追悼特集:マイケル・ブレッカー
Steve Khan(スティーブ・カーン)




Steve Khan(スティーブ・カーン)
Brecker Brothers Bandのギタリスト
「Don't Stop The Music」,「Back To Back」に参加
リーダー・アルバム「Tightrope」,「The Blue Man」,「Arrows」,「Crossings」にマイケル参加
「Blue Montreux」,「New York Allstars Live」でも共演
www.stevekhan.com


彼を知るものにとって、幸運にも彼の友人であったものにとって、皆が恐れていた日がやってきてしまった。そして1月13日にマイケル・ブレッカーが帰らぬ人となったことを知った。彼は白血病との勇敢な命がけの闘いについに敗れてしまったのだ。

70年代の初めに彼がニューヨークに移ってきてすぐに彼の演奏を初めて聴いて以来、彼の演奏と音楽が自分にとってどんなに意味をもっていたかを語るのは簡単だろう。でもそれはマイケルが心を動かしてきた多くの人たちのストーリーなのだ。サックス奏者として、ミュージシャンとして彼は真のマスターだった。そして全てのマスターがそうであるように、その偉大さは彼を苦しめもしたし、常に努力しても満足することはなかった。しかしながら、マイケルほどその技術を磨くのに懸命に努力する人はみたことがない。そしてその努力の結果は常に他の人たちにとっていつも明白だった。

彼は友人としてもバンド仲間としても素晴らしかった。彼の演奏と音楽についての断固たる真剣さに対して、あまり知られていないことは彼が信じられないほどのユーモアのセンスがあったということだ。彼は本当におかしかった!!そして彼は凄い冗談を実践するのだった。初期のブレッカー・ブラザーズの頃、ステージに上がって1曲目で、床においたエフェクターのペダルを見てから踏み込むと、突然とんでもない音がでてくるということが何度となくあった。もちろん、ステージの前にマイクがステージに忍び込んで全部のエフェクター・ペダルのつまみを変えてしまっていたのだ。いや、彼を殺してやりたいと思ったよ。それが何ヶ月も続いたあと、小さな色のついたドットをエフェクターに付けておくことを思いついた。そうすればセッティングを覚えておけるからね。それは今でもやり続けていることなんだ!!

彼の豊かなユーモアのセンスのもうひとつの例は、皆と分かち合おうと思って選んだ上の写真だ。これは昔のB.J.トーマスのアルバムの内ジャケットに使われたもので、全てのプレイヤーと制作スタッフが子供の頃の写真を提出してくれと頼まれたものなんだ。それがこともあろうに、マイケルは自分の中学の安全パトロール隊のときの写真を出したんだ。信じられるかい?

そしてもしマイケルに捧げた素晴らしい写真を見て、感動したければ、ピーター・アースキンのサイトを訪れてみるといい。ピーターがそこで載せている写真は言葉では表わすことことができない全て、特に2人の驚くべき兄弟の間の絆と愛を真に捉えている。

マイケルは本当におもしろいアマチュア漫画家でもあった。時にはMADマガジンのドン・マーティンのようなスタイルで書いていた。レコーディングの合間に時々ある永遠に続くような暇なときに、マイケルはコンソールのところに座って、そこにある書くことができるものになら何にでも漫画を描きつけていた。多くはとても機知に富んでいた。彼が僕のLP「Tightrope」のジャケットに、いたるところに醜いものが飛んでいる中を僕が綱渡り(Tightrope)をして歩いているのを描いた漫画を覚えている。もちろん他にもそんな漫画たくさんあったのだけど、ここで語るのは適切でないようなネタだった。

マイケルはバスケット・ボールのジャンプ・ショットも凄かった。80年代に健康的なライフ・スタイルに戻ってきたある時期に、僕たちはロウワー・マンハッタンにあるマクバーニーYMCAで、よく一緒にちょっと時間を見つけてはバスケのシュートをしていたんだ。彼のフォームとタッチは素晴らしかった。彼がもっとコート上で攻撃的な性格だったら、ちょっとした選手になれたのではと思う。

何故だかわからないのだけど、亡くなる数週間前にマイケルと僕はEメールのやり取りを再開したんだ。その会話は暖かく、素晴らしいものだった。彼は僕の息子、ヒースのことを気にかけてくれて、ある思いを分かち合ったあと、マイケルは大した繊細さと気遣いを持って返事を書いてくれたんだ。それは35年も続いている彼との友情の深さを感じさせてくれて、素晴らしい気持ちになった。

他のみんなと同様に彼の演奏、彼の芸術的才能を忘れることはないし、彼の友情、彼の偉大な知性、ユーモアのセンスを忘れることはないだろう。彼は偉大な、偉大なアーティストだった。そして彼の作品は彼の信じられないような作品自体を通して生き続けるだろう。またそれとともに彼が音楽的な感動を与えてきた全ての人たちを通しても生き続けるだろう。その数は想像することもできない。

彼は人生の最期に向かって偉大な決意と威厳を持って恐ろしい戦いに立ち向かい、愛する妻、スーザンと2人の愛する子供たち、ジェシカとサムと少しでも一緒に長く一緒にいれるように努めてきた。

私の心、思いそして祈りを皆さんに捧げます。そしてもちろん、彼の愛する兄、ランディー、姉、エミリーにも、私の愛と同じ思いを捧げます。安らかに眠ってください、マイケル。あなたは全てにおいて、インスピレーションの源でした。神のお恵みがありますように。

Steve Khan

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Translated by Masato Hashi
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