズ、まさに「Paul Taylor節」って感じです。
M:
Rippingtonsといえば、本当にいろいろなサックス奏者が起用されてますよね、Kenny Gに始まりBrandon Fields、Jeff KashiwaにEric Marienthal。その意味で、Rippingtonsの過去のアルバムを聴いてみると、一粒で数度おいしい、ってところでしょうか。ところで、そんな中でもあなたのスタイルはまたすごくユニークだと思うのですが、ご自分のサウンドを確立するまでにどのようなサックス奏者の音楽を聴いていたのですか?
M:
Sanbornといえば、とってもメタリック(金属的な)音って印象が強いですよね。
M:
David Sanbornの名前が出たのはすごく面白いと思うんですよね。というのも、音楽評論家の多くが、あなたのサックスを「絹のような」といった表現を付けるくらいセクシーでロマンチックと表現しているのに比べると、Sanbornのサウンドは感情豊かとはいえ正反対の印象を受けます。このあたりはどうお考えですか?
M:
なるほど。そして、そんなふうに出来上がったあなたのスタイルが、ソロアルバムで存分に楽しめるわけですね。さて、そのソロアルバムに話を戻しますが、あなたの最新作「Ladies’ Choice」でまず気が付くのが、魅力的なヴォーカル曲の存在なのですが。
M:
Rippingtonsだと、毎回ファンの間で喧々諤々となるのがアルバムの中のヴォーカルの存在なんですが、あなたのファンに関して言うと、ヴォーカルとあなたのシルキーな音作りのコンビネーションは比較的好意的に受け入れられている印象ですね。
M:
アルバム毎に全体として変化はある・・・しかし、あなたのシルキーな音作りとセクシーなフレーズは一貫して存在するってことですよね。
M:
最後に、これからの予定をお聞かせください。
M:
Barry (Eastmond)やRex(Rideout)といったお馴染みの方々も加わって、でしょうか?
M:
それは楽しみですね!一ファンとしてぜひ期待しています。今回は本当にありがとうございました!
今回、Norman Brown’s Summer Stormの一員としてNorman Brown、Chante MooreそしてAlex Bugnonと共演したPaul。その出演直前に行われたインタビューで、リラックスし笑顔を絶やさず、そして実に情熱的に音楽について語ってくれた。このインタビューの間、バックにはEuge Grooveのサックスが響き渡り、青空に届きそうな椰子の木の葉がわずかながら涼しげな陰を落とす。スムースジャズ・アーティストのインタビューにはもってこいの環境だ。インタビュー終了後、いそいそと愛器の手入れに向かい演奏準備に入ったPaulは、ステージ上でのNormanとの息もぴったり、生き生きと最新作“Ladies’ Choice”からのお馴染みの曲を演奏していた。もちろん会場の観客達も体全体でリズムをとりながら大歓声をあげる。そんな、観客に情熱的なエネルギーを運ぶ気持ちのいいサウンドとノリが、まさに「Paul Taylor節」と言えるのではないだろうか。
さて、「絹のごとく」と評される独特の音とリズミックでセクシーな曲調が定番のPaul Taylorは、Barry EastmondやRex Rideoutといったベテラン・プロデューサー達の影響を受けつつも、着実に自分らしい音楽を発展させてきている。その第8作目となる次回作は、いよいよPaul Taylorプロデュース作となるのか。そんな期待に胸を膨らませつつ、今年の夏はぜひ「Paul Taylor節」をじっくり楽しんでいただきたいところだ。(Mayumi“Mai”Hoshino)
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Interview and photos by Mayumi“Mai”Hoshino
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