Dave Kochanski Interview

Dave Kochanskiという名前を聞いてピンと来る人は、最近のSmooth/Contemporary Jazzをかなりつっこんで聴いている人ではないだろうか。

キーボード奏者として彼の名前が初めてCDのクレジットに現れたのは、多分1995年発売のRippingtonsのアルバム「Brave New World」だったと思う。同じ年、Rippington仲間であるサックス奏者 Jeff Kashiwaの初のソロアルバム「Remember Catalina」にもキーボード奏者兼シンセサイザープログラマーとして登場、その後もRuss Freeman&The Rippingtonsの一員−Rippington−として「Black Diamond」(1997年発売)、「Topaz」(1999年発売)に顔を出した。「Topaz」ツアー後Rippingtonsを脱退、そして先に脱退し独自の音楽を追求し始めたJeff Kashiwaと合流し、彼のソロアルバムで活躍することになる。「Walkamile」(1997年発売)、「Another Door Opens」(2000年発売)、それに最新作「Simple Truth」(2002年発売)には、キーボード奏者・シンセサイザープログラマーとして だけではなく準プロデューサーとして名前を連ね、数々の新人アーティストがしのぎを削るSmooth Jazz界において、着実に歩を進めるアーティストの一人と言えよう。

2002年に入って、KochanskiはBrian BrombergやWarren Hillのアルバムにも登場し、最近はChaka KahnやGeorge Dukeのライブにも顔を出すようになった。一見「地味」だがかなりの実力派、そんな彼の一番の強みは実は意外と知られていない「作曲能力」にあると言える。自作のデモテープがRippingtons参加のきっかけだったというだけあって、彼の作る曲はひたすら気持ちいいキャッチーなメロディで、一度聴くと耳に残る印象的な曲が多い。Jeff Kashiwaの前作「Another Door Opens」の1曲目"Hyde Park(The Ah ooh Song)"が、競争激しいSmooth Jazz局で屈指のヘビーローテーションを記録したことは記憶に新しい。

そんなDave Kochanskiにインタビューを申し込んだのは、Jeff KashiwaがDan Siegel(keys)、Richard Smith(g)と行ったLAでのライブ会場だった。ハリウッド通りの角にあるGarden Of Edenで行われたSmooth Jazz局主催の特別ライブは、思い思いに踊る観客でごった返しており、同じ日にCatalina's Bar&Grillで行われたLee Ritenourの静かな雰囲気のライブとは全く対照的だったと言える。Jeffが選んだレパートリーには、もちろんDaveの名作「Hyde Park」の他、最新作「Simple Truth」のDaveの名作、最初のシングルカットとなった「3−Day weekend」や「Simple Truth」が含まれており、観客は盛り上がらずにはいられなかっただろう。そんな観客を夢中にさせた曲作りの神技とはいかなるものなのか。じわじわと実力をつけて表舞台に上がってきたKochanskiの本音を、ぜひこのインタビューで垣間見てもらいたい。


まい@CyberFusion (以下まい)
いつ頃から音楽を始めたのですか?

Dave Davechanski (以下Dave)
僕は生まれてこのかたずっと音楽を演り続けてるって感じだね。僕が3歳の頃、母が教えてくれて、そのすぐ後からピアノのレッスンを始めて、それがほぼ大学まで続いたんだ。そういう音楽のトレーニングは、僕が生まれたウィスコンシン州で受けてたんだよ。

まい
特に影響を受けたミュージシャンはいますか?また、子供の頃はどんな音楽を聴いていましたか?

