Jeff Lorber Interview

Jeff Lorberという名前を聴いて、創世期時代のコテコテのフュージョンを思い出す人がいたら、その人はかなりなフュージョン通だと思う。その名前を聞いて、売れっ子プロデューサーという印象を強く持った人がいたら、その人はジャズに限らず最近のFunkyな音楽をよく聴いている人ということになるかもしれない。

1977年に発売されたデビューアルバム「The Jeff Lorber Fusion」でまさに"Fusion"という単語を世に知らしめ、その3年後にはKenny Gをバンドに迎えて「Wizard Island」を発売する。その後、順調にソロアルバムを出しながら幅広い分野の数々のアーティストのレコーディングに参加、最近ではEric MarienthalやDave Kozをプロデュースし、Russ Freemanのアルバムにも顔を出す――そんな話題の尽きない多才なキーボードプレーヤーJeff Lorberが、今年3月、自身では通算18枚目のアルバム「Philly Style」を発売した。2002年のベスト盤を除けば、2001年の「Kickin' It」以来2年ぶりの新作だ。さて、そのサウンドはいかなるものか?

「でもお決まりの爽やかFusionなんじゃないの?」・・・そう思った方、少々お待ちいただきたい。

ジャズのみならずポップス、ファンクと数え切れないほどのアーティストをプロデュースしてきたJeffが作り出す音楽は、もはや以前のような「Fusion」の一言で表現できるものではなくなっている。話を聞けば、クラシック音楽教育も背景に、お気に入りのRock、Funk、R&Bなど幅広い音楽で常に刺激を受けているとのこと、まさにJeffの中ではいろいろな音楽が文字どおり「溶け合って」(Fusion)いるのではないだろうか。

そんなJeffが作り出す音楽を探求すべく彼と話をしたのは、新作発売記念ライブ直前の3月中旬、Santa Monicaにある彼の自宅兼スタジオでだった。海を見下ろすスタジオで、ミキシングボードにゆったりと寄りかかりながら笑顔で雑談するJeffは、一見音楽好きな普通の人。だが、話が自分のアルバムに移ると、穏やかさは一変、音楽に対する興味と愛情を熱く饒舌に語り出す。その表情は、常に何か新しいものを見つけようとする、ちょっといたずら好きな少年のようだ。一体何が彼の音楽作りの原動力になっているのか、そして今回のアルバムはどのようにして出来上がったのか。1時間近いインタビューで、人気キーボードプレーヤー兼ピアニスト、売れっ子プロデューサーJeff Lorberの素顔に迫って見た。新作「Philly Style」のレコーディング現場の話に加え、「Jeff Lorber Fusion Band」の再結成はあるのか・・・など、ファン必見の興味深い質問にも期待していただきたい。



まい@CyberFusion (以下まい)
今回のアルバム「Philly Style」のコンセプトについて教えてください。どのようにして作り上げていったのですか?

Jeff Lorber (以下Jeff)
今回、Steve Dubin(スティーブ・デュービン)と一緒にやって本当に楽しかったよ。彼とは前のアルバム「Kickin' It」でも一緒にやっていて、その協力関係をそのまま続けたって感じだね。基本的には一緒に曲を書いて、一緒にプロデュースして、お気に入りの同じリズムセクションを使ったんだけど、今回は曲をカットするってことにより時間をかけたんだよ。前回は一晩で全部の曲――その10曲のうちの7曲はライブのバンドで――演奏したんだけど、今回は実際にはライブバンドをセッティングするのに1日位あったから、合計で3日間半くらい時間があって、前回よりはバンドと一緒にリズムトラックを準備するのやらに時間の余裕があったんだ。アルバムに必要な12曲よりも多めに曲をカットしたしね。アルバムにはその中の9曲が収録されてて、そのうちの1曲、"When She Smiles"はドラムのプログラムを使って作ってあるんだ。ちょっとホーンのアレンジを使ったりしたのもあったね。基本的には、こんな感じだよ。

Steveと僕との間の雰囲気もすごく良かったし、いちいちお互いのことを探り合うことなんか必要なくて、まさにすぐにアルバム作りにのめり込んだって感じかな。それと、僕ら二人とも、以前のアルバムよりも、もっと自由なアプローチをしたと思う。前のアルバム、「Kickin' It」では、余計なものはとっぱらったせいでちょっと空っぽのイメージがあったんだけど、今回のアルバム「Philly Style」ではお互いにそんな心配をすることもなく、自由に演れたと思う。その意味では、前のアルバムとは、ちょっと違うアプローチをしたんだ。

まい
では、タイトルの由来を教えてください。

Jeff
Steveと僕はお互いにフィラデルフィア(Philadelphia)出身で、しかもドラマーのJohn Robertson(ジョン・ロバートソン)もフィラデルフィア出身だったんだ。その彼が、ちょうど自分のブランドのドラムスティックで「Philly Style」っていうのを持っていたんだ。それで僕らは「それ、なかなかいい響きだね。」ってなって、まずは曲のタイトルに使ったんだけど、最終的にはアルバムのタイトルにすることにしたんだ。最近、フィラデルフィアはかなり注目を浴びてきてると思うんだ。いろいろな音楽がフィラデルフィアから発信されてるからね――例えばR&Bがフィラデルフィアからどんどん発信されてるし、Jill Scott(ジル・スコット)なんかアメリカの ルーツの音楽をやったり、すごく新進的なミュージシャンがいたりするよね。いつもフィラデルフィア出身のミュージシャンやプロデューサーにはリズム的な素晴らしい伝統が息づいているから、アルバムのタイトルとしてそういったことをさりげなく伝えるのもすごくいいことだって思ったんだ。例えば"Regardless Of"っていう曲の今風な感じとかHip Hop風な感じで分かるように、僕らの音楽はフィラデルフィアにおけるそういったR&Bの影響力に触れた部分があると思うんだ。

まい
今回のアルバムでは、どのように曲を作っていったのですか?

Jeff
まずはちょっとしたドラムのアイディアから始まって、それからいくつかコード進行が出てきて、さらにそれに積み重ねていったんだけど、何と言っても難しいのは、どうやったらそのリズムやコード進行にまさにぴったりのメロディを思い付くかってことなんだ。時々は本当に曲作りがうまく進むけどね・・・例えば"Uncle Darrow's"っていう曲は、作り始めの時からほとんど曲が変わってないから、僕が書いた通りにレコーディングも進んでいったけど、"Laissez Faire"なんかはミキシングの段階で曲が完全に変わってしまったんだ。最初はコードやイントロがちょっとブリッジがあったんだけど、それらは全部取り除かれて、メロディも3回か4回変えられたんだ。

Pro-toolsで録音する時って、本当にいろいろなことをものすごく簡単に試せるからね。それで曲を完璧に作り直すこともできるし、レコーディングできる曲数なんかも考慮すると、ほとんど不可能なことはないと思うんだ。スタジオでレコーディングしてれば24トラックしか使えないけど、Pro-Toolsだと何度でもやり直しができるし、デジタルレコーディングを使えばもっともっと創造的になれるんだ。だから結果として、アルバムの中の何曲かは、当初の曲からずいぶん変わったよ。

例えば"Philly Style"はRichard Elliot(リチャード・エリオット)が来てあのメロディを見つけるまではちゃんとした曲になってなかったし――僕らもいくつかメロディは試してみたんだけどね。そう、アルバムの中の1曲で僕らが本当に時間をかけて考えてたんだけど、だけどあまりピンと来る曲に仕上がらなくて、結局そのままボツになっちゃった曲もあるんだよ。でも、これもまた、レコーディングのプロセスだからね。言ってみれば「彫刻」みたいなものかな。何か彫刻してる時って、時々は粘土をはめ込んで見たり、削って見たりするでしょう?それがまさにデジタルレコーディングの過程だと思うんだ。いくらでも実験的なことができるし、気に入らなければ何度でもり直しができる。アルバムの何曲かは、そういうかなり革新的な曲作りの過程を経て出来上がったんだけど、でも、基本的には僕とSteveが腰を落ち着けて、お互い意見を出し合ったりそれを試してみたり、時々は彼は自分の家に曲の素材を持ち帰ってオーバーダブしたりしたんだ。SteveとRobby Nevil(ロビー・ネヴィル)がやってきてちょっとギターを弾いたこともあるし、他のメンバーも自分の演奏したのを持ち寄って見たこともあるしね。もちろん僕が気に入らないこともあるし、たまにはその逆もある――いつか僕がある曲に熱中してこのスタジオでいじくってたら、Steveがやってきて「何やってるんだよJeff、どんどん曲が駄目になってくじゃないか!」なんてことを言われたり(笑)。

でも基本的には、お互いに尊敬し合って、最終的には僕ら二人ともが気に入る曲に仕上がっていったんだ。そうやってアルバムを作っていくのはすごく好きなんだよね・・・というのは、今まで僕が作ったアルバムって、僕自身はアーティストかプロデューサーっていうのがほとんどで、特に自分が尊敬できる意見を言ってくれたり、物事を違う方向からとらえてくれる人とアイディアをやりとりするほうが、より楽しいからなんだ。将来的にも、Co−ProducerとかCo−Writerと一緒にアルバム作りが出来たらいいなと思う。その方が楽しいし、僕一人の狭い視点でアルバムを作るより広い視点の面白いアルバムが出来ると思うんだ。

まい
今の自分の音楽活動についてはどう考えていますか?

Jeff
Smooth Jazz界だと、いろいろな人が僕に曲作りやアルバムのプロデュースを頼んでくる。最近だとDave Koz(デイヴ・コズ)とかね。僕自身はすごくオープンだし、これから誰と仕事するかは分からないけど、でもLAの、いろいろなスタジオミュージシャン達やプロデューサー、エンジニア達で構成されたクリエイティブなコミュニティをすごく楽しんでるよ。もちろん、ニューヨークにも素晴らしいミュージシャン達がいるよね。とにかく、楽しい仕事だと思うよ。自分の好きな音楽を作って演奏して、才能溢れる人達とも一緒に仕事ができるしね。

Santa Monicaの自宅スタジオにて
まい
曲を作るにあたって、スムースジャズのラジオ局の反応を考慮しますか。

Jeff
振り返ってみると、ジャズ・フュージョンの第1世代には、Herbie Hancock(ハービー・ハンコック)、Miles Davis(マイルス・デイヴィス)、Chick Corea(チック・コリア)、Mahavishnu Orchestra(マハヴィシュヌ・オーケストラ)、Tony Williams(トニー・ウィリアムス)なんかがいて、彼らの功績はすごいと思うんだ。僕はいまだに愛情と尊敬の念を持って彼らの音楽――特にHerbieとMiles、それにJohn Coltrane(ジョン・コルトレーン)の音楽――を聴いてるからね。それに続いて次の世代が出てきた。僕のバンドもそうだし、Spyro Gyra(スパイロ・ジャイラ)やPat Metheny(パット・メセニー)がそうだ。どちらかというと、もっとメロディックな感じのスタイルのジャズで、ある程度はSmooth Jazzって呼べるものだと思うんだ。

僕のテイストは、そういうSmooth Jazzとかけ離れた音楽ではないけど、僕が一番考えることは、自分の音楽がラジオ局でよくかかるヒット曲みたいにならないようにすることなんだ。そういうヒット曲が何曲かあることはそれはいいと思うんだけど、自分としては幅広い、いろいろな表現力を持った音楽がいいと思っていて・・・例えば今回のアルバムだと、Hip Hop調の"Regardless Of"があったり、かっこいい今風なブルース調の"Soul Food"があったり、もっとジャズっぽい"Lassaiz Faire"や"Serpentine Lane"があったり。でもこういう曲は、Smooth Jazz局では流れないと思うんだ。だけど、こういう感じのアルバムが、まさに僕が作りたいと思ったものなんだよ。シングルカットはされないだろうけれど、バラエティに富んでて、ミュージシャンが伸び伸びと演奏してるのが聴けるっていうのが、僕の好きなタイプの音楽だな。

まい
アルバムの中のお気に入りの曲について聞かせてください。

Jeff
"Uncle Darraw's"の仕上がりはとっても気に入ってるよ、本当にFunkyでぐっとくる曲で、僕がずいぶん前に書いた"Rain Dance"(「Water Sign」/The Jeff Lorber Fusion)を思い出させる感じ。あの曲は多くのラッパーがサンプリングしていたくらいの、ラップ界でもかなり影響力のある曲なんだ。だから、そういうすごい曲と同じスタイルで新しい曲を書けて、仕上がりもすごく良かったって思ってる。"Gigabyte"も、なかなかいいメロディックな曲で、書くのも楽しかったし演奏するのも楽しいんだ。"Laissez Faire"は僕のお気に入りの1曲で、メロディもコードも好きだよ。"Under Wraps"も楽しい曲で、"Snakebite"(「Kickin' It」の1曲目)にちょっと似た感じの少しゆっくりめのブルース調で面白いコード進行やサウンドが聴ける曲。タイトル曲の"Philly Style"はちょっと"Gigabyte"に似た感じのメロディックでオープンでエネルギッシュな曲で、僕が一番気に入ってる部分はブリッジかな。このブリッジが予想外で、一体どこから来たんだろうって感じがして、そのまま全然違う世界に行くよね。

まい
レコーディングに参加しているメンバーについて少し聞かせてください。

Jeff
Steve Dubinはプロデューサーであり作曲者であるからものすごく有名というわけではないかもなあ、だって大抵表舞台には出ないから。面白いのは、Steveと僕は文字通り同じ近所で育ったってことかな。実際に顔を合わせるまでには何年かかかったけど、同じようなバックグラウンドを持っていてね、共通の友人がいたし、同じ高校に通っていたし――あ、でも僕の方が少し年上だから、実際に同じクラスにいたって訳ではないけどね。そして彼はドラマーで、だからこそ僕らのチームワークはうまくいったとも言えると思う。。僕はキーボード奏者兼ギタリストで、僕自身はなんでも曲をメロディックにまたはハーモニックにとらえるけど、彼はリズム中心、ドラム中心の見方をするんだ。そういう彼のドラムのプログラミング法は、本当にかっこいいよ。ものすごくいいドラム音のライブラリーも手に入れてるしね。

実際、彼はドラム以外の楽器も演奏できるんだ。もちろん、そういう場合は、その楽器の素晴らしい演奏者って訳ではないけど、でもキーボードやギターなんかをちょこちょこと演奏しながら、ものすごくかっこいいフレーズなんかを思い付くんだ。こういうことって演奏技術じゃなくて、要はほんのちょっとしたフレーズを思い付くかどうかってことだから、まさにジグソーパズルみたいなものだよね。ベースに、ドラム、ハイハット、ギター、ピアノ、それに他の面白い要素はいろいろあって・・・つまり考慮すべき「ピース」はいくらでもある。Steveは過去にPeter White(ピーター・ホワイト)やRichard Elliotなどの数えきれないくらいの人達と一緒に演って成功してるんだ。加えて面白いことに、僕ら二人ともスタジオワークをやっていたんだ、例えば80年代終わりとか90年代初めにかけてダンスリミックスなんかをね。だからお互いにお互いのことを話に聞いたことはあったし、実際に同じプロジェクトで働いたこともあったんだけど、数年後に一緒に働くまで直接話をする機会はなかったんだ。

それからサックスプレーヤーのGary Meek(ゲイリー・ミーク)は過去10年とか15年の間に時々僕のバンドで演ってくれていて、90年代の僕のアルバムには全部参加してくれてると思うよ。残念ながら音楽的にはきちんと評価されていなくてね。すごく才能があるのに、それを売り込むのが上手くないミュージシャンっているでしょう?Garyはまさにそういう職人ミュージシャンタイプで、音楽的にはものすごく才能があるんだけど、ソロアーティストっていうよりはサイドマンって感じの参加が多いんだ・・・ソロアルバム自体は出してはいるんだけどね。彼はFlora Purim(フローラ・プリム)やAirto Moreira(エアト・モレイラ)とずいぶん一緒に演っていて、ブラジル音楽にはかなり入り込んでいたよ。今はDave Weckl(デイヴ・ウェックル)と一緒にツアーをしてると思うよ。彼はBrandon Fields(ブランダン・フィールズ)が抜けた後にDave Weckl Bandに入ったんだ。

まい
あなたの音楽的背景について教えてください。

Jeff
僕はバークリー音楽院(Berklee College Of Music)で何年か勉強して、それからニューイングランド音楽学校(New England Conservatory)で少し勉強したんだ。それと、ボストン大学(Boston University)に行って、音楽じゃなくて教養科目を勉強して、それからポートランドのクラーク・カレッジ(Clark College)ではちょっと教えたりもしていて、それからカトリックのメリルハース・カレッジ(Marylhurst College)で1年ちょっとクラシック音楽を勉強したんだ。ある意味、バックグラウンドとしてはすごくいいクラシック音楽教育を受けてると言えるかもしれないね。ピアノのレッスンは、僕は4歳の時にやり始めたんだ。

まい
私も4歳の時にピアノを習い始めたんですけど、高校生の時にやめちゃったんですよ。ただ、それまではクラシック音楽を勉強していたので、今でもコードが読めないのが悩みなんです。

Jeff
そうなんだ!僕の場合はそこの問題はなかったよ。僕は音楽学校で勉強したわりには楽譜を読むのはそんなにうまくないけど、僕の場合は耳がものすごくいいんだと思う。音を聴いただけでちゃんと弾き分けられたし、そのまま聴き取った音を弾くことができたからね。だから僕の場合は、ジャズの勉強に関してもわりと苦労は少なかったと思うなあ。

キーボードってことで言えば、間違いなくHerbie Hancockだね。それと僕のあこがれのピアニストと言ったら、McCoy TynerにRed Garland、それに僕の一番のお気に入りのピアニストはHorace Silver(ホレス・シルバー)で、僕は彼の曲やアレンジ法は大好きなんだ。Tommy Flanagan(トミー・フラナガン)、Winton Kelly(ウィントン・ケリー)、それに言うまでもなくChick Corea、Bill Evans(ビル・エヴァンス)は僕のあこがれのミュージシャンだ。僕は、ジャズピアノの歴史に始まって、とにかくこういう人達のスタイルなんかを勉強しようとしたんだ。

今はどちらかというともっと、Hip Hop系のプロデューサーの作品を聞いているんだ、というのもそういうジャンルがまさに新鮮なアイディアが溢れてるところだと思うんだ。例えばNeptunes(ネプチューンズ)とか、Missy Elliot(ミッシー・エリオット)、Timbaland(ティンバランド)とかだね。まさにHip Hopミュージックなんだけど、すごく新しいアイディアがあって、それがうまい具合に「角」がとれてPopミュージックやR&B、Jazzに馴染むんだ。今Smooth Jazz局をつければいつでもドラムループが聴こえてくるでしょう?そういうドラムループやらドラムマシーンっていうのは、もともとHip Hopのレコードでしか聴けなかったものなんだよね。それが今では大抵のPopレコードがドラムループやドラムマシーンを使ってる。これはほんの一例に過ぎないけど、いろいろな素材を1つの音楽にまとめあげるっていうことを考えると、面白いアイディアが沢山あるんだ。特にファンキーなグルーブはRapのレコードの特徴だからね。だからここ1年くらいは、僕自身はFunk系のリズムの音楽を聴きたいと思ってるよ。

だけど、どうやら最近はFunkyな音楽があまり作られてないような気がするんだ。例えばR&B局を聴いていても、ずいぶん長い時間聴いてないと僕が本当にFunkyだって思う曲は聴けなくなってきてる。どうしてそんなことになってるのかは分からない――最近のプロデューサーがFunkyな音楽を避けてるのかもしれないね。大体、そういった音楽のコンセプトそのものが、もはやFunkyじゃなくなってるように感じるんだ。音楽的にちょっと変わってたり面白かったり、リスナーの関心を引くような曲はあるんだけど、リズム的な観点から言うとそれは必ずしもFunkyじゃないんだよ――つまり、James Brown(ジェイムス・ブラウン)やTower Of Power(タワー・オブ・パワー)、昔のHerbie Hancock、Earth Wind & Fire(アース・ウィンド・アンド・ファイヤー)やGeorge Clinton(ジョージ・クリントン)みたいな感じではないんだ。だから、もし今興味のあるアーティストをあげるとしたら、NeptunesとかDr. Dreとかかな。彼は本当にFunkyな曲を作ってるからね。

Smooth Jazzでいうと、ほんとうにごくたまに「これはいい曲だ」って思うのもあるけど、そんなに頻繁にはないな。でも、例えばBoney James(ボニー・ジェイムス)なんかは、最新作はそれほど好きではないけど、何作か前のアルバムではものすごくいい音楽を作ってると思うし、Smooth Jazzの中でもベストのアルバムに数えられると思う。でも時々は僕もSmooth Jazzを聴いていい曲に出くわすことがある。最近だとFourplay(フォープレイ)の最新作に入ってる「Rollin'」とかかっこいいと思うし、新しい感じのするMarion Meadows(マリオン・メドウズ)のタイトル曲もいいグルーブを持ってる思う。Stanley Clarke(スタンリー・クラーク)のアルバムの1曲目なんかは、Smooth Jazzではないかもしれないけど僕は好きだな。要は、そこここに僕のお気に入りの音楽が散らばってるわけだ。必ずしもSmooth JazzじゃなけれどRachelle Ferrell(ラッシェル・フェレル)の前作も好きだし、Me'Shell NdegeOcello(ミシェル・ンデゲオチェロ)も立て続けにFunkyな曲を作り出しているーティストだから、僕にとってはすごく魅力的だね。

あとは・・・とにかく僕は音楽が好きだから、いろいろなものを聴いてるんだ。Rockも聴くし、Coldplayっていうイギリスのバンドは作曲方法やレコーディング方法、それにサウンドにアメリカのバンドとは異なる面白いアプローチをしていて好きだし、Sheek(シーク)ていうグループも好きだし、ニューヨーク出身の80年代っぽいソウルミュージックを演ってるChange(チェインジ)っていうLuther Vandross(ルーサー・ヴァンドロス)の最初のバンドや、Kashiefがプロデュースした音楽も好きだし、Evelyn "Champaign" King(エヴリン・シャンペイン・キング)みたいなサウンドも好きだ。The Paul Butterfield Blues Band(ポール・バターフィールド・ブルース・バンド)が60年代〜70年代にかけてレコーディングした音楽もお気に入りだし、Steve Winwood(スティーヴ・ウィンウッド)のTraffic(トラフィック)も好きだしね。それでもって、ものすごいBeatles(ビートルズ)ファンでもあるんだ。Elton John(エルトン・ジョン)も好きだし、基本的に60年代の音楽が好きなんだ、いろいろな意味で音楽的に盛り上がった時代だよね、Jimi Hendrix(ジミ・ヘンドリックス)とか。あの時代のRock' n 'Rollって、誰かの音楽をちょっとアレンジしたりしていたわけじゃなくて、まさに今まで誰も聴いたことがないような新しい音楽を作り出していたわけだからね。本当に素晴らしいよ。昔の音楽を聴くと、もちろん全く何も感じないのもあるけど、中にはいまだに音楽神経を刺激するようなのもあるよね、Led Zeppelin(レッド・ツェッペリン)とかLenny Kravitz(レニ・クラヴィッツ)とかね。

まい
「Jeff Lorber Fusion Bandの再結成」というアイディアはどう思いますか?

Jeff
誰かがそんなこと言ってたなあ。でもKenny Gは必ずしも参加できるとは思わないけど。でも、そうだなあ、もし誰かが本当に積極的に推してくれたら、そりゃあ再結成したら楽しいと思うよ。Dennis Bradford(デニス・ブラッドフォード)は東京に住んでここ20年くらい六本木でよくギグをしてるって聞いてるし、Kenny Gは、もちろん知っての通りものすごく活躍してるよね。

Kennyに関しては、どちらかというと100%Jazzって言う感じではなくなってきているように感じるなあ。なんとなく「中道」といった感じだ。彼についてはいろいろと意見が分かれると思うけど、僕が1年半前に一緒に仕事をした時は、とにかく彼の演奏技術に驚かされたものだった。だから、彼のアルバムを好むと好まざるとに関わらず、少なくとも彼は優れた演奏者としてもっと評価されるべきだと思う。ただ、彼が積極的に新しい音楽に挑戦しているかっていったら・・・そこには異論もあると思う。まあ、彼は彼ですっかり成功しているわけだから、もはや新しいことに挑戦する必要もないと感じてるのかもしれないね。そして僕がそう感じるのも、もしかしたら彼が今やってる音楽は、僕が彼の音楽として聴きたいものではないからかもしれない。

あ、そもそも、Kenny自身がJeff Lorber Bandに参加したいかどうかは分からないしね(笑)。


インタビューが終った後も「実はギターも弾けるんだよ」と気軽にギターを弾きはじめるJeff。独学でギターをマスターした彼は、今年5月のNewport Beach Jazz Festivalのライブでそのお手並みを披露していたほどだった。そんなJeffの自宅は、入り口入ってすぐのところにお気に入りのYamahaのグランドピアノが鎮座し、窓辺ではRolandのキーボードがSanta Monicaの海を見下ろす。スタジオにはドラムセットが収まり、ミキシングボード横にはギターが並ぶ――彼の生活はまさに音楽中心だ。

1970年代、伝説の「Fusion Band」の名の下にContemporary Jazz界に彗星の如く現れた器用なキーボードプレーヤーは、今また新たな伝説をを生み出そうと変化の激しい音楽界にアンテナを張り巡らしている。「でもお決まりの爽やかFusionなんじゃないの?」と思った方、結論は「Philly Style」で披露されたJeffのお手並みをじっくり拝聴してからでも遅くはないのではないだろうか。 。 (まい)


Jeff Lorberの代表的参加作品

Philly Style
Jeff Lorber
Kickin' It
Jeff Lorber
Midnight
Jeff Lorber
Worth Waiting For
Jeff Lorber
The Definitive Collection
Jeff Lorber Fusion
Buy CD   Buy CD   Buy CD   Buy CD   Buy CD  

Interview and photography by まい
copyright 2003 by CyberFusion