追悼特集:マイケル・ブレッカー
Chuck Loeb(チャック・ローブ)




Chuck Loeb(チャック・ローブ)
Steps Aheadギタリスト。「Magnetic」、1985年の来日公演に参加
リーダー・アルバム「Life Colors」,「The Music Inside」にマイケル参加
夫人でヴォーカリストのCarmen Cuestaの最新作「You Still Don't Me」は闘病生活中のマイケルの数少ない録音
www.chuckloeb.com


マイケル・ブレッカー − ザ・スタンダード
(スタンダード − 模範として受け入れられている資質もしくは優秀さのレベル、もしくはそれによって技能が評価されるもの。)

初めてマイケル・ブレッカーの演奏を耳にしたとき、根本的な転換が訪れた。音楽を即興するということにおける良質で卓越した新しいスタンダードというべきものが −それはほとんど実現不可能なものであるが− 確立されたのだ。僕がマイケルの演奏をはじめて聴いたとき、既に多くの大好きなミュージシャン達がいたのだが、彼はその演奏の領域の幅を広げてくれた。

彼の完璧で高度な技術がゆえに、多くの音楽形態をクロスオーバーする演奏を可能にさせたのだと思う。 
彼はジェームス・テイラーのポップソングからハル・ギャルパーの10フィートもの深さのコードチェンジのある作品に至るまで、貢献をしていた。彼の技術的能力は伝説的なものだが、それによって彼の繊細な音楽性が曇ることもなかったし、彼の華やかで豊かなサウンドが犠牲になることもなかった。
そうした彼の特徴は、努力し達成したい壮大な目標であった。そして、初めて彼の演奏を聴いてから30年たった今でも、その目標に向かって僕を掻き立て続けてくれる。

後に、僕が幸運にも彼と一緒に演奏する事ができ、さらに友達と呼べるまでになった時、そのスタンダードは単なる音楽といったものを超える存在となった。つまり彼は人間としてやさしく、楽しく、寛大で、そして謙虚であった。それがゆえに、彼は常に世界中から演奏の依頼があり、にも関わらず僕達がお願いするどんなプロジェクトにも時間を割いてくれたのだった。

今思えば、僕らにとって去年の春は本当に意味深いものとなってしまった。彼は死の病と戦っている最中に、カーメンの新しいCD「You Still Don't Me」のレコーディングに時間をさいてくれたのだ。その時彼が演奏してくれたソロパートはいつもの通り完璧だった。

マイケルはいなくなってしまった。けれど、彼が残したスタンダードは永遠のものとなるだろう。

スーザン、ジェシカ、サム、ランディー そしてご親戚一同にこころからお悔やみ申し上げます。
マイク、僕らは君を愛し、君がいなくなってしまったことを本当に悔やみ、そして心から感謝している。

Chuck Loeb & Carmen Cuesta




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Translated by Yumi Hashi
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