Dave
もちろん、大好きで子供の頃に真似しようとしたミュージシャンはいっぱいいるよ。名前をあげるとすると、George Duke(ジョージ・デューク)に Bill Evans(ビル・エヴァンs), Jeff Lorber(ジェフ・ローバー)、 あと Russell Ferrante (ラッセル・フェランテ)だね。もちろん、それ以外にももっといるけど、今ここで特に名前をあげた人達は、僕の音楽観にものすごいインパクトを与えてくれた人達なんだ。面白いことに、こうやって名前をあげた僕のあこがれのミュージシャン達は、今や僕は「友人」と呼んで、よく一緒に演奏してるってことなんだ。何回か、彼らが僕にとってどれだけ大切な人達か伝えようって思ったことがあるけど、なかなか・・・「あなたがいたからこそ、今の僕が・・・」ってことは、誰に言うにしても難しいね。だって、大抵彼らは、すごく謙遜してて、控えめなんだもの(笑)。そうだな、今の僕の人生においては、George Dukeが一番インスピレーションを与えてくれる人物でありミュージシャンでだと言えるね。彼と一緒に演りながら、僕はものすごく学んだし、それは音楽に限ったことでもないんだ。言うなれば、彼は僕のまさに理想のモデルってことなんだ。

まい
どうやってRippingtonsに参加することになったのですか?また、なぜグループを脱退したのですか?

Dave
まだ僕がウィスコンシンにいる時から、僕はRussの書く音楽に惚れ込んでて、いつかRippingtonsで一緒に演れることを夢に見ながらロスへ行くことを決めたんだ。笑えるでしょう?分かってるよ(笑)。それでとにかく、自分の車に荷物を詰め込んで、新しい人生を始めるためにロスに向かったんだ。僕は、以前デモテープを渡した時の「いつかロスに移る決心をしたら電話をくれるかい?」っていうJeff(Kashiwa)の言葉を覚えててね、ロスに着いた途端にJeffに電話をしたんだ。だって、それが僕が持ってる唯一の電話番号だったから。「Jeff、覚えてるかな?」(笑)・・・で、とにかくこれがことの始まりだったってわけなんだ。

Rippingtonsを辞めたのは、Russと僕の音楽的趣向が別々の方向に向かってるって感じたからなんだ。グループを辞めることで、他のアーティストとも仕事をして、いくつか別の音楽的なアイディアも試したかったんだ。

まい
Rippingtonsの一員としてRippintonsの中で演奏するのと、ソロアーティストのDave Kochanskiとして演奏するのとでは、どんな違いがありますか?

Dave
面白い質問だね。思うに、Rippingtonsでキーボードを演奏するってことは、かなりキーボードというパートやサウンドにこだわった役割だったと思う。 Russの曲はかなり作り込まれていたから、その通りに正確に弾くってことはかなり難しいことだったしね。僕はライブでの自分の演奏が、できるだけレコーディングのバージョンに近くなるように演ってたんだ。サウンドの変化やここぞという部分についても、そういう枠の範囲に収まっていて、僕はそういう演奏の仕方を何年も続けてたんだよね。そういったトレーニングが、今僕が一緒に演っているアーティストに直接つながってるとも言える。だからそういった意味では、僕の演奏スタイルは、Rippingtons参加の前でも後でも同じだね。僕自身の本当のスタイルは、アプローチの仕方がもうちょっとシンプルで、それはRussのスタイルとは違う。思うに、僕のスタイルはJeffやGeorge(Duke)と同じような方向にあると思うんだ――ファンキーで、ちょっと控えめな感じで、ピアノやローズ(Fender Rhodes Piano)、ウーリー(Wurlizer Electric Piano)、クラビ(Clavinet)や多分オルガンみたいな音作りで、シンセで合成された音はそれほどないんだ。だけど、僕はRussの作曲スタイルは取り入れてみてるんだ。彼はどうやったらいい音楽を書けるかよく分かってる。それは間違いないよ。

Dave Kochanski & Jeff Kashiwa
まい
Jeff Kashiwaとの関係をもう少し教えていただけますか?Jeffは別のインタビューで「DaveはSoulmateだ」と語ってましたが。

Dave
そうだね、どうしてだか分からないけど、僕らは出会ったって感じだね。Jeffは僕のミュージシャンとしてのキャリアを、いろいろな方法で支えてくれて、そして今僕がこうしてあるのもJeffが僕にチャンスを与えてくれたからなんだ。唯一彼が、僕に僕自身の夢を気付かせてくれたんだよ。要は・・・これがすべてだね。Jeffは今もこれからも、僕の真の友人の一人だ。

まい
今まであなたが書いた曲の中で"Hyde Park (the 'ah, oooh' song)"(「Another Door Opens」/ Jeff Kashiwa)が最もヒットした曲だと思うのですが、それ以前にもあなたは、Rippingtonsの最新アルバム「Live Across America」に収録された"Road Warriors"をRuss Freemanとの共作で書いていますよね。あなた自身は、ご自分の音楽の特徴をどう思われますか?なぜあなたの曲がこれほどヒットすると思いますか("Hyde Park (the 'ah, oooh' song)"あなたは、ご自分の音楽が今の"Smooth Jazz"の流れに合ったと思いますか?

Dave
そうだね。なぜみんなが好きになってくれるかは、僕の書く曲にはいつも耳に残るメロディと面白いコード進行があるからだと思うよ。まさにそれに尽きるね。つまり、僕は自分が聴きたいと思う曲を書くこと以外に、いわゆる名曲作りの方程式なんて全く持ってないんだ。ラッキーなことに、僕が好きな曲は、みんなも好きになってくれてるみたいだ。だから、僕の音楽は、すごくよく昨今の音楽の流れに乗ってると思う。言うなれば、僕のメロディとアレンジのセンスが、僕の強みってことなんだ。

まい
Jeffのアルバム「Simple Truth」では、Jeffとの共作が4曲、独作が1曲ありますね。Jeffと一緒に曲を書く時は、どのようにして協力し合っているのですか?また、自分一人で曲を書く時は、どのように作曲しているのですか――例えば、まずは頭に浮かぶのは何ですか、メロディ、コード進行ですか?それと、作曲する時は、どの楽器を使うのですか?

Dave
Jeffのプロジェクトでは、Jeffがまず僕に連絡してきて何かアイディアがないか聞いてくるね。もし僕に何かアイディアがあれば、それをJeffに送って、そこで彼がメロディを思い付いたり、あとは僕が曲全体を書き上げたりするね。大抵、そうやって共作してるよ。一緒に演るアーティストと、じっくり腰を落ち着けて一から曲を書き起こすってことはまずないなあ。大抵僕が曲全体を書き上げて、そしてアーティストに自由に音を加えてもらうんだ。だから、僕が曲を渡す時は、すでにそれはもう出来上がった形で、ほとんどの場合もう一度演り直す必要はないな。例えば、僕がプログラムしたドラムやパーカッションをライブの演奏に置き換えるってことはあるけど、まあほとんどの場合、曲は出来上がってるね。

僕はいつもメロディとコードが一緒にまず浮かんでくる。それで、自分の好きなアイディアが浮かんでくるまで自分でそのメロディを歌いながらコードを演奏してみるんだ。それにどんどん付け加えていくわけだ。

僕はいつもキーボードを使って作曲していて、それとコンピューターでEMAGICのシーケンサーでレコーダーのロジック・オーディオ・プラティナムを走らせている。全てをロジックの中でやってしまうんだ。ほとんどロジックのexs24というサンプラーや他の仮想楽器だけを使っている。音源をラックに山積みにしていた時代は過去のものだね。最近はほとんどの僕のサウンドはコンピューターからでてきて、その中でレコーディングされているよ。

まい
観客の前で演奏するのとスタジオで作曲しているのと、どちらが好きですか?

Dave
それはその演奏によるなあ。僕は、一度メロディを弾いたらその後延々と20分もそれぞれのパートがソロを演るような「ジャム・バンド」は好きじゃない。もし、僕がそんな感じのことをやることになるなら、もちろん僕は家にいた方がいいよ(笑)。あと、例えばリードしている演奏者があまりにメロディに長々絡み過ぎて一体どの曲を弾いてるのか全然分からない場合なんかも、「いい加減にしてくれ〜!」って感じだね。でも、もしバンドがすごくノっていて、観客ものめり込んでるようだったら、もちろん僕もそれにノるし、スタジオにいるよりはステージにいる方がいいな。とにかく、本当にその演奏次第だね。

まい
今、どのようなプロジェクトに参加していますか?また、これからのツアーやレコーディングの予定などを教えていただけますか?

Dave
今ちょうどEric Marienthal(エリック・マリエンサル)の新しいアルバムのために2曲書き上げたところ。彼は、先週その2曲のレコーディングを終えたところで、ものすごくいい音に仕上がってるよ。それから1曲、Brian Simpson(ブライアン・シンプソン:Dave Kozのバンドのキーボード・プレーヤー)のために曲を書いて、今はギタリストのRichard Smith(リチャード・スミス)の曲を演ってるところ。彼の新しいレーベル、Native Languageからの新しいプロジェクトは、心待ちにしてるんだ。それから、サックス・プレーヤーのEverette Harp(エヴェレット・ハープ)とも曲を書いてる。彼は今新しいアルバムを作ってて、一緒に曲を書かないかって連絡をもらったんだよ。すごくいい曲ができて、最終の完成盤を聴くのが楽しみなんだ。

あとは、ツアーも好調に回ってるよ。今はGeorge Duke、Jeff KashiwaやEverette Harpの他に、Chaka Khanとも一緒にツアーに出ているんだ。言って見れば、調子良くマイルをためまくってるってわけだ。

まい
あなたはJeffと一緒に彼のアルバム「Simple Truth」に"3−day weekend"という曲を書いていますが、もしライブやレコーディングなどのない"3−day weekend"(3連休の週末)があったらどうしますか?
(同じ質問に対してChuck Loeb(チャック・ローブ)は「寝る」、Jeffは「家の仕事をいろいろやる」との答だった。)

Dave
あはは・・・ふ〜む、難しい質問だ。僕だったら、自分の好きな人と一緒に どこかに行って、何か特別なことをするよ。3日間っていったら、いろいろと素敵なことが起こるかもしれないからね。

まい
どんな時に、特にミュージシャンになって幸せだと感じますか?


Dave
やあ、今度は簡単だ。答はちょっとありきたりに聞えるかもしれないけど、僕は心の底から信じてることなんだ・・・もし、僕が、誰か他の人の心を感動させるような音楽を書いて、もしその人が僕にどれだけ感動したかってことを伝えてくれたら・・・その時こそ僕は自分のやってることに達成感を感じるんだ。それが、アイディアから始まった創作のプロセスにつながりそしてまた初めに戻ってくる・・・曲作りの一巡の流れをつなげることになると思うからね。。


ポップス系の新人からジャズの大ベテランまで、幅広いジャンルのつわもの達がひし めき合うSmooth/Contemporary Jazzのジャンルで着実に音楽的信頼を得つつある Dave Kochanski − George DukeやJeff Lorber、さらにその後のRuss Freemanに続く新しい世代の代表として、これからのSmooth/Contemporary Jazzをひっぱる機動力になることは間違いない。どちらかというとShyなイメージのKochanskiだが、その自信に満ちた笑顔はしっかりと実力に裏打ちされている。何気なく買ったアルバムのクレジットに、当たり前のように彼の名前をを見ることになるのも、それほど先の話ではないかもしれない。 (まい)


Dave Kochanskiの代表的参加作品

Brave New World
Rippingtons
Topaz
Rippingtons
Walkamile
Jeff Kashiwa
Another Door Opens
Jeff Kashiwa
Simple Truth
Jeff Kashiwa
Buy CD   Buy CD   Buy CD   Buy CD   Buy CD  

Interview and photography by まい
